2011年08月14日
島尾敏雄『島の果て』
 (あすなろ出版「いのちの話」)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

終戦記念日を前に取り上げたのは、あすなろ書房のアンソロジー「中学生までに読んでおきたい日本文学〜いのちの話」に収められている短編小説「島の果て」。作家・島尾敏雄の戦争体験をもとにした作品です。舞台は、トエという娘が暮らす「カゲロウ島」。1年中、薔薇の花が咲く美しい島でした。しかし世界中でおこっている戦争が「カゲロウ島」にまで覆いかぶさり、大勢の軍人たちが島にやってきたのです。「むかし、世界中が戦争をしていた頃のお話なのですがー」というおとぎ話のような書き出し。そこから生まれるのは軍人・朔中尉とトエの恋。生と死のぎりぎりのところで出会った二人の想いが、不思議な島の空気の中で淡くはかなくそして強く描かれています。

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