2009年05月10日
レベッカ・ブラウン
『家庭の医学』
 (朝日文庫)
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

「母の日」にちなんで選んだ1冊レベッカ・ブラウンの「家庭の医学」。癌におかされた母親の入院、手術、治療、そして看取るまでを描いた作品です。作者本人の体験をもとに書かれているということですが、その視点は常に冷静で、淡々とした言葉で綴られています。しかしだからこそ胸に強く迫ってくるものがあるのです。小川洋子さんが感じる作家レベッカ・ブラウンの素晴らしさは「観察力の鋭さ」。普通なら取り乱してしまう身内の闘病や死。しかし作者はその優れた観察力によって他の人が見逃してしまう一瞬をとらえ、悲しいという言葉では片づけられないほどの悲しみを文学という形に残しているのです。

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