2011年04月03日
田山花袋『蒲団』  (新潮文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

自然主義文学を代表する作家として学校でも習う「田山花袋」。しかし代表作のひとつ「蒲団」を読んだことがある人は意外と少ないのでは。明治40年に発表された短編小説。物語の主人公は、妻子ある30代の文学者です。彼はある日、ひとりの女学生から「門下生になって一生文学に従事したい」という手紙を受け取ります。その熱意から、彼は女学生を受け入れることにするのですが、そこからはじまる苦悩の日々。恋の妄想にとりつかれ、結局、弟子である彼女をふるさとに帰してしまうことになるのです。部屋に残された彼女の蒲団。なつかしい匂いを嗅ぐ主人公。この小説を読んだことがない人でも知っている有名なラストシーンです。

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