今回、追跡したのはヨーロッパ各国では
ポピュラーな交通安全のための1つの手段「ライジングボラード」。

日本版ライジングボラード普及に取り組む
埼玉大学 大学院教授 久保田尚さんのコメントを交えてお送りしました。

ふだんは道路の中に埋まっていて何かがあると上がってくる。
あるいは、ふだんは上がっていて、何かがあると道路の中に下がっていく、
機械式で昇降する車止めで、日本でも独自の方式のものが導入され始めました。

ふつうの「ボラード」=車止めは日本でも色々なところにあります。
車が侵入できないように立っている高さ7、80センチの円筒形のもの。





一方で機械式で昇降する「ライジングボラード」は、
もともと重要な建物の入口に設置される警備上のものでした。
例えば以前から日本の国会議事堂前にもあります。
悪質な車が入らないよう通常は上がっていて、
関係車両が入る時は下がり、通り過ぎると再び上がります。

これを交通規制にも利用できるのではないか?
そう考えられたのが、1987年、イギリスのケンブリッジ。

ある時間、ある場所に車に入らないようにするのが交通規制。
典型的な例でいうとスクールゾーン。
例えば朝7時30分から8時30分までは子供が安全に登校出来るよう車の進入を禁止する。
ただ、禁止を無視して入ってくる車がいないとも限りません。
それをライジングボラードで確実に交通規制をしようとしたのです。

もう1つ大きいのは都心部のいわゆる「歩行者ゾーン」。
人だけが歩いて活性化した都心部を作るような場所にライジングボラードを置けば
そのエリアにいる人は安心して歩くことが出来るます。

イギリス ケンブリッジで交通規制のために導入された後、
ヨーロッパ各国には交通事故防止のためのライジングボラードが普及します。
ところが日本には導入されせんでした。

実はヨーロッパのライジングボラードは鋼鉄製。
許可を得た車が通過したあと「後続の車も通ってしまおう」と試みたところ、
上がってきたボラードが車を直撃してしまうという事故が起こっています。
ヨーロッパは自己責任社会。
入ってはいけない人が入ろうとして事故を起こした訳ですから、
後続の車がボラードを弁償する責任を負うことになります。

ところが日本人は誰かに責任を追わせたいという国民性。
「入ってはいけないと分からなかった」「ボラードが見えなかった」という理由で、
車の損傷を弁済しろという主張が出てくることが予想されたのです。
そこで考案されたのが車もボラードも壊れない
柔らかい素材で作る「ソフトライジングボラ―ド」。

4年前から試験がスタートして本格導入されたのが2014年。
新潟市 中央区の商店街「ふるまちモール6(ろく)」。
150mの道路を挟んで、両側に29の店舗、専門学校や銀行がある商店街では、
一方通行の道路の入口に「ライジングボラード」が設置されています。

<午前8時〜正午>

 ボラードが下がっていて通行OK。


<正午〜午前8時 >

 ボラードが上がっていて通行禁止。
 通行には警察の通行許可が必要で許可車両には
 ライジングボラードを下げるためのリモコンが配布されます。


「ふるまち6(ろく)」のあと、
去年、岐阜市の商店街「長良川プロムナード」に、
おとといから新潟市 中央区の古町通8番町でも、
ソフトライジングボラードの運用がスタート。

ただ、これらはもともと交通事故が起こっていないところ。
日本版ライジングボラード導入に取り組む久保田さんは、
より事故の可能性を孕むところに導入したいと考えています。

それは、やはり子供たちが歩く通学路。
交通規制を守らない車が入ってきて子供が事故に遭うという悲惨な自己を
遠くない将来、排除できることを期待しているということです。


実は車両事故のおよそ3割が起きているのは駐車場。
走行スピードが速くないぶん、大きな事故は少ないものの、
3割という数字は改善の余地があります。
今回はモータージャーナリスト 飯田裕子さんにお話を伺いつつ
駐車場での安全確保を「追跡」しました。

駐車場で起こっている事故の内訳を見てみると

⭐ 5割強がクルマ同士の衝突

⭐ 3割が壁・フェンスなど施設との衝突

まず、駐車場での事故の原因の1つが基本的な運転技術の未熟さ。
停車スペースから出ようと早くハンドルを切り過ぎて
自分の車の鼻先が外に出たつもりで後輪あたりを擦ってしまう、
停車のためのバック時にタイヤの向きが分からなくなり隣の車にぶつけてしまう、
運転が得意ではない人は自分の運転スキルをしっかり把握しましょう。
そして、焦る必要はありません。
ゆっくり、じっくり、という気持ちを心がけてください。

そして、平均的な運転技術がある方はその駐車場の状況確認が必要です。
輪留めがあると思ってバックをしたところ実際は無くて
フェンスにぶつけたり、壁にぶつけたりということがあります。
とにかく、自分が車を停めようと思ったところをきちんと見る。
何か障害物が無いか?どの位の広さなのか? 確認をして下さい。

さらに、その駐車場がどんなシステムなのか認識するようにしましょう。
駐車場は規則性がその駐車場の中だけということが少なくありません。
例えば、進行方向に進んでいて空きのパーキングスペース一がない時、
Uターンは出来ず、もう一周グルッと回ろうとして規則を見落として逆走してしまう。
そうすると走行する車同士の接触する可能性があり、
出ようとしている車との接触も考えられます。
また、対面でのすれ違いや右側通行の駐車場も存在していて
走行誘導や標識を見落としてしまう事による接触が考えられます。

駐車場の事故は人的要因、
ヒューマンエラーから起こることも少なくありません。
心当たりはありませんか?

