交通心理学という分野があります。
どんなタイプの人が事故をよく起こしやすいか研究し、
その成果を反映させてより安全な車社会を形成しようというもの。
交通心理学士という資格もあり、交通心理学会という組織も発足しています。

今回は、その交通心理学の専門家
九州大学大学院 システム情報科学研究院 
志堂寺和則教授のコメント・監修で「交通心理テスト その1」をお送りしました。

まず、下の3問。
あなたはYESですかNOですか?


<第1問>

【些細なことで、意外とすぐに「イラっと」する】


<第2問>

【忙しい現代社会、特に急いでいなくてもエスカレーターは右側を歩いて進む】


<第3問>

【大切な持ち物でも、どこかに忘れたり、失くしたりする、そそっかしい性格だ】



この3問はせっかちか、短気か、といったことについての質問です。
せっかちな人、そそっかしい人は基本的に余裕のない運転をしています。
一時停止をしない、スピードを出し過ぎる、車間距離をつめて走る。
急いでいる運転を日常的にやっているので
前の車との接触などの事故が起きやすくなる。
さらに短気な人というのも事故を起こしやすいタイプです。
無理な割り込みをされた時に車間をつめて煽るというような行動に出がちです。
運転に限らず、急ぐことと正確さは相反するということがわかっています。
急げば正確度は落ちるし、正確にやろうとすると急いでやれないという事。
安全運転をしようとすると、急がないという事が大事になります。
上の3つの設問がYESだった方、その数が多い方は、気をつけて下さい。


<第4問>

【明るい時、憂鬱な時、1日の中で感情はとても豊かだ】


<第5問>

【買い物で欲しいモノがあると金額や後先のことはあまり考えず買いに走る】


この2つは「感情的か」「衝動的か」ということについての質問。

気分屋タイプ、衝動的な人たちは、基本的にムラがあり安定した動作が出来ません。
調子が良い時は良いのですが、調子が落ちてしまうと危険な運転になりがちです。
また、こういう人たちは自分を抑えられないという特徴を持っています。
一時停止をしないといけないところを、急いでいるからといって、
徐行で通過したりというような行動が多く見られます。

衝動的という場合は、いつもでは無い、そこが気分屋に関わるところで、
ある時はちゃんと落ち着いて行動が出来る、一時停止が出来る。
ところが衝動的な人というのは何か要素が入ってしまう、
例えば、急いでいるという状態になると自分を抑えられないというような事が発生します。
こういったタイプの人は、極力、自分を冷静に見るといいう習慣を身につけて下さい。
冷静に自分を見ることを心理学では「メタ認知」と言います。
運転している自分を冷静に1つ上の視点から眺める事を心がけるようにしましょう。

第1回「交通安全 心理テスト」。
5問出題しましたがYESはいくつあったでしょうか?

YESが多いほど運転が危ないタイプ!
ご自分がYESだったところを、もう一度、思い返してみて、
今後の安全運転に役立てて下さい。
近いうちに、第2回の心理テストも行います。



想像してみてました・・・

→ 愛車を大切にするドライバーはクルマを傷つけたくない

→ 無茶で乱暴な運転は避ける

→ となると、交通事故に関わる確率は低いのでは?

→ そういう愛車を愛する人は掃除もマメにしているはず

つまり・・・「クルマがキレイな人は交通事故に縁が薄い」という仮説を
今回、立ててみました。専門家の中に、このことを指摘している方を探してみると・・・いました。
以前、この番組にコメント出演して下さった
日本モータージャーナリスト協会 副会長  菰田潔さん。

菰田さんは「車を綺麗に保つということは事故を防止する効果がある」と考えています。
アメリカの損害保険会社に勤めていた Mr.ハインリッヒが、
導き出した労働災害における経験則「ハインリッヒの法則」というものがあります。

それは「1つの重大災害の背景には29件の軽災害があり、
「その背景には災害にはならなかった300件の異常がある」というもの。
菰田さんはこの法則は交通事故に当てはまると指摘しています。

「ハインリッヒの法則」でいくと、いちばん最初のヒヤリハット、
あるいは軽微な事故を減らす事が重大な事故を減らす事に繋がる。
だから車を綺麗にしているとほんのちょっとでも傷を付けたくないと思い、
少し危ないなと思ったら早めにブレーキかけたりスピードを落としたりする。
凄くキレイな車には、人も自転車もバイクも他の車も、
なかなか近寄って来ないのではないかと・・という事で、
事故から遠ざかる効果があると考えているとおっしゃっていました。

そこで、愛車の清掃をするときは一石二鳥で交通安全を考えてやりましょう。
窓ガラスは外側、内側、両方とも綺麗にしておく必要があります。
西日に向かって走る時は窓ガラスがキレイか否かで走りやすさが変わり、
汚れていた時に眼が疲れて運転しにくくなることが事故に繋がります。
また、窓の内側が汚れていると、雨が降った時などはくもりやすくなる、
後ろや横の窓も綺麗にしておくことも大切です。
そして、ヘッドライト。汚れでくもっていれば、
明るいライトでも光量が減ってしまったり配光が乱れます。
さらにミラーも綺麗にしていれば安全性に繋がります。

菰田さんによると窓ガラスの内側の掃除は2枚の布を使い、
水拭きをして、乾拭きをするとベター。
最近では「ガラス掃除専用」マイクロファイバーの布もあります。
繊維の細さが毛髪の100分の1で汚れをとる能力が優秀
こうしたものも使ってみてはいかがでしょうか?

