ミュージックの「解体」- 後編
サカナクション 2015.5.14 木曜日
■ Shazam
この前のサカナLOCKSを聴いて思い出したので、shazamをインストールしました。試しにAme(A)を流してみたら、なんと4秒で認知!世界的に多く検索されているトップチャートもチェックできて、MVを見るのも試聴するのも簡単なので便利です。このアプリはもはや革命!因みに今、shazamで見つけたpitbullとthe avenerをyoutubeでチェックしているところです(^ ^)一郎先生、紹介ありがとうございました!
ソーピッズキャメル
女/16/秋田県
女/16/秋田県
山口「偉い!よく使ってるね。……革命(笑)。大げさだな。Pitbullが流れていたのをShazam使って見つけちゃったんだね。良い生徒ですね。積極的に新しい音楽と出会っているというのは本当に素晴らしいことです。僕らの時代はラジオを聴いてね、インターネットが無かったわけですから。先生たちが高校生の時なんて。LUNA SEAの新譜が出ますっていう度に、ラジオの録音ボタンをカチャって押して録音して、これが新譜か……!っていう風にしていたわけです。」
??「ふふ(笑)」
山口「おや、笑い声がしましたけど(笑)。さて、本日の授業ですが、先週に引き続き副担任のこの人といっしょにお届けします。」
江島「サカナクションの江島啓一です!」
山口「ヒゲマンボウ先生、今週もよろしくお願いします。」
江島「よろしくお願いします。」
山口「先週書いた、黒板に一文字、追加して……」
今回も、サカナクションのドラム、江島啓一副担任といっしょに、音楽を“解体する” 授業を行ないます。サカナクションの楽曲「ミュージック」のレコーディング音源が全て入っているパソコンを教室に持ち込んで、皆さんがいつも聴いている音楽の構成要素……ドラムやベース、ギター、シンセサイザーなどの音をばらばらに聴き比べながら、それぞれの音色や役割に迫っていきます。
先週の授業『ミュージックの「解体」- 前編』はコチラ⇒[2015年5月7日の授業]
■ サカナクション「ミュージック」
山口「先週の前編では『ミュージック』を実際に解体して、各パート……ドラム、ギター、ベース、シンセ、ボーカル、コーラスを分解して聴いていただいたんですけど、そこの時点でどういう音が重なり合ってあの曲ができているのかっていうのが、なんとなく解ってもらえたかなと思うんですけど。じゃあ、前回の続きで、今回は『ミュージック』の裏話的な、音の裏話的な話をしていこうかと思うんですけど。」
江島「おぉ!はい。」
山口「先週は大サビの部分を分解して聴いていったんですけど、この曲の推し所というか、注目すべき部分はイントロだと思っています。先生、この曲はイントロができたときに、この曲いいなって。メロディがふわっと浮かんで……って、メロディが出来た瞬間、あなた、横にいましたよね。」
江島「はい。一郎先生の家でしたね。」
山口「一郎先生が、あのシンセができた後にいきなりぱっと歌ったメロディだったじゃないですか。それくらい、あんな美しいメロディが生まれる……」
江島「お、自画自賛!(笑)」
山口「わははは!(笑) ああいうメロディが生まれるきっかけになったシンセのフレーズが、どういう音のバランスで出来ているのかっていうのを。……結構これ、慎重に作ったじゃん。」
江島「繊細だったね。」
山口「“慎重に作る” っていうのは、バランスを崩さないようにしようっていう。曲のテーマだったり、目的だったり……例えば、Bメロを盛り上げたいけど、Bメロを盛り上げすぎちゃったらサビがしゅんとするとか、キックを出したいけど、キックを出しすぎたらシンセが引っ込んじゃうから、シンセとキックを同時に聴かせながらも、パンチを出すためにはどうしたらいいかとか、結構そういう慎重さが問われる瞬間がこの曲は多かったね。音数が少ない曲ってそういうのが多いよね。ちゃんと聴き取れる分、しっかり作らなきゃな、みたいなところがあるね。……懐かしいね。」
(♪「ミュージック」がイントロから流れて……)
江島「そうそう。懐かしい。」
山口「じゃあこのイントロ部分の、シンセだけを聴いてみましょうか。」
江島「シンセだけ。」
