2011年03月27日
桐野夏生『ナニカアル』  (新潮社)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

人気作家・桐野夏生さんの作品の中から今回、取り上げたのは長編小説「ナニカアル」。昨年2月に発売され、先日、第62回読売文学賞の小説賞も受賞した作品です。テーマは、昭和を代表する女流作家・林芙美子。彼女は、日中戦争が起こると従軍記者として戦地に赴き、さらに太平洋戦争では報道班の一員としてシンガポールやジャワなど南方に出かけています。もともと桐野夏生さんは、「放浪記」や「浮雲」など林芙美子の作品が好きだったそうですが、「戦争に協力した作家」と言われるなど悪評ばかりが残っていることに疑問を持ち、本当にそうだったのかを探りながら、小説「ナニカアル」を書いていったそうです。

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