2010年11月28日
三浦哲郎『忍ぶ川』 (新潮文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

短編小説「忍ぶ川」。1960年に芥川賞を受賞した三浦哲郎さんの代表作です。物語の主人公である「私」は、田舎から上京し学生寮に暮らす大学生です。寮の近くには「忍ぶ川」という料亭があり、春のある夜、そこで私は、この店で働く志乃という女性と出会います。やがてひかれあう二人は結婚することを決め、雪の降るふるさとへ向かうのです。小川洋子さんが「忍ぶ川」を最初に読んだのは高校生の時。「この小説のように運命の人と出会えたら」とあこがれを持ったそうです。しかし今、あらためて読んでみると二人の抱えている宿命を感じ、苦しみの中から出会ったものが本当の幸せなのかもしれないと思ったそうです。

...続きを読む