(♪「ミュージック」イントロのシンセのみ )
山口「これ、シンセ1本?」
江島「これ、(いくつかのシンセが)1本になってるの。」
山口「あ、1本にまとまっちゃってるんだ。本当は、このシンセの音も何種類かあるんだよね。」
江島「そして、パーカッションっていう、プツッ、プツッ、っていう音も。」
山口「あ、これね、これ。それだけ聴いてみてもいいですか?」
(♪「ミュージック」Aメロのパーカッション部分のみ )
江島「おー(笑)。」
山口「いたねー(笑)。」
江島「地味(笑)。」
山口「あれ、これ、草刈が作ったんだよね?」
江島「そうそう。」
山口「で、このAメロのキックの音も生(のドラム音)混ざってる?」
江島「これは混ざってない。」
山口「実は、ここは生キック……実際に江島が踏んでいるキックじゃなくて、打ち込みのキックだけなんですよね。ちょっと、それを単体で聴いてみてもいいですか?」
江島「これかな。」
(♪「ミュージック」打ち込みのキックのみ )
山口「これね。ちょっと生ドラムでは絶対に出せない、タイトな、低音がガッチリあって存在感のある音になっているよね。」
(♪ ドラムがフィルインしてBメロに )
山口「“♪い〜た〜み〜や〜” の部分ね!」
江島「そうそうそう(笑)。そんな歌い方してなかったでしょ?(笑)」
山口「ははは(笑)。 あ、すごい。キックがここはあるけど、ここでドラムが生になるんだ。最初ここを(ライブの演出で)ラップトップでやる時に、生ドラムなのにラップトップでやるのヤダって、お前言ってたよね。」
江島「言ってた。」
山口「無視したけど。」
江島「(笑) ……ドンドンドンドン盛り上がって来てる!」
山口「ザキオカ(※キーボード岡崎先生のことです)! 行け!行け!」
江島「行け!行け!……へへへ(笑)。」
山口「で、ここ!ここ! この後“♪消えた〜”ですね。」
(♪「ミュージック」サビになって )
江島「おー!」
山口「はい、開ききりましたー。ここが、“♪消えた〜”の部分ですね。」
江島「ここで初めてギターが出てくる。」
山口「そうだそうだ。生ギター※ね。それ、ソロで聴いてみようか。(※打ち込みなどではない、生演奏のエレキギターのこと)」
(♪「ミュージック」サビのギターのみ )
山口「“♪消えた〜”から、モッチ(※ギター岩寺先生)が出てくる生ギターが……これですね。これだけ(笑)」
江島「ははは(笑)。」
山口「トゥリン、トゥリン、ってやつ。これ、ライブでも弾いてるよね。」
江島「弾いてる、弾いてる。」
(♪「ミュージック」Aメロ(2A)になって )
山口「これが、サビ後のAメロ。ここから生ベ(生ベース)のグルーヴが出てくるんだよね、ようやく。ライブでも、ここから草刈は生ベになるね。ラップトップから。」
(♪「ミュージック」Aメロ(2A)のパーカッションの音が鳴って )
山口「……あ、シャラシャラシャラって音、入れた!」
江島「入れた。」
山口「これも入れてって言ったんだ、俺。シャラシャラシャラ……って、なんかこう、指でバラバラってやるやつあるじゃん、みたいに言って。……これ、懐かしいね。うちで、みんなで。」
江島「ね。なんかいろいろやってたね。」
山口「めちゃくちゃやってたね。」
江島「こんなバラバラで聴き返すことあんまないですね。」
山口「ないない。僕らもあんまりこういう機会ないから良いですね。」
江島「うん。」
山口「……なんか、ここのベースシンセも何回か録り直した気がするな。」
江島「録り直したよ。」
山口「なかなかいっくん、うんって言わなかった(笑)。」
江島「いっくんOKなかなか出ないですよ!これ、家でやってるからさ、ずーっと。朝までやってて。」
(♪「ミュージック」2サビ前のドラムのフィルイン部分 )
山口「あとここのさ、タランタラン(フィルイン)の音色も結構、慎重にやったよね。」
江島「やった。」
山口「歪ませて、コンプかけて……。」
江島「うん。」
山口「モッチの(ギターの)タラッ、ってやつも、もっと、『インナーワールド』みたいに、タラッタラッってやっちゃえって言ってたんだよね。そしたら、ライブでタラッタラッてやってるよね、あいつね。」
江島「やってる、やってる。」
(♪「ミュージック」2サビ明けに向かっていく )
