2010年04月04日
壺井栄『二十四の瞳』 (新潮文庫)

しかし物語の後半に入ると、大人も子供もその元気な姿を奪われていきます。4年の歳月が流れた頃、満州事変や上海事変が続いて起こり、いくにんかの兵隊が岬からも送り出されていきます。そこからはじまる戦争の時代。教え子たちの中でも戦士するもの、負傷して失明してしまうもの。教え子を戦争で亡くした「おなごせんせい」の心を通して、作者・壷井栄の想いが伝わってきます。「二十四の瞳」は発表から58年たちますが、「文学を通して物語の中に出てくる登場人物に想いをはせることが大切。」と小川洋子さん。10年後も100年後もこの作品を読む人がいるかぎり、壷井栄の想いも生き続けていくのです。

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