2008年3月30日
マルグリット・デュラス 『ラマン』

小川洋子さんがはじめて「愛人(ラマン)」を読んだのは、20代のはじめ頃。その時は、主人公の少女と中国人青年との関係が印象に残ったそうです。しかし今回、読み直してみて強く感じたのは、少女と家族との関係。少女がいかに家族に苦しめられたかを綴ったものでした。この想いも、実際のデュラスと重なるもの。デュラスは「書く」ということで、少女時代の暗い記憶を乗り越えていこうとしたのかもしれません。「もし孤独がなかったとしたら、書きはしないでしょう。」これは生前デュラスが残した言葉。まさに「書く」ことはデュラスにとって過去からの解放。と同時に人生そのものでもあったのです。

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