日本列島は梅雨の季節に入りました。
雨が降らない日と雨の日。
「雨の日のほうが、交通事故が多い」ことは想像できるしょう。
交通事故の統計を調べている「全日本安全協会」によると、
その数はおよそ5倍。
つまり、これからしばらくは、
特に気を引き締めてクルマの運転をするべき時期。
今週は「雨の日に事故が多い理由」をおとどけしました。
コメントは国際自動車ジャーナリスト
清水和夫(しみず・かずお)さんでした。
雨の日に事故が増える理由は大きく2つ。
1つは雨によって視界が悪くなること。
もう1つはタイヤが滑りやすくなること。
ドライバーにとって雨が降ると
雨そのもの、ワイパー、周囲が暗くなることで
雨が降っていない時より、視界が悪くなります。
夜ならなおさら。スピードを出していてもなおさら。
ドライバーは運転に必要な情報の9割以上を目から得ているといいます。
さらに車外の「音」の情報も、雨音に遮断されかねません。
さらに歩行者や自転車の運転者も傘をさすことで、
また雨を避けるために下を向くことで視界は狭くなります。
以上のことから、当然、事故の危険性は高まります。
雨が降ったら、それはいつも以上に、安全運転を心がける合図です。
そして、もう1つのタイヤが滑りやすくなってしまうこと。
これは「グリップ力」と呼ばれる摩擦力に関わっています。
タイヤが路面と接している面積はハガキ1枚ほどの面積。
ゴム素材と路面の間に生じる摩擦力があってはじめて
クルマは前後に走り、左右に曲がり、止まります。
ところが水によって、その摩擦力は減少。
操作がしにくくなるのです。
その最たるものが、教習所で習ったこと覚えていますか?
「ハイドロプレーニング現象」。
道路の水たまりの水深が深くなるとタイヤの溝で雨水を掻き出しきれず、
車体が水上飛行機のように水たまりの上で浮いた状態になってしまうのです。
そうすると水の量、スピード、タイヤの磨耗具合と比例して
氷上をスケーティングするように滑ってしまいます。
ハンドルを切ること、ブレーキをかけることが出来ないかもしれません。
ただ、ハイドロプレーニング現象だと思った時には急な操作は禁物。
ハンドルを切る、ブレーキをかけるはやってはいけないこと。
落ち着いて、スピードが落ちるのを待てば、タイヤが路面に接するようになります。
ハイドロプレーニング現象が起こらないようにするには、
雨の日の運転はスピードを出さないこと。
日頃からタイヤのチェックをしておくことです。
一応、新品のタイヤの溝が10だとすると3までは使用してもいいことになっていますが、
タイヤは使えば使うほど磨耗していきます。
ハイドロプレーニング現象の危険性は日に日に高まっているのです。
そこで、5割ぐらい減ったことを目安に、新しいものと交換するといいでしょうというのが
清水さんのお話しでした。
雨の日に事故が多い原因は視界不良とタイヤが滑りやすくなること。
ふだんのタイヤ点検を怠らず、雨の日にはスピードを控えて、
ワイパーを動かしたら自分の安全スイッチも入れるよう心がけるようにしましょう。
今週月曜日、6月1日に、改正道路交通法が施行されました。
注目するべきは自転車に対する取り締まりの強化。
今週は東京 麹町 みらい総合法律事務所に所属する
交通事故に詳しい谷原誠弁護士にお話を伺い「自転車と交通安全」を追跡しました。
自転車取り締まりの強化の背景には悪質な運転の増加があります。
かつては歩行者と同じように交通事故では被害者側だった自転車の運転手。
ほぼ取締りの対象にはなりませんでした。
しかし、ここ最近、その立場は加害者側に移ってきました。
自転車事故によって死亡する、重度の障害を負う事例が増えてきたからです。
近年、交通事故全体、自転車が関係した交通事故、ともに減り続けています。
しかし、自転車と歩行者の事故数は、ほぼ横ばい。
道交法違反容疑で摘発された自転車運転者は5年で5倍に増えているのです。
今回の改正道路交通法で、14の自転車運転の「危険行為」が特定されました。
危険な行為を3年以内に2回以上、犯した場合、講習が義務付けられます。
講習の手数料は5,700円程度。
講習を受けない場合には5万円以下の罰金を支払わなければいけません。
14の「危険行為」には判りやすいものと判りにくいものがあります。
「信号無視」
「酒酔い運転」
「ブレーキのない自転車の運転」
「歩道での歩行者妨害」
「携帯電話を使いながらの運転など安全運転義務違反」
「遮断機が下りた踏切への立ち入り」
以上の項目は読んだ通り。
特に問題はないでしょう。
他の項目、少し判りにくいものを解説しましょう。
「一時停止違反」
→ 自転車も道路交通法上、軽車両で車両の1種。
車用の一時停止ラインがあったら自転車は止まらないといけません
「歩道での徐行違反」と「路側帯の歩行者妨害」
