2009年06月28日
江戸川乱歩
『押絵と旅する男』
 (光文社文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

大正から昭和にかけて活躍した江戸川乱歩。名探偵・明智小五郎の「少年探偵団」シリーズや「人間椅子」といった短編小説など数々の作品を残した作家ですが、小川洋子さんがこの江戸川乱歩の中で特にお気に入りはこちら。乱歩が昭和4年に発表した短編小説「押絵と旅する男」です。物語は、主人公の私が魚津へ蜃気楼を見に出かけた帰り、上野行きの汽車の中で、ある不思議な男と出会うところからはじまります。その男が荷物として持っていた風呂敷を広げると、そこには老人と美しい娘が描かれた押絵が入っていました。これは夢か幻か。その男は、押絵になってしまった彼らの身の上話を語り始めるのです。

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