2010年02月07日
武者小路実篤『友情』 (新潮文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

時に小説は、失恋や片想いに苦しむ人へ力を与えてくれるもの。武者小路実篤の「友情」もそんな1冊です。物語の主人公は、野島という若手の脚本家。彼は、杉子という女性に恋焦がれていました。しかし杉子がひそかに想いを寄せていたのは、野島の親友で新進作家の大宮だったのです。友情を大切にするか恋愛をとるか、青春時代の苦悩を描いた作品です。大失恋の物語なのに読み終わったあと、心に清々しさが残るのは何故なのでしょうか?それは主人公の野島がしっかりと前を向き、淋しさの中から何かを生み出そうとしているから。そしてこの本を読むと、人生において失恋の意味も感じとることができるのです。

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