2012年03月04日
北杜夫
『どくとるマンボウ航海記』
 (新潮文庫)

メロディアス・ライブラリーでは、以前、北杜夫さんの「夜と霧の隅で」という芥川賞受賞作を取り上げました。ナチス政権下のドイツで起こった精神病患者の安楽死。それに抵抗した医師の苦悩を描いた作品です。この小説が芥川賞を受賞したのは1960年。なんと「どくとるマンボウ航海記」が刊行された年と同じです。同時期にまるで違うタイプの作品を生み出すことが出来た北杜夫さん。また「どくとるマンボウ航海記」の中にもさすが芥川賞作家だと思わせる部分が出てきます。たとえば船や海の描写。ユーモアあふれる文章の中に、時々出てくる詩的な表現。北杜夫さんは、シリアスとユーモア、両方に優れた数少ない作家でした。

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