2012年04月15日

葛西善蔵
『子をつれて』
 (講談社文芸文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

太宰治と同じ青森県出身。破滅型という部分では太宰治に勝るとも劣らない作家、それが葛西善蔵です。明治20年、弘前市に生まれ、13歳の時に母親を亡くし、その翌年から北海道にわたり働き始めます。その後、文学を志して上京。26歳で広津和郎らと共に同人雑誌「奇蹟」を作り、「哀しき父」を発表。作家として知られるようになります。しばらく故郷と東京を往復しながら作品を書き続けますが、生活は苦しくなるばかり。そんな中で発表したのが「子をつれて」という短編小説。家賃を滞納して借家を追い出され、子供を連れて行くあてもなく夜道を彷徨うという情けない話。これは葛西善蔵が自分の体験を綴った私小説だと言われています。

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