心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
井伏鱒二の誕生日にちなんで、代表作「山椒魚」を取り上げてみました。この短編小説は、井伏が25歳頃に発表したデビュー作。もともとは「幽閉」というタイトルで、1923年(大正12年)に同人誌「世紀」に掲載されました。棲家の岩屋から出られなくなってしまった山椒魚の姿を描いた作品。しかし当時「古くさい」など、評判はよくなかったそうです。ところがこの小説をはじめから高く評価した人物がいました。それが太宰治。まだ中学1年だった太宰は、これを読んで「坐っておられなかったくらいに興奮した」とのちに書いています。その後、太宰が作家になってからも井伏と太宰は公私にわたって深いつながりを持つようになっていきます。
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