2010年08月15日
『室生犀星詩集』 (新潮文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

「ふるさとは遠きにありて思ふもの」という言葉が印象的な詩「小景異情」。今週は、誰もがふるさとを思いだすお盆にちなんで「小景異情」とともに、その作者・室生犀星の詩集を取り上げました。明治22年石川県の金沢に生まれた犀星。そのペンネームも、金沢に流れる犀川に由来するそうです。それほどまでに彼にとってふるさとは大きな存在。しかし決して安らげる場所ではなかったようです。生後まもなく養子に出され、私生児として育った室生犀星。22歳の頃に詩人を志して上京しますが、貧しく苦しい生活のため、2度ほど金沢に戻っています。「ふるさとは遠くから思うもので、帰るべきところではなかった」という「小景異情」は、そんな中で作った詩です。

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