2008年6月29日
梨木香歩 『家守綺譚』
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

梨木香歩さんが2004年に発表した「家守綺譚」。主人公は新米精神労働者と名乗る物書きの綿貫征四郎。彼は、湖で行方不明になった親友「高堂」の実家に、家守として暮らすようになります。庭には湖につながる池があり、様々な種類の植物が生い茂っている。その家で気ままに原稿を書く征四郎。そこになんと死んだはずの親友「高堂」が床の間の掛け軸から現れ出たのです。小川洋子さんも大好きだというこの作品。読者は1行目を読んだだけで、どことも知れない場所に吸い込まれていきます。そこは生きている者も死んでいる者も、動物も植物も、河童や人魚、小鬼までも自由に行き来する不思議な世界なのです。

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