交通事故には整備不良に起因するものがあります。
平成26年は交通事故全体54万4千件のうち66件が整備不良のために起こったもの。
割合はわずかですが、66件のうち2件が死亡事故、10件が重傷事故と軽視できません。
その中で最も整備不良が事故に繋がっているパーツはタイヤ。

クルマを清掃する時はタイヤとホイールも一緒に綺麗にして状態のチェックをしましょう。
空気圧は低くないか、溝がなくなってしまっていないか、傷ついていないか。

車内は定期的にバキュームクリーナーをかけて埃をとる。
そうすれば室内の空気をキレイに保ち快適な運転ができてこれも交通安全に繋がります。
そして、車内を掃除した時は、荷物も整理しましょう。

車内にたくさん荷物を積んでいる人いるでしょう?
急ブレーキを踏んで事故を防ぐという場合も、
後ろに積んであるモノが前に飛んで来るのです。
これは、非常に危険。足元に転がってブレーキペダルの下に挟まったりすると、
ブレーキが利かなくなる危険もあります。
速度50kmでぶつかった時に車内の荷物が、
50kmで自分の顔にぶつかってきたら大けがをしてしまいます。
自分にぶつかって痛そうなモノは車内に置いておかないようにしましょう。




今週は先週に続いて、長年にわたり交通事故防止の研究に取り組んできた
九州大学 松永 勝也 名誉教授が提唱するKM理論の後編。
松永教授とともに2012年に事故なき社会 株式会社を設立した
代表取締役 江上 喜朗さんのコメントでお送りしました。

先週の復習をすると交通事故のパターンは、
「追突事故」が4割弱、「出会い頭の事故」が3割強。
これを、それぞれ1つ、2つの運転習慣で無くし、
「交通事故を7割減らしてしまおう!」という提案がKM理論です。

先週は追突事故は「4秒の車間時間をとる」ことで避けられる”という話でした。
今週は「出会い頭」の事故をなくす運転習慣「一時停止を2回する」ことについて。
クルマを運転する方、信号がない交差点で、きちんと一時停止をしていますか?
実はそう思っていても、本当にそれを実行している人は少ないのです。

とある調査によると、きちんと一時停止できているドライバーは5%。
それは、停止線の前で止まっても、交差点の状況の確認が出来ないということで、
止まるなら、もう少し、見える位置に行こうと、停止線を通り過ぎ、
少し前に行ったところで止まることがほとんどだからです。

信号がない交差点は、一時停止線で止まると、交差する道路の状況が見えにくいもの。
一時停止線を過ぎてから止まっている人も多いと思います。
それが「出会い頭の事故」に繋がるのです。

停止線を越えて交差点の中まで少し進入した状態で止まろうとすると、
車が歩道や路側帯を塞いだ状態になります。
交差点を走っている車は避けたとしても、
道路の端を走っている自転車やバイクにとっては、
いきなり停止線を越えて車が飛び出てくる状態になる。
車が頭を出した時に道路の端を走ってきた自転車やバイクにぶつかる可能性があるのです。

こうした「出会い頭の事故」をなくすのが「一時停止2回」の習慣。
必ず停止線の手前で止まれば運転席からは自転車やバイクが見えなくとも、
自転車やバイクの運転手からは車の頭が少し見えて対処ができるのです。
そういった意味で自分が見るのではなく、自分を見せるという意味で、まずは止まる。
そして、再徐行・・・歩くようなスピ―ドで、ジワジワと前に出て行く。
そして最後に、交差道路が見える位置にきたら、もういちど止まる。
確認をする・・・という意味での2回の停止をすれば
「出会い頭の事故」を回避できる可能性が高まります。

おさらいをすると時速60km以下で走っている場合は「車間時間を4秒空ける」。
そうすれば「追突事故」を回避できます。
そして「信号のない交差点では一時停止を2回する」。
そうすれば「出会い頭の事故」を回避できます。
「KM理論」が導き出した2つの習慣を身につけるようにしてください。

最後に松永教授と江上さんが設立した事故なき社会 株式会社では、
「KM理論」に基づいた安全運転研修を企業向けに行っています。



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