2012年08月05日
安部公房
『砂の女』
 (新潮文庫)

物語のほとんどの場面が砂丘の中の家という小説「砂の女」。しかし読者はどんどん引きこまれていきます。執念深く繰り返される砂の描写。その描き方はドキュメンタリーのようなリアリティを持っています。ではなぜ安部公房はこれほどまでに「砂」にこだわったのか?その理由のひとつは、少年時代に過ごした満州。中国北東部にある満州は、半砂漠的な場所で、安部公房はその中で暮らしていてもなお砂漠にあこがれのような想いを抱いていたと言います。これまでに20数カ国語に翻訳されている「砂の女」。海外でも高く評価され、その後ノーベル文学賞候補とも言われた安部公房ですが、残念ながら1993年、病気のため68歳で亡くなっています。

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