今週と来週は30年以上、交通事故防止の研究に取り組む
九州大学 松永 勝也 名誉教授が提唱しているKM理論について。

コメントは2012年に松永名誉教授と設立した「事故なき社会 株式会社」 
代表取締役、チーフコンサルタント 江上 喜朗 さん。
江上さんは福岡市 南福岡自動車学校の代表取締役であり
カメのコスチュームを来て学校をまわり、
交通安全を説く「かめライダー」としても活躍しています。

さて、KM理論という名称は「九州大学」「松永」のアルファベット頭文字から名づけられました。
交通事故の4割弱が追突事故、3割強が出会い頭の事故。

それぞれを1つの運転習慣、
具体的には4割弱の追突事故を防ぐ為に「車間時間を4秒取る」、
3割強の出合い頭の事故を防ぐために「交差点で一時停止を2回する」、
ドライバーがたった2つの運転習慣を身につけることで
4割+3割=7割の事故を無くしてしまおうという提唱です。


♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡


前編は大きな2つの交通事故パターンのうち「追突事故」について。
追突・衝突は『車間距離』と『停止距離』の関係から起こります。


「車間距離」 ・・・ 車から障害物までの距離

「停止距離」 ・・・ 車が止まるまでの距離 

 車間距離 > 停止距離 = 追突しない

 車間距離 < 停止距離 = 追突する



 さらに停止距離は2つの“距離”の合算です → 停止距離 = 空走距離 + 制動距離

 「空走距離」 ・・・ 危険を察知してブレーキを踏むまでに車が進む距離
 
 「制動距離」 ・・・ ブレーキを踏んでから車が止まるまでの距離



♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡


上のことを踏まえた上で・・・まずは「停止距離」。

このうちの「空走距離」は反応が早い人ほど安全と考えがち。
でも、それは間違い。反応速度がブレる人が事故を起こします。
反応が遅い、例えば2秒の人でも、それが一定で自分でそのことを把握していれば、
車間距離を取り、事故を起こしにくいもの。
一方、反応速度が早い、例えば0.2秒という人は、
自分は反応が早い思っていると狭い車間距離での運転となり、
偶然にでも反応時間が送れてしまえば追突事故に繋がります。

この反応がブレる要因は大きく3つあります。
1つが人間の集中力には限界があること。
その前に凄く集中するような事をやっていると、運転の集中力は落ちます。
2つめは心理的なこと。悩み事などにが気がいっていると反応速度は遅れます。
3つめは環境的なこと。霧や暗さや雨などに反応時間は影響されます。

また「停止距離」の要素のもう1つ「制動距離」も
雨や雪など、路面の状態で変わるものです。

次に・・・「停止距離」より長くあるべき「車間距離」は狭くなる傾向があります。
その要因の1つは時間的焦燥感、現実的に急いでいること。
要因のもう1つは人間の本能。
特に急いでいない時でもエスカレーターがあったら歩いて登ってしまう人はいるでしょう。
かつては狩猟をしていた人類。
競合よりも先に獲物と食べないと生死に関わります。
先に先にという衝動が残っているということです。
ビジネス上ではいいことですが、運転では危険に繋がります。

ただ、実は「事故なき社会 株式会社」が交通ルールに沿って行なっている実験では、
「先急ぎ運転は実りがない」という結論が出ています。
約12キロの区間、車でいうと30分ぐらいの距離を、
車間距離1.5秒ぐらいで黄色信号だったら進む先急ぎ運転と
車間距離を4秒取り、交差点の一時停止は2回、黄色だったら行かない安全運転、
10回ずつ走行して平均所要時間を比較すると、その違いはわずか1分30秒なのだそうです。

以上のことを踏まえた上で追突・衝突を起こさないためにはじき出された時間が「4秒」。
一般に「空走距離」の時にかかっている空走時間は1秒とされています。
しかし、前述したように何かの要因で変わるので、1秒余裕を見て2秒とします。
そして、ブレーキを踏んでからクルマが止まるまでの制動時間、
これは一般的に1.5秒をとれば安全だと言われているので2秒+1.5秒。
さらにバッファー0.5秒を加えて4秒をとれば、
反応が遅れたとしても、吸収できる時間だということです。

さて、次回は後編は大きな2つの交通事故パターンのうち
「出会い頭の事故」をなくす「交差点での一時停止2回」についてです。



今週は先週の続き。
コメントは「チャイルドシート」や「子どもを連れたドライブ」について
執筆している自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子さんでした。

チャイルド指導員の資格を持つ加藤さん。
「シートベルト式」のチャイルドシートは、
間違った装着をしているケースが多いそうです。

シートベルト方式はクリップで止めたりしてガッチリと固定するもの。
ところがクリップやロック機能で止められていても緩い状態だったり、
チャイルドシートが締まっていても子どもにつけるハーネスが緩んでいることが少なくありません。
その状態だと万が一の時に子どもががすり抜けて飛んでいってしまう恐れがあります。
ハーネスは「こんな窮屈にしたら苦しいのでは?」と思う人が多いかもしれませんが、
指2本入る位の締め具合で固定するようにしましょう。
また、冬の時期にはダウンジャケットなど厚着をしたままの装着に注意。
車とチャイルドシートと子どもの距離は、
可能な限り密着している事が安全だということを覚えておいて下さい。

