2012年05月20日
永井荷風
『日和下駄』
 (筑摩書房 ほか)

永井荷風がなぜ「日和下駄」を書こうと思ったのか。やはりアメリカやフランスで暮らした経験がきっかけになっているようです。西欧文明の中には伝統が息づいていることを知った荷風は、古いものを次々に壊し近代化していく東京に違和感を持っていました。木造の橋は鉄の吊橋となり、川の岸はセメントに固められ、昨日あった風景が破壊されて跡形もなくなっていると綴っています。しかし荷風が書いた100年前の東京の風景が今も残っている場所もあります。そのひとつが樹木。麻布善福寺の銀杏など「日和下駄」に記された木が今も残っているのです。「日和下駄」を片手に東京散策。100年前の風景が残る場所を探してみるのも楽しいのでは。

...前に戻る