子供がいる父親・母親の立場にある皆さん、
学校の先生・スポーツチームや文化活動など、子供の指導者の立場にある皆さん、
子供たちに交通安全について話す時、 何 を伝えていますか?
ここ数年で『交通安全教育』は変わってきました。
交通弱者が、より危険を回避する、
その「考え方」は『新交通安全教育』とも呼ばれます。
今日は年度末。もうすぐ新学期ということで、
子供たちの【命】を守るため、今朝は『新交通安全教育』を追跡しました。
お話を伺ったのは教育ジャーナリスト 斎藤剛史さん。
今までの交通安全教室というのは、
「交通ルールを守りましょう」という教育が主体でした。
しかし、平成24年4月に京都府亀岡市で集団登校中の小学生の列に
乗用車が突っ込んで子供と保護者が死亡するという事故が起きました。
この交通事故は小学校へ登校中の児童と引率の保護者の列に車が突っ込み、
計10人を次々と跳ねて、3人が死亡、 7人が重軽傷 を負いました。
車には3人の少年が乗車。
運転していた少年は仮眠をはさみ、30時間以上も運転を続けていました。
事故の原因は遊び疲れと睡眠不足による居眠り運転 。
この少年は、免許を持っていませんでした。
同じような事故が、その後も続き、
「交通ルールを守っていても事故が起こる」という認識が起こりました。
その結果「子供自身が自分の身を守る交通安全教育が必要ではないか?」
という意見が出て、その方向に変わりつつあるのです。
警察庁、国土交通省、文科省、三省庁は交通安全に関する有識者懇談会を設置。
その報告書で子供自身が自分の身の安全を守るという方針が打ち出されました。
これは文科省を通して教育委員会と学校へと通知。
警察庁を通して都道府県の警察本部、警察署へ通知されています。
新しい交通安全教育の大切なポイントは「交通ルールの順守」で終わらないこと。
「信号は青で渡る。赤になったら止まる」と子供に教えると、
子供は青信号になった途端に左右を見ずに渡ってしまうかもしれません。
「道路を飛び出してはいけない」と教えると、
1回止まって、左右を確認せずに飛び出すかもしれません。
青信号の横断歩道を渡る時でも走ってくる車があるかもしれない
↓ ↓ ↓
青信号の横断歩道を渡る時でも 左右の確認をしっかりする
振り返ってみてください。
子供の頃、教えられた文字上の「交通安全」に、
どのくらい現実味を感じていたでしょうか?
交通事故の危険は常に身近にあるということを
リアリティを持って子供たちに感じさせることが大切です。
保護者が子供と一緒に歩いている時に、
「ここで左右確認しないといけない。なぜなら、ここは見通しが凄く悪いから」
「車が突然来るかもしれない」、そうしたことを折に触れて話す、
あるいは子供と一緒に自動車に乗っている時に、
「自動車の目線から道路の端の子供たちや自転車がどう見えるか?」
車を運転しながら子供たちに話して聞かせてみる事も必要です。
新交通安全教育。
あなたの住む地域ではどのくらい浸透しているでしょう。
その普及の度合いは大人たちの交通安全への意識の高さに比例するのかもしれません。
子供たちの危険は、いつでもすぐそばにあります
交通事故の原因の多くはドライバーの不注意。
でも、中には人間の性質に基づく「錯覚」が引き金となる事故もあります。
今回は武蔵野大学 工学部 数理工学科 友枝明保 准教授にお話を伺い
「錯覚で起こる交通事故」を追跡しました。
友枝准教授も「錯覚によって起こっている交通事故はたくさんある」と考えているとのこと。
「ドライバーの見落とし不注意ということで片付けられている可能性があるので、
そこを掘り下げていきたいと色々と調べている段階」だということです。
「交通事故多発地点は、そういう種が潜んでいるのではないかと思う」とのこと。
そうはいっても事故を起こしてしまえば、それはドライバー責任になります。
ということは、クルマの運転において「どんな錯覚が起きうるのか」
知識として持っておき、その時に備える必要があります。
? 『コリジョンコース現象』
「コリジョン(collision)」は英語で「衝突」という意味。
田園地帯のような見通しの良いところで2本の道路が十字に交差している時、
2台の車が隣り合う道路を同じ交差地点に向かって同じ速度で走っていると
なぜかブレーキを踏むことなく2台が衝突してしまう現象。
これは人間の目の特性によるもの。
人間がものを見る時には「中心視野」と「周辺視野」があります。
中心視野は自分の正面の部分で物を詳しく見る機能。
周辺視野は中心からちょっとズレた部分、
物を詳しく見るというよりは動いている物に敏感に反応する、
何かが迫って来ている時に反応するような機能。
『コリジョンコース現象』は、ドライバーから見るともう一方の車が
