2011年10月02日
沢村貞子
『わたしの台所』
 (光文社文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

生前、100本を超す映画や数々のテレビドラマに出演された沢村貞子さん。昭和を代表する女優であり、エッセイストとしても名作を残されています。そのひとつが「わたしの台所」。沢村さんの食や暮らしへのこだわりが綴られています。まず印象的なのが「献立日記」。「あさ、床の中で眼をさまして、一番さきに私の頭に浮かぶのは、今日の夕飯は何にしようかしら・・・ということである」という言葉からはじまるこのエッセイには、昭和41年から毎日の献立を書き始めたというエピソードが載っています。「それは我が家の食物史、経済史」と沢村さんは書かれていますが、まるで食事に込めた旦那様へのラブレターのようにも感じます。

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