今回はfeaturing 信号機。
道路交通の安全を確保する万国共通のツールを追跡。
コメントは日本大学 理工学部 交通システム科 安井一彦 准教授でした。

日本にクルマが輸入され、国内生産が始まったのは20世紀初頭。
大正中期から昭和初期 のその頃、信号は警察官の「挙手の合図」 。



あるいは文字の信号票板。
手動で「止」「進」を変えていました。



現在の日産自動車の前身「ダットサン商会」、
トヨタ自動車の前身「豊田自動織機製作所 自動車部」の設立は1932年と1933年。
その少し前の1930年(昭和5年)に日本初の自動交通信号機が登場しています。

日本初の自動交通信号機設置は日比谷交差点。
交差点の中央に設置された縦型のもの。
アメリカから輸入された信号機は上から「赤」「黄色」「緑」。
当時の人たちは意味を把握していませんから
信号の上には「トマレ」「チウイ」「ススメ」という片仮名の文字が。



「赤」「黄色」「緑」の色と意味は、この頃から世界共通。
CIE(国際照明委員会)で決められていたからです。

赤・・・「停止」

黄・・・・「原則、止まれ。」

緑・・・「進め」


赤・黄・緑が選ばれたのは、色には波長があり、
信号の3色は、波長が長く、遠くから見えやすいからだとされています。

その中で、なぜ「赤」が「止まれ」なのか?
信号機はクルマよりも先に鉄道用がありました。
「赤」は霧の中でも見えやすい。そして、視神経を刺激する色。
注意喚起に繋がるので「止まれ」になったと言われています。

そして「黄色」は「注意して進め」ではありません! 
クルマは停止位置を超えて進めません。
そのため信号が「緑」から「黄色」に変わった時、
停止位置に近くて安全に止まれない場合には、
例外的に進行していいというものです。

それでは横断歩道にある歩行者用信号が青く点滅している時、
みなさん、どうしていますか?

青点滅はもう横断を開始してはいけないという法的な定義になっています。
青点滅に関しては横断歩道の長さの半分を1m/secで歩いた秒数を
半分まで行っている人は速やかに渡る、
半分まで行ってない方は戻るという意図があります。
しかし、大多数の人は青点滅になると急いで渡る傾向があるので気をつけましょう。

そして、進めの色・・・ ここまで「緑」と表記してきましたが、
「緑なのか? 青なのか?」と疑問を持ったことがある方もいるでしょう。
答えは・・・日本以外の国は全て青ではなくて緑。

日本では「緑」という言葉が「赤い」「黄色い」のように活用できない文法上の性質、
日本語では野菜も「青もの」というように「青」には広い意味があること、
さらに色弱の人に配慮したという説もあり・・・「青」として一般に定着。
昭和22年には法令でも「青信号」とされました。

ただ、信号機で使う色については国際的なガイドラインに合わせて、
CIE規格の緑の範囲でなるべく青い色を採用しています。

第1号の自動交通信号機が設置されてから85年。
日本の信号機は20万基以上ありますが、それは世界に誇れる技術。

まずは信号制御器が凄くハイスペックで故障しない。
信号灯器についても、最近はLEDが出ていますが、
電球式であっても電球の寿命の前に交換するので信号の電球が切れているのを見る事が無い。

主要幹線だと、交通管制センターと接続されているので、
車両感知器交通量を計測し、その交通量に基づいて
交通量が増えると青の時間を長くして、交通量が少なくなると青の時間を短くします。

また東京都内では、モデラートという世界初の制御方式がスタートしています。
1サイクル事に交通量を計算をして信号のサイクル時間を変えるという
とんでもない凄い技術が採用されているのです。

そんな世界に誇る日本の交通システムですが、
各ドライバーの無謀な運転がそれを台無しにしてしまっては元も子もありません。
優秀な信号機がスムーズな交通を実現するように
ドライバーもスマートな運転を心がけるようにしましょう。



