2010年03月07日
山本周五郎『青べか物語』 (新潮文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

主人公である私は、浦粕という漁師町をふらっと訪れ、3年あまり暮らすようになります。そこで感じた町の様子や知り合った人々のことを綴った小説「青べか物語」。タイトルにもなっている「青べか」とは一人乗りの平底舟のこと。主人公の私は、芳爺さんという人物から「おめえ舟買わねえか」と言われ、青く塗られた「べか舟」の持ち主になります。そこからはじまる浦粕での様々なエピソード。家のない少女を描いた「繁あね」。廃船にひとりで暮らす老船長の物語「芦の中の一夜」。お人よしの留さんが登場する「留さんと女」など。どの物語にも浦粕に暮らす人々の生命力と温かさ、そして切なさがあふれています。

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