山口「わ、ここも(シンセの音を入れて)フワーって、やった!」
江島「これ※、DJミキサーを使ったんだよ。(※フィルターで曲全体の音が暗くなったり明るくなったりする部分)」
山口「あ、そうだ、そうだ。」
(♪「ミュージック」大サビになって )
山口「ここで、ギターもシンセと同じフレーズで……チャッ、チャッ、チャッチャッチャ、って。ギターも同じフレーズで乗ってこようぜって言ったの。それで、ギター(の定位)をセンターにしたんだよね。」
江島「うん。」
山口「ここって、完全にドラム生も入ってるよね?ここから生が完全にフルで入ってるよね?」
江島「あ、ずっと入っているんだけどね。Bから。目立たない。」
山口「最初さ、サビのは“♪消えた”だけだったんだよね。大サビなかったんだよね。」
江島「ない。あと、“♪消えた”の後のコーラスもなかった。」
山口「“♪夜は流れ”もなかったんだ。で、最初はそれだけでサビはいいじゃんって言ってたけど、やっぱり最後にご褒美を作ろうって言って、その場で俺がメロディを作ったんだよね。……最初、俺、自信なかったんだよ。最後の大サビのメロディ。“♪振り返った〜”のとこ。」
江島「ぱっとしないってこと?」
山口「ぱっとしないっていうか……、なんかこう……、Aメロ、イントロのメロディがすごく美しいなって思ってたから、それに対して最後のサビのメロディはいらないんじゃないかなって思ってたの。」
江島「ほうほう。」
山口「その……いっくん(山口先生のこと)のドS心が、消えただけで格好いいじゃんって気持ちが強くて。最後にそんな大盛り上がりしなくても、この曲は大丈夫だって思ってたの。でも、みんな物足りなそうな顔をしてたから……(笑)。」
江島「ははは(笑)。あ、僕らがですか?(笑)」
山口「そうそう。で、お前が、『いや、あったほうがいいよ。』って言ったの。」
江島「そんな軽く(笑)。」
山口「で、実際にあるとしたらこんな感じかなって言って、俺が家でその場で歌ったんだよ。結構、声を張らなきゃいけないから、深夜だったのに。『やばいから1回しかやんないよ?』みたいな(笑)。」
江島「あ、やったやった!(笑)」
山口「やったよね(笑)。そしたらお前、『あぁ、いいんじゃない?』って。」
江島「そんな感じなの?俺いっつも(笑)。」
山口「いや、お前、結構そんな感じだよ。結構、返事するまでに間がある。『こんな感じだけど、どう?』って言ったら、『…………うん。』みたいな。」
江島「考えてるんだよ、多分。いや、良かったと思いますよ、結果。入れて。」
山口「ね。紅白(歌合戦)とかでも、この部分が、打ち込みから生に切り替わるみたいな……サカナクションのバンドとクラブミュージックの融合って部分で、この曲は担ったよね。サカナクションのひとつのイメージを。」
江島「はい。大切。」
山口「……もう一回ヒット曲作らなきゃダメだな。」
江島「……ちょーだい(笑)」
山口「ははは!(笑) でもさ、僕の中でこの解体の話とはちょっとズレるけど、僕の中でこの『ミュージック』を作ろうと思ったきっかけのひとつとしては、もう1曲『ルーキー』を作ろうと思ったの。『ルーキー』の役割を果たす曲をサカナクションの中でもう1曲欲しいなって思ったんですよ。だから、そういう部分で、この曲のアレンジは、解体して聴いた時に皆さんも感じた、バンドらしからぬ音色だったり、バンドっぽくないグルーヴっていうのがそういう要因なんだけど。『ルーキー』って曲は、サカナクションの中でまた違ったアンセムの曲じゃん。それを作りたいと思って作った曲だったので、もう一回こういう立ち位置の、サカナクションらしいダンスミュージックと、サカナクションが思うロックっていうジャンルの融合の曲を作ってみようかと思いました。今日。……これの反発で『Aoi』作ったもんね(笑)。」
江島「どロックなやつ(笑)。」
山口「どロックにしようってね。結局そうはならなかったけど。『なんてったって春』とかも、結構こうやって解体して聴いたら面白いかもね。」
江島「あー、面白いかもね。」
山口「あれもめちゃくちゃやったよね。」
江島「うん。でも、それも家だよ。モッチと、AOKI(takamasa)さんのTシャツを着ていったときだよ。」