また、先週お伝えしたように1歳未満は8割、5歳だと4割・・・と
チャイルドシートの使用率は子どもが大きくなるほど減っていきます。
その原因の1つは子どもがシートベルトを嫌がるようになることだと考えられます。

実際に嫌がる子どもは多いようです。
ただ、それが親の影響によることも少なくないようです。
歩けるようになるとチャイルドシートを嫌がるという固定概念を親が持っているため、
その感情が子供に伝わり、チャイルドシートに座ると
「お母さんが不安そうな顔をしているから、このシート、嫌だ!」・・・という、
イメージで嫌いになってしまうケースもあるとか。

チャイルドシートは大切な子供の命を守る為のもの。
使って当たり前、使わないという選択肢はないという姿勢を持つようにしましょう。
例えば、子供がチャイルドシートと嫌がった時に、
「チャイルドシートしないと、ママが警察に捕まっちゃんだよ?」という態度は良くありません。

子供も2歳を過ぎれば、きちんと教えれば、理解できるようになります。
ただ「これをしてないと危ないから」と抽象的に教えてもよくわかりません。
そこでYouTubeなどでチャイルドシートの使わないとどういうことになるのか、
事故防止を目的にしたシミュレーション動画を子どもに見せて
子ども自身にきちんとした危機意識を植え付けることも大切です。

「今日はおばあちゃんが乗っているから」「友人の車だから」
どんな時でも例外をつくらず、泣いているからといってしなくていいということにもしない、
子どもの安全のために強い姿勢を持つようにしましょう。

最後に女性は安全面を十分に配慮をした上で、
できれば可愛いチャイルドシートを使いたいと思いますが、
今はいろんな製品が出ていて、その点は問題ありません。

例えば、加藤さんが持参してくださったブリタックスのレーマー。
これはイギリス王室、ウィリアム王子とキャサリン妃の長男 
ジョージ君が生まれた時に一躍、世界のママたちに注目を浴びたブランド。

安全意識の高い方たちが選ぶチャイルドシート「ベビーセーフ」、
安全性からも、デザインからもお薦めだということです。

今年4月でチャイルドシート着用が義務化されてから15年。
しかし、その使用率は、まだ「万全」というには程遠い状況です。

今週は「チャイルドシートが子どもを守る 前編」。
コメントはご自身の育児経験から「チャイルドシート」や
「子どもを連れたドライブ」について執筆している
自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子さんでした。

まず、前提として法律上で何歳の子供までが
チャイルドシートの使用を義務付けられているかというと6歳未満。
でも6歳になったからチャイルドシートをしなくて良いという事ではありません。
車についているシートベルトが安全に締められる身長になるまでは、
安全のためにジュニアシートを使うべきです。

広義の意味でのチャイルドシートは0〜1歳ぐらいの乳児用、ベビーシートと言われるもの、
1歳から4歳ぐらいまでの幼児用で狭義のチャイルドシート、
3〜4歳ぐらいから身長150cmぐらいに達する小学校5〜6年生まで使うジュニアシート、
大きく分けて、その3種類になります。

最近、ジュニアシートをするべき子どもが事故に遭った時、
シートベルトはしてなく、ジュニアシートも使ったおらず、
最近、ファミリーカーとして人気のミニバンは車高が高く、重心が高いので、
ぶつかった衝撃で簡単に窓から飛び出してしまったというケースが起こっています。
ジュニアシートは必ず使うようにしましょう。

2014年の警視庁とJAFの調査によると、
チャイルドシートの使用率は・・・

1歳未満 → 83%
1歳〜4歳→ 64%
5歳   → 41%
6歳未満全体だと→ 62%  

全体で使っているのは6割。
5歳の子どもはわずか4割しか使用していないのです。
車のシートベルトをつけられる身長になっていない6歳以上で、
「ジュニアシートを使っている」子どもはもっと少ないでしょう。

さて、いま日本ではチャイルドシートに関して、
ヨーロッパ統一基準「ECE規則44号」が採択されています。
2012年から国内の新製品は、この基準をクリアしたものしか販売できません。
子どもの安全のためには、オレンジ色の四角の中に、
「ECE R44」と記されたマークがあるものを選びたいものです。

この基準はかつてのものよりもかなり厳格なもの。
衝突の時に子供の頭はどれぐらい動くのか、シート自体の移動が何ミリまでとか、
前後の衝突はもちろん横からの衝突にも耐えられるとかが定められています。
ただ、リサイクルショップや、個人売買、オークションでは、
古い基準の物も売られているので「ECE R44」に適合しているものを選びたいものです。

そして、チャイルドシートは装着の方法でも種類が分かれています。
シートベルト固定するタイプとISOFIXという
現在の車の後部座席に必ずついている金具にとりつけるタイプ。

またチャイルドシートには車との相性もあります。
チャイルドシートの売り場に適合表があり、
各チャイルドシートメーカーの公式サイトでも検索できます。
年式と車種名で分かります。

皆さん、どのくらいチャイルドシートについて知っていたでしょうか。
来週はこの続き「チャイルドシートが子どもを守る 後編」です。




«Prev || 1 | 2 | 3 |...| 157 | 158 | 159 | 160 | 161 | 162 || Next»