2008年11月30日
宇野千代『おはん』
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

昭和の名作と言われる宇野千代さんの「おはん」。昭和32年、野間文芸賞にも輝いた作品です。妻である「おはん」を捨て、「おかよ」という芸者と暮らす男。その主人公が二人の女の間で揺れ動く様が、男の語りで綴られていきます。それにしてもこの男の優柔不断さはあまりにひどいもの。それなのに何故か憎めない。読みすすめていくうちに、愛着までわいてしまうのは何故なのでしょうか?「読者がこの男を見捨てずに最後までつきあえるかどうか。それが宇野千代さんの腕の見せどころ」と小川洋子さん。確かに一度読み始めたら一気にラストまでいってしまう。そこが昭和の名作と呼ばれる所以なのかもしれません

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