今週のテーマは「運転はネガティブな感情に影響される」。
コメントは広島大学大学院 人間社会科学研究科 経済学プログラム
教授 角谷快彦さんでした。
クルマを運転する方は、イライラや怒りといった感情が
安全運転を阻害すると感覚と経験から思っているのではないでしょうか。
しかし、これまで科学的にそのことは証明されていませんでした。
最近になって角谷教授の調査・研究で証明されたのです。
研究チームは、つばめ交通株式会社、
TDK株式会社、NECなどの協力を得て調査を実施しました。
つばめ交通のドライバーから無作為で15名を抽出し、
TDK開発の生体センサーを装着してもらって心拍の揺らぎを計測。
その心拍の揺らぎにNEC開発の特殊なアルゴリズムを当てて、
感情・怒り・悲しみ・リラックス・幸福といった感情を読みとります。
そして、15日間にわたってその感情と勤務中の運転記録とを擦り合わせて分析。
その際、年齢・学歴・年収・婚姻状況など社会経済変数をコントロールしました。
その結果、明らかになったのが5つのこと。
<1>
怒りと悲しみの感情はスピード超過のリスクを上げる
<2>
ニュートラルな感情はスピード抑制に寄与する
<3>
幸福感やリラックスなどの感情はスピードに影響しない
<4>
乗客を乗せて走る時間の長さや売り上げの大きさは走行スピードが増す要因になる
→ この点については、売り上げが大きい、つまり乗客を乗せて走る時間が長いほど
乗客を目的地まで早く送りたいという気持ちから
走行スピードが増す時間が多くなる可能性がありそうです
<5>
個人収入、世帯資産の大きさ、勤務時間の長さはスピード減の要因になる。
→ この点については、経済的に余裕があると気持ち的にも余裕が生まれる
ということが考えられるかと思います。
そして、勤務時間が長いとゆとりを持って運転しようとする意識が強く働くのかもしれません。
反対に短時間で稼ごうと思えば緊張が高まりイライラしやすくなるかもしれません。
角谷教授からのアドバイスは、運転してる最中に急に悲しみの感情が湧いてきたり
イライラの感情が湧いてきた場合は、可能であれば車を路肩に止めて深呼吸すること。
また同乗者が深呼吸しよう、リラックスしようと声をかける。
それだけで、かなり速度超過のリスクを減らすことができるし、
安全運転につながる可能性が高いと考えているそうです。
調査対象がタクシー運転手の方たちなので、
勤務時間の長短や売り上げなど、プロに関する部分もありましたが、
一般のドライバーは、ネガティブな感情の部分、
怒り、イライラ、悲しみ、悩み、考え事がある時は、
運転、気をつけてください。