ロンリーベム挿絵本化計画

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〜アイツからの、ちょっと長めのメッセージ〜

僕が初めてとり子さんのイラストを見たのは、少し前の話。

イラスト募集の締切を過ぎた、ある日のこと。SOLの職員の方から「この人に決定しようと思います!」と、僕の携帯メールにイラストが送られてきたのです。

とり子さんのイラストは見ていると心が吸い込まれていくような深みのある、なんていうか、こう、言葉では言い表すことのできない何かがその色から形から溢れ出しているようでした。

こんな素晴らしい絵でべムが動き出すと考えたらすごくワクワクしたし、みんなの中に映っていた、主人公べムを見れた気がしてとても嬉しかったです。もちろん二つ返事のイヌワラビ。

そしてそれからすこし時間が経って、思っていた通りのロンリーベムのイラストとしてこのうえない、とり子さんの絵ができあがりました。

でも。

小説にイメージをつけて絵本にしてしまうのはどうなんだろう?

正直僕自身、自ら絵本化を持ち込んだ訳ではなかったので、こんな風に思うこともありました。特にこのロンリーベムという作品は、文章の中での読者の色んな想像が物語を彩って人それぞれのさまざまなロンリーベムの世界を持って読んで頂けたら、という思いが僕の中にあったので、決まったイラストを1つつけることによってその世界が、もっと言えば、その世界で読者が感じたものが薄れてしまわないか、と危惧することがあったのです。ロンリーベムの世界が狭くなってしまうのではないかと。僕はそんな気持ちを持ちながら完成した絵本を読みました。

原作より少し短くなった文章に、色鮮やかでどこか悲しいイラスト。
違和感を覚えるほどに新鮮なイラスト。

その全てが僕の、世界を変えました。そう、僕のロンリーベムの世界は広がったのです。

過剰表現でもなんでもありません。なぜなら、自分の見られなかった世界がそこには広がっていたから。僕の後ろめたい気持ちなんてどこかへ消えてなくなってしまうくらいの、新しい世界に出会えた喜びだけがそこにありました。自分だけのロンリーベムの世界で感じたものはそのままに、同じ作品の中でもまた新たな2つめ、3つめの世界を感じることができたのです。今では、絵本になったことの意味をそこに感じるし、改めてこの絵本が完成して良かったなと思います。

この絵本が完成してやっと、ロンリーべムは完結になります。第一話が掲載されたあの日から思えば長い長い間、べムはずっとみなさんと一緒でした。

改めて僕にとって『ロンリーベム』とは、自分で作ったものであり自分で作ったものではない、と思います。第二回 蒼き賞という日本一ロックな文学賞だからこそできたもの。

去年の1月8日のラジオの生放送、放送終了で第一話募集の締め切りのその日。僕はその時から自ら何かを書くということに興味をもっていて、蒼き賞にも応募する意向で、第一話も半分くらい書き上がってはいました。

けれど、僕なんか、こんな作品なんか。そんな気持ちがやっぱり少なからずあって。僕はロンリーべムを、応募できないでいました。第一回の作品は全て読ませていただいていて、そんな作品とかは別世界にいる人が書いているみたいなそんな気持ちだったし、小説なんか書いたこともなかったし、そもそも日頃からそういった文学というジャンルに触れることすらほとんどありませんでした。でも、放送の中で校長教頭が、送ってこいよ! と叫んでいるのを聞いて、ここで送らなかったら後悔するんじゃないだろうか、なんて気持ちがだんだん大きくなってきて、何だかいてもたってもいられなくなって、急いで携帯に文字打って、2時間ほどで書きあげて、締め切りちょっと過ぎていたけれど送って。とりあえず送るだけ送って、当たって砕けようみたいな。そんなもん、なんです。だから、もちろん作品に自信なんてなかったし、最終選考6つの中にノミネートされてウェブサイトにロンリーべムが載った時も実感湧かなかった。謙遜じゃなしに、本当に。

しかし今は、この作品を自信をもって人に自慢することができます。僕が書いたロンリーべムです、と胸を張って言えます。それは皆がべムのことを考えてくれてたから。皆が少しでもこの作品に興味をもってくれたから。皆が応援掲示板で、面白い! って言ってくれたから僕は自信を持って、ロンリーべムを最終話まで書ききることができました。

もしどちらかがいなかったら成り立たないことだったと思うし、この関係があったからこそロンリーべムはできました。そしてそのロンリーべムのおかげでいろいろな、ほんとに数え切れないほどのいろいろな貴重で楽しい経験をすることができたし、いろんな人に出会えたし、素晴らしすぎる世界をたくさん見ることができました。僕にとって本当に大事な大事な作品です。

長くなりましたが最後に改めて、皆さん、ありがとうございました。第二回 蒼き賞 au賞を受賞させていただき絵本化が決まったその時からこの絵本完成にいたるまで、数知れずたくさんの温かい人にご協力いただき、こんなに素晴らしい絵本が完成したことを、僕イヌワラビ自身ロンリーベム著者として、そして一読者として、非常に嬉しく思います。この絵本化を期待して待っていてくれていたあなた、一生懸命描いたイラストを送ってくれたあなた、そして絵本作成に伴ういろんな仕事に動いてくださった職員のあなた、そして今この文章を読んでくれているあなた、みんなどうもありがとう!  心から!

イヌワラビとして、皆さんのもとにこうして文字を届けるのが、これが最後だと考えると何だか悲しいし、まだまだ言い足りないことがたくさんある気がしてなりません。でも僕は多分、これからもこうして下手くそながら、文字を書き続けるし、またどこかで会えたら良いなって思います。

べム、君はとても有名に、なったね。僕は君に出会えて本当に良かったです。
また、その時までね。また、君が、僕を変えてくれるその時まで。

生きよう! 生きよう! 生きよう!
全力のありがとうを君に!
そして皆に!!
皆さん、ほんとうにありがとうございました!\(^o^)/

2010年10月 イヌワラビ