2010年01月03日
幸田 文『きもの』 (新潮文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

お正月にぴったりの小説、幸田文さんの「きもの」。この物語の主人公は、明治時代の終わりに東京の下町で生まれた「るつ子」という少女です。彼女は負けん気が強く、子供の頃から着物の着心地にはとことんこだわる女性でした。その「るつ子」が着物を通して、たしなみや人との付き合いを知り、成長していく姿が描かれています。「着物というテーマでこれだけ深く人間が描けるものなのか。」と小川洋子さん。着物を語ることが、そのまま生き方を語ることにつながっていて、それは幸田文さんの人生そのもの。86歳で亡くなられるまで、生涯和服を着続けた幸田文さん。着物を通して感じた人生が小説「きもの」に映し出されています。

...続きを読む