2008年8月24日
カミュ 『異邦人』
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

「きょう、ママンが死んだ。もしかすると、昨日かも知れないが、私にはわからない。」という言葉ではじまるカミュの「異邦人」(新潮文庫)。久しぶりにこの小説を読んだ小川洋子さんは、この書き出しを「気味の悪い、ひんやりした手触り」と感じたとか。そしてこの感覚が物語の最後まで続いていきます。舞台は地中海に面したアフリカの国「アルジェリア」。母親の葬儀のため、バスで郊外へと向かった主人公ムルソーは、涙を流すこともなく、翌日、海に出かけ、女と遊び、殺人事件を起こしてしまうのです。その動機は「太陽のせい」と答えるムルソー。「愛する」とか「悲しい」といった人間らしい感情を徹底的に無視した男の物語です。

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