地域で開催される交通安全教室は時代を反映して変わってくるかもしれません。
最新テクノロジーを使って「危険」を実感。
実生活に役立てようというツールが登場しました。

神奈川県平塚市にある株式会社ラッキーソフトは、
2012年 7月創業の新しい会社。
鉄道運転士用の訓練シミュレータの製造を主な事業としてスタートしましたが、
その技術を応用して開発したのが「交通安全 危険予測シミュレータ」です。

「交通安全 危険予測シミュレータ」は、
三面鏡のように繋がった、3つの、48インチ液晶モニタと向き合います。
中央に自分と並行のモニタが1つ。その左右に1つずつ。
左右のモニタは中央から内側に少し折れ曲がる角度になっています。

この3つの画面にバーチャルな目の前の街が映ります。
手を振り、足踏みすると、歩いているように後ろへと流れていく景色。
その中で街に潜むいろんな危険を避けながらゴールを目指します。
ちょっとしたゲーム感覚で歩行者の危険体験ができるのです。

シーンは4つ。
さらにそのシーンの時間帯や、天候、交通量を変えることができます。
このシミュレータをやってみると意外とのほほんと街を歩く自分に気づくかもしれません。
目と耳で情報をキャッチして「危険」に敏感になっていることが大切です。

このシミュレータで「危険」に気づかなかったり反応が遅かったりすると
車や自転車や人に激突して一瞬画面が赤く染まります。
なんだか本当に交通事故に遭ってしまったような気分・・・

ゴール後は「体験者本人」「上空から」「ドライバー目線」と視点を変えて
体験者の注意点を分析・確認することができます。
「大型液晶モニタ」タイプに加えてゴーグル型の「ヘッドマウントディスプレイ」タイプもあり。
それぞれ価格は300万円、280万円ほど。

先日、都道府県警察の1つと契約を交わしたとのことで
こうしたツールが交通安全教室の場に導入されると
特に子供や高齢者にとっていいレッスンになるでしょう。


今週は『渋滞学 後編』。
先週に続いて東京大学 先端科学技術研究センター 
数理創発システム分野 西成活裕教授にお話を伺いました。

渋滞はもちろん目的地への到着が遅延するもの。
その経済的な損失は日本全体で年間12兆円という試算があること。
解決のキーワードは「車間距離40m」だということを先週お伝えしました。

それだけではありません。
渋滞は交通事故に繋がるもの。
渋滞防止は事故を防ぐことにもなるのです。

西成教授によると高速道路で起こる事故の20%は渋滞が原因。
高速道路は渋滞をして車が止まっているというイメージがないもの。
そのため見通しの悪い坂道の下で渋滞が起こっている時に
普通に走ってきた運転手にとっては、急に目の前に止まっている車が出現することになり、
ぶつかってしまうといことが少なくありません。
渋滞における、後ろからの追突事故は、非常に多いのです。

また、渋滞は運転手をイライラさせ、周りに注意が行き渡らなくなり、
追突すると二次的な事故も、もちろん考えられます。

20年「渋滞学」を研究してきた西成教授が出した結論は、
クルマの渋滞が解消できるか否かは人間にかかっているということ。
研究当初は道路を建設したりすることで渋滞をいかに無くすかを考えました。
その後は運転手の挙動を変えることによって渋滞を無くす方法を考えました。
そして、技術の革新も渋滞緩和に有効です。
今後、自動運転が実用化されれば、渋滞は今よりは緩和されることは確実だそうです。

でも、運転手が利己的な振る舞いをする社会であれば、
渋滞は増えていってしまうのではないかと西成教授は指摘します。
自分も早く目的地に着くのではなく、みんなでそうなるようにしようという、
社会的な視野をを我々が持つことができるかどうか。
そこにこそ渋滞解消の鍵があると西成教授は考えています。

«Prev || 1 | 2 | 3 |...| 161 | 162 | 163 |...| 167 | 168 | 169 || Next»