駐車スペースに入る場合、探すことに夢中になってしまうと思うので、
目線が近くでなく、遠くを見ていることが多いのではないでしょうか?
そういう時に、影から人やカート、これから出ようとする車を見落として、
ぶつかりそうになって、ヒヤリハットしてしまうといった事があるかもしれません。
運転に慣れているという過信が不注意に繋がり、
アクシデントを引き起こしてしまう可能性が上がってしまうかもしれません。

駐車場で気をつけるポイントは、まず「徐行」。
そして「ライトの点灯」です。

駐車場の車の走行は人が歩くようなスピードで操作をするということ、
AT車の多くはDレンジやリバース・後退モードに入っていれば
ブレーキを離しただけで車がゆっくり進む走る。
これを上手に使って車を操作する方が良いでしょう。

ハンドル操作が忙しくなっているとすれはスピードが上がってしまっていので、
停めるのに忙しくなっているなと思ったら速度を落とす。
それからヘッドライトを点灯する。
周囲に自分の存在を示すという役割もあるので、
周りの不注意で接触されてしまうかもしれないという
リスクを下げるためにもヘッドライトを点けて下さい。

駐車場はともすれば慢心してしまうスペース。
利用する駐車場の状況とルールをしっかりと把握し、
駐車スペースを探すときも、そのことだけに気をとらわれない。
駐車場内の走行は人が歩くぐらいのスピードで。 
柱の影から子供が飛び出して来ないとも限りません
なるべくライトを点けて他の車の不注意に巻き込まれないための事故防衛
今日から駐車場内での「安全」に、今まで以上に注意しましょう。


一般道でも、高速道路でも、
クルマを運転していて明るい外の世界から、
わずかに電気が灯る仄暗い、あの空間に入ると、
どことなく「怖さ」を感じる人は多いのではないでしょうか。

仄暗い空間とは・・・「トンネル」。
クルマの運転は多くの危険が潜んでいますが、もちろんトンネルにも。 
今回は交通安全アドバイザー 藪下正三さんのお話をお聞きしつつ
トンネルでの安全運転を「追跡」しました。

まず、トンネルでの交通安全で気をつけるべきは、
明るい外の世界から暗いトンネルに入る前に、
安全な通行ができる状態なのか情報を集めること。

? 日中、サングラスをしていたらはずす

? ヘッドライトの早めの点灯

? 高速道路ならラジオの情報提供を受信 1620kHz

? 電光表示板や信号の確認

そして、しっかり情報を集めてトンネル内に入っても、
運転には充分注意しなければいけません。
トンネル内の「性質」も知っておきましょう。

トンネルというと真っ直ぐな道路という印象があるかもしれません。
しかし、近年のトンネルは直線が招くリスクを押さえるために
わざとカーブになっているトンネルが増えているそうです。
つまり、トンネル内は前方の見通しがあまりよくないということ。
また、トンネル内は水捌けを良くするため入口から中心に向かって上がり坂。
中心から出口に向かっては下り坂になっています。
つまり、下り坂ではスピードがオーバー気味になってしまう可能性があります。

また、ドライバーがトンネル内でとりやすい行動もあります。
車幅が狭く、側壁が迫る暗いトンネルの中に差し掛かると、
ドライバーは意識せずにスピードダウンする現象が見られます。
その原因の1つがトンネル外よりも速度を速く感じてしまうため。
多くの車両が無意識の内にアクセルペダルを緩めているのです。

多くのドライバーは無意識にスピードを落とすこと、
それ自体は交通安全にとってマイナス要素ではありません。
ただ、そのことを知らない上に自分はトンネルの“怖さ”を感じず、
スピードを出すドライバーがいるとなれば大いに危険な事態になります。

また、高速道路で起こりやすい現象がトンネル内では顕著に現れます。
それは大事故の要因になりかねません。

高速道路を走り始めて暫くの間は、
スピードへの恐怖心や周囲の景色が刺激となって緊張感を保てます。
しかし、運転に必要な情報が次々と視界に飛び込んでくるため、
時間の経過と共にストレスを感じるようになるのです。
このようなストレスを「流体刺激」と呼んでいます。

一部のドライバーたちは流体刺激から逃れようと、
無意識の内に前方を走る車両の後ろ姿を見て走るようになります。
そして、自分の車が100kmで走っていて、前方車両も100kmだと、
あたかも止まっているモノを見ているのと同じ感覚になります。
その結果、速度に応じた安全を確保するための車間ではなく、
流体刺激から逃れるための車間になっていくのです。

このようなドライバーが数十台ずつ一団となって、
等間隔で異常接近する「車郡現象」がトンネル走行時には多くなります。
多くのドライバーがヘッドライトをロービームにしていて、ロービームの照射距離は約40m。
この範囲以内に前方車両を捉えようとすると極端に車間距離を詰めることになります。
このような車郡現象が多重衝突事故の大きな要因となっています。

止まっているように感じることを「追従静止視界」と言います。
つられてスピードを出しすぎているかもしれないので
スピードメーターの確認を怠らないようにしましょう。
そして、適正な車間距離を保つようにしましょう。

安全な車間距離の取り方は、距離を時間に置き換える方法が効果的。
停止の際に必要となる「2秒」をあらかじめ確保しておきましょう。
走行中の目印となる目標物を前車が通過した時点から、
自分が同じポイントを通過するまでの時間をカウントしますす。
しかし、この2秒間は走行条件の良い時の車間距離。
走行条件が良くない場合、雨や夜間の運転は1秒追加します。
トンネル走行は夜間走行と同じなので前車との距離感が3秒必要です。

トンネルは出る時も要注意!
川端康成の雪国にある「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」ではないですが、
トンネルのあちらとこちらでは天候や道路状況がまったく違うこともあります。
トンネルの危険を認識して安全運転を心がけてください。

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