2010年12月12日
井原西鶴『世間胸算用』
(西鶴名作集)

(講談社 21世紀版少年少女古典文学館)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

江戸時代の前期には、京都や大阪を中心とする文学が花開きました。その上方文学を代表する作家のひとりが井原西鶴。大阪の町人の家に生まれた西鶴は、町人階級の生活を描いた「浮世草子」という文学のジャンルを確立し、近代小説のさきがけとも言われています。今回とりあげた「世間胸算用」は、井原西鶴の代表作のひとつ。今から318年前の元禄5年に刊行されました。物語の舞台は大晦日。1年の終わりを当時の人たちがどんなふうに過ごしていたのかが描かれています。この時代はツケで買うのが一般的。それを大晦日にすべて払って無事に年を越すことができるかどうか。そんな人々の暮らしがリアルに伝わってくる名作です。

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