2011年02月06日
司馬遼太郎
『菜の花の沖』
 (文春文庫 1〜3巻)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

2月12日は、司馬遼太郎さんの命日。生前、菜の花がお好きで、「菜の花の沖」という小説も書かれていることから「菜の花忌」と呼ばれています。小説「菜の花の沖」は、1979年の4月からおよそ3年間、新聞に連載。現在は文春文庫で六巻にもわたる長編小説です。江戸時代の後期に活躍した廻船商人「高田屋嘉兵衛」の生涯を描いた作品。ストーリーとともに興味深いのは江戸後期がどんな時代だったかが伝わってくることです。庶民の暮らしや経済のことなど司馬さんの知識が小説の中に詰まっています。たとえば当時の商品生産力。上方は高度に発達し貴重だったことから「くだり物」と呼ばれ、その反対に江戸の商品は「くだらない」と言われていたそうです。

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