2012年05月06日

今村夏子
『こちらあみ子』
 (筑摩書房)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

2010年に「太宰治賞」、2011年に「三島由紀夫賞」を受賞した今村夏子さんの「こちらあみ子」。小川洋子さんは賞の選考委員としてこの作品に出会い、今では応援団の一人です。不思議な少女「あみ子」の目に映る世界を描いた小説で、とにかく一番の魅力は主人公の「あみ子」。はじめて読んだ時には、彼女がいったい何者なのかよくわからないとしても、読み終わった時には共感が残る作品。この世界がとても生きづらい場所となってしまった「あみ子」の中に、読者は自分と重なるものを見つけることができるのです。「あみ子は自分だ」と小川さんが感じられたように、さてあなた自身も、自分の中にあみ子を見つけることができたでしょうか?

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