2010年08月08日
井上ひさし『父と暮せば』 (新潮文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

4ヵ月前に亡くなられた井上ひさしさんの作品へ、沢山のリクエストをいただきました。その中から、8月に読みたい戯曲「父と暮せば」。舞台は、昭和23年夏の広島です。主人公の美津江は、3年前に投下された原爆で愛する人たちを失っています。一人生き残ってしまった負い目から、自分が幸せになることを拒絶している美津江。そんな彼女を、時に励まし、時に笑わせ、勇気づける父親。しかしその父親もすでに・・・という物語です。「以前取り上げたヴィクトール・E・フランクルの‘夜と霧’を思い出しました。」と小川洋子さん。どちらの作品も「戦争の残酷さは、生き残った者が、死んだ人へ罪悪感を持ち続けてしまうこと。」という想いを伝えています。

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