ずっと同じ角度を保ったまま、進んでくるので、止まっているように感じます。
もしかすると、その存在に気がつかないことすら、あることでしょう。
そこで、何事もなかったかのように交差地点に向かうと、
もう一方のクルマと衝突してしまうというわけです。
?『縦断勾配錯視』
異なる傾斜が連なった坂道、たとえば緩い登り坂の後に急な登り坂がある時に
登り坂なのに下り坂に見えたり、逆に下り坂なのに登り坂に見える目の錯覚現象があります。
映像で見たことがあるでしょう。
登り坂に見える道路に空き缶やボールを置くと坂を登っていく。
あれも『縦断勾配錯視』。
クルマの運転では、下りに見えて登り坂の場合、危険はありませんが、
登りに見えて下り坂だと「危険あり」です。
これは異なる2つの傾斜の道路が連なっているというところがポイント。
例えば、急な下り坂の後にゆるい下り坂があると、
道路を横から見るとVの字になっています。
すると、自分の道路に対して向こうの道路、遠い方の道路がV字なので、
あたかも登っているように見えますが、実際は下り坂なのです。
登り坂だと思ってスピードを勢いつけて登ろうと思うと、
実は下り坂なのでスピードがのってしまうので危険です。
この『縦断勾配錯視』。日本全国にあるそうですから注意して下さい。
?『車線の錯視』
これは登り坂を上走っていて、向こうが丘になっていて、先の道路が見えない状況。
坂の頂上から道が左に1車線分カーブしていたとすると、
クルマが坂を登りきった地点では、
これまで進んできた直線の先に対向車があります。
「危ない!」と思って、左側には道路の幅がありません、
道路の幅がある右側にハンドルを切ると、
対向車線に入って、本当にぶつかってしまう・・・という現象です。
錯覚を避けることはなかなかできない
こうした錯覚があることを安全のために覚えておいて下さい。
今回は自動車社会を円滑に、安全に、機能させていくための「道路標識」。
今週の「なるほど!交通安全」は先週に続いて、
「道路標識をつくる会社に潜入!」の後編。
道路標識をつくる栃木県 那須町(なすまち)の
野原産業株式会社(のはらさんぎょうかぶしきがいしゃ) 那須工場。
中村俊彦 工場長に案内していただきました。
クルマを運転していると、あまり大きさを感じない案内標識。
近くで見て、しかも中村さんが標識の前に立つと、
写真を拡大してご覧になってみて下さい。
東京の一般道にある案内標識って驚くほど大きいのです!
これは赤坂見附交差点の案内標識。
横 3.8m X 縦 3mもあります。
「案内標識」と書きましたが、この手のタイプは、
道路標識のなかで「案内標識」とされているもの。
道路標識には4つの本標識と言われる分類があります。
【?案内標識】
地点の名称/方面/距離などを示して通行の便宜を図るもの。
さきほどの赤坂見附交差点のような標識のほか例えば・・・
⚫ 市町村や地点を示す標識
⚫ 国道番号を示す標識
【?規制標識】
特定の交通方法を禁止したり、指定するもの。
例えば・・・
⚫ 赤丸に白い横棒「—」の『車両進入禁止』
⚫ 青丸の中に白い親子連れのデザインがある『歩行者専用』
⚫ 青い長方形の中に矢印『一方通行』
【?警告標識】
道路上の危険や注意することを知らせるもの。
例えば・・・
⚫ 『十字路あり』は黄色い正方形をダイヤ型の中に黒十字
⚫ 『右カーブ』なら中に黒く右にカーブする矢印
【?指示標識】
特定の交通方法ができることや道路交通法上、決められた場所を指示するもの。
例えば・・・
⚫ 四角い青の中にアルファベットの「P」は『駐車可』
例えば、一般道路で見る案内標識。
どんな流れでつくられているのかというと・・・
昔は鉄板だったのですが、今はアルミ製。
アルミ板の裏に補強材を溶接して標識の下地部分を作ります。
その表面をヤスリで荒してノリが付きやすいようにします。
その上にベースとなるシートを仮の状態で貼り付け、
機械を使って貼る文字の位置を水性塗料で記します。
一方、反射シートを機械でカットして貼り付ける文字をつくります。
それを手作業でベースのシートに貼って、真空で加熱・圧着して完成です。
工場で働く方に交通安全への思いを聞いてみたところ
『私達が作っている標識が事故の抑止になってもらえれば、
作っている方からしてみたら、やりがいがあります』
『事故後、また同じモノを作ってくれというような依頼も来ます。
それは会社の利益にはなるのですが、
その事故によって亡くなる方もいれば重症する方もいるということ。
嬉しくないですよね。事故とかで同じモノを2回作りたくはありません』とのこと。
「道路標識」を正しく理解し、規制を守り、
警告に注意して、より安全・安心な交通社会を目指しましょう。