2008年5月4日
中勘助 『銀の匙』
心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

「子供の日が近づいたら、ぜひこの作品を取り上げたい」と、小川洋子さんが以前から推薦されていた本「銀の匙」。1885年(明治18年)、東京の神田に生まれた作家で詩人の中勘助が、自分の少年時代を綴った自伝的小説です。この物語の主人公は、書斎の引き出しに「銀の匙」を大切にしまっています。それは子供の頃に病弱だった主人公が、薬を飲むために使っていたもの。小さな口へ薬をすくい入れるために、叔母さんがわざわざ探してきてくれました。その後、少年はこの叔母さんに愛情いっぱいに育てられていきます。その当時の思い出をまるで昨日のことのように綴ったのが「銀の匙」なのです。

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