2011年10月02日
沢村貞子
『わたしの台所』
 (光文社文庫)

「わたしの台所」からは、昭和の食文化を感じることも出来ます。たとえば「けずる」というエッセイ。鰹節をかいて花かつおをこしらえるのが好きという文章を読むと、昔はどこの家にも「鰹節のけずり箱」があったことを思い出します。また「御御御つけ」というエッセイには日本人の食の基本が味噌汁にあることを思い出させてくれます。「沢村貞子さんの人生観や価値観はお母さんにあるのでは」と小川洋子さん。親子で台所に立ち、お母さんから人生の知恵を受け継いだ沢村さん。その時間こそがまさに昭和の風景なのかもしれません。日々の食事や暮らしへの想いをあらためて感じる「わたしの台所」。結婚の決まった女性へ贈りたい1冊でもあります。

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