2011年05月01日
井上靖
『あすなろ物語』
 (新潮文庫)

「あすなろ物語」の題名にもなっている「あすなろ」とは木の名前。「あすは檜になろう」と願いながら永久に檜になれないところから「あすなろ」と名付けられています。井上靖さんのふるさとには、あすなろの木がたくさんあって、井上少年の心にも「あすなろの説話」は深く心の中に刻まれていたそうです。井上靖さんご自身は、この作品について「自伝小説ではない」ともおっしゃっていて、あすなろの説話の持つ哀しさや美しさを小説の形で取り扱ってみたのだとか。「つまりこの小説の主人公は、あすなろの木でなんですね」と小川洋子さん。そういう視点であらためて読むと、さらにこの作品の持つ世界観が広がりを持って感じることができます。

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