山口「あ!めちゃくちゃケンカしたんだよね。『なんてったって春』を作った時に。『お前、なんでこのグルーヴ感じ取れないの?』みたいな。『でも、理屈的にはこうなんだもん。』って。『いや、理屈じゃなくてちゃんと感じろよ!』みたいなことを言って。朝7時くらいまで言い争いしたんだよね。」
江島「した。」
山口「で、次の日に、江島は、昼から作業で、ピンポーン、ガチャって入って来たら “GROOVE” って書いてあるTシャツ着て来て(笑)。」
江島「ふふふ(笑)。」
山口「『お前、なんだよそのグルーヴって。やる気出して来たんじゃねーか』って(笑)。」
江島「やる気出して来たの(笑)。やる気満々だったから。」
山口「それで感じたんだよね、みんな。お互い。そこでひとつの、ハネる感じっていうかさ。」
江島「そうだよ。で、そのグルーヴTシャツ着た日も、モッチと二人で夜中までやっていたのが、札幌でずっとやっていた感じに戻った感じがしたの。……今もう、絶好調ですよ。」
山口「草刈が妊娠して、岩寺さんが最近、頑張ってくれていますから。」
江島「絶好調です。」
山口「これからのサカナクションも、草刈がそういう状態だからこそまた変わっていくと思うので、まずは『ルーキー』、『ミュージック』に続くようなサカナクションアンセムを。……でもね、実はもう1曲あるんですよ。」
江島「え、もう?」
山口「なり得そうなやつ。次のツアーの1曲目くらいのやつ。……になり得そうなやつね。」
江島「うん。」
山口「まあ、いっくん君も、6ヶ月くらい歌詞に潜っていた分、そこで得たものとか、考えたこととかをここ1年、2年で全部発散したいしね。みんなに助けてもらった分、頑張りますから。」
江島「はい。」
山口「……今は、歌詞のことは考えたくないけど(笑)。」
江島「ただ、歌詞は書かないといけないんですよ(笑)。新曲となると。」
山口「だから、副担任のあなたに頼んでいるわけですよ!」
江島「え?何をですか?」
山口「その、私がね、歌詞でまた潜ってね、春の七草狩りや、秋の山菜採りや、苺狩りや、梨狩りやそういった所に僕が旅立たなきゃいけなくなったときに、あなたがこのサカナLOCKS!を引っぱっていかなきゃいけないわけですよ!(笑)」
江島「おー!!いいんすか?」
山口「はい。その時には、あなたの出番ですから。その時は頼みますよ。」
江島「はい!了解しました!」
山口「よろしくお願いします。」
■サカナクション「ルーキー」
そろそろ、今回の授業も終了の時間になりました。
山口「ずっとね、先生このミックスの授業ってやりたかったんですよ。ようやくこれができたんですけど、また違った曲をシリーズ化してやっていきたいと思います。次、何の曲やりたい?」
江島「……『INORI』とか?」
山口「あー……。あれも苦労したよね。BPMをもっと落としたバージョンもあったよね。」
江島「あった。」
山口「実はそっちの方が気持ちよかったりするんだよね。」
江島「……あとね、(歌が) “ラララ” じゃないバージョン。」
山口「あ!あった。歌ったよ、俺、あれ。」
江島「歌ったやつあるんですよ。」
山口「俺、歌詞覚えてるよ。AOKIさんが東京に来てミックスしていて、明日の朝までに僕書いてきますって言って書いたんだよ。」
江島「そうそう。AOKIさんが帰っちゃうから、帰っちゃう前に書き上げますって。」
山口「絶対書き上げますって言って、その日の朝に書いて歌ったんだよね。……あれ、めちゃくちゃ良い歌詞なんだよ!」
江島「なんで “ラララ” にしたんすか、じゃあ。」
山口「だから、祈り(『INORI』)なんだから、言葉はいらないんだよ。説明いらないんだよ、この曲は。祈りじゃなくなっちゃうの。」
江島「言葉が入るとね。」
山口「そう。だから、歌詞も “何も言わない” なんだよ。何も言わない 言わない 言わない……けど踊る、みたいな。踊ればいいんだよね、みたいなやつだったね。……そんな授業もやりたいね。あと、生徒諸君から、こんな曲も解体してくださいっていうのもあれば、またあなたを借り出すので。」
江島「はい。いつでも来ます。」
山口「パソコン持って、ダッシュで(笑)。」
江島「ははは(笑)。電車は乗らせてくださいよ。」
山口「よろしくお願いします。」