→ 基本として自転車は車道を走らないといけません。
歩道を走っていい場合も歩行者の邪魔にならないよう徐行します。
歩道がなくて車道の左端等に路側帯がある場合は、
歩行者を優先として邪魔しないように路側帯を走ります
「交差点での優先道路通行車の妨害」
→ 信号機が無い交差点では太い道路が優先。
同じような道路だとしてもセンターラインが交差点で切れずに繋がっている方が優先。
その優先道路の車や自転車の妨害をしてはいけないということ
「通行禁止違反」
→ 自転車のマークにバツが打ってある自転車通行禁止の標識がある道路、
高速道路など自転車が通行してはいけないところを走ってはいけません。
自転車OKの表示がある場合をのぞいて一方通行の逆走も禁止です。
自転車運転の加害者になると損害賠償金が発生します。
自転車の保険に入っている人は少ないはず。
重度の事故なら数千万円という金額を自分で払わなければいけません。
取り締まりが強化されたこの機会に、
安全に自転車を運転するための正しい知識を身につけましょう
以前に一度「追跡」で取り上げた、
欧米では一般的なドーナツ状の交差点「ラウンドアバウト」。
日本でも試験導入されていましたが、
去年9月施行の道路交通法改正で「環状交差点」と定義され本格的な運用がスタート。
全国の警察に指定されることとなりました。
2015年5月現在で、その数は「45」。少しずつ増えています。
そこで、今週はラウンドアバウトの現状と安全性を追跡。
コメントは長年「ラウンドアバウト」の研究と普及に取り組む
名古屋大学大学院 交通工学が専門の中村英樹 教授でした。
あらためて「ラウンドアバウト」は、中央に円形の区域があり、
その周りをドーナツ状に道路が通る、信号のない交差点。
ドーナツ状の道路には、複数の道路が垂直に交差。
この接続した道路から左折してドーナツ状の道路に入り、
時計まわりに徐行、目的とする交差道路から抜け出る方式です。
優先されるのは円の道路に入るクルマではなく円の道路を走っているクルマ。
丸い交差点という意味で言うとロータリーが広場から始まって100年以上前からありました。
それを1996年にイギリスで、その丸い交差点の中の交通を優先にすると、
安全で処理能力も高くなるという事が分かり、近代的なラウンドアバウトが始まりました。
「ラウンドアバウト」の最大の利点は「安全性」。
通常の交差点では速度がそれなりにあるので、
出会いがしらの事故や対抗右折車と直進車が大事故になり、
運転者や同乗者にダメージが生ずることが非常に多いものです。
でもランドアバウトの場合は、合流で進入し、進行方向が同じ方向なので、
速度も落ちていて仮に車がラウンドアバウトの中で接触したとしても、
大事故にはならないというのが大きなメリットになります。
例えば2年前の3月からスタートした
長野県 飯田市の東和町ラウンドアバウトでは、
これまでのところ人身事故は起こっていません。
「ラウンドアバウト」以前、信号交差点時代を同じ期間遡ると、
2件の人身事故があったといいます。
同じように、物損事故はあるものの、
今のところ「ラウンドアバウト」に指定された他の交差点でも、
人身事故は起こっていないそうです。
ただ、まだ慣れない交通システム。
「ラウンドアバウト」には、横断歩道もあるので、
ドライバーも、歩行者も、十分な注意が必要です。
ラウンドアバウトには横断歩道が付いている所もありますから、
交差点の出入り口には信号のない横断歩道が付いています。
そういう意味では、信号が無い分、ドライバーの方でも気を付けなければいけませんが、
通常の交差点よりも車両の速度がかなり落ちています。
また、交差点の構造も横断歩行者の方が安全に渡れるような横断歩道の構造、
横断歩道の真ん中に島を作って2段階で横断するというようにすれば、
1回の横断距離が短くなって安全確認も最初は右だけを見る。
真中から先は左だけを見るということで、歩行者は渡りやすく、
安全性を高めると言われています。
「ラウンドアバウト」の他の要素を見るとメリットとディメリットがあります。
<メリット>
信号待ちが無くなり、円滑な交通を生む可能性があります
1日の交通量が15,000台程度の交差点であればメリットあり
<ディメリット>
交通量の多い交差点では威力を発揮できず渋滞を生む
都市部よりは郊外や地方向き
<メリット>
信号機の初期投資 維持管理コストがいらない
<ディメリット>
導入に適した交差点にはふつう信号機があり
改良するには相応のコストがかかる
他にも「広い敷地が必要」「道路を管理する地方自治体の情報と知識」
「利用する市民への周知と教育」など課題はいろいろ。
それでもいま「ラウンドアバウト」への関心は高まっています。
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