2010年05月23日
トーマス・マン
『ヴェニスに死す』
 (岩波文庫ほか)

1910年、トーマス・マンが35歳の時、マーラーの演奏会を聴きに行き二人は知り合いました。しかしその翌年、マーラーは51歳で亡くなり、その訃報をトーマス・マンは旅行中のヴェニスで知ったのです。そこから生まれたのが小説「ヴェニスに死す」。主人公であるアッシェンバッハのモチーフは作曲家マーラーだったのです。さらにトーマス・マンはヴェニスで実際にポーランド人の家族にも出会っていたそうです。「マーラーの死」と「ポーランド人家族」。この二つには何のつながりもありませんが、作家の手にかかると新たな物語が生まれるのです。「別々の出来事に橋をかけるのが作家の役目」という小川洋子さんの解説にも納得です。

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