2011年01月23日
赤染晶子『乙女の密告』 (新潮社)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

昨年の7月に第143回芥川賞を受賞した赤染晶子さんの小説「乙女の密告」。芥川賞の選考委員である小川洋子さんも候補作として出会い、読んでいるうちに一読者としてのめり込んでしまった作品です。舞台は、京都の外国語大学。女学生たちは「アンネの日記」を教材にドイツ語を学んでいます。バッハマンという厳しい教授のもと、スピーチコンテストに向けて暗記に励む乙女たち。ところがある日、その教授と一人の女学生の間に黒い噂が流れるのです。アンネ・フランクを通して人間の存在理由とは何なのかを表現した作品。何度も読んでいくうちに、巧みに計算された作品であることを感じる小説です。

...続きを読む