今年も「春の全国交通安全運動」の期間がやってきました。
平成28年は4月6日 水曜日 から15日 金曜日。
そこで、今週と来週は、その大切なポイントについて。
コメントは警察庁 交通局 交通企画課 西村和市さん でした。

全国交通安全運動では運動の基本と重点を定めています。
基本は「子供と高齢者の交通事故防止」。
重点は3点。

? 自転車の安全利用の推進、
? 後部座席を含めた全ての座席のシートベルトとチャイルドシートの正しい着用の徹底
? 飲酒運転の根絶

交通事故は大きな視点に立てば減少傾向にあります。
しかし、今年に入って通学中の児童が被害に遭う交通事故が続けて発生しています。
ケースとして多いのは子供が道路を横断中の事故。
子供による飛び出しが原因の事故もありますが、
交差点で子供が青信号の横断歩道を渡っている時、
右左折してくる車にはねられるケースが多いそうです。

ドライバーの皆さんは、ハンドルを握ったら脇見をせず、
しっかり前後左右の安全確認をするのはもちろん、
車からは見えない場所「死角」を認識して注意することが大切です。
交差点や横断歩道の手前では速度を落とすことや、
信号機のない交差点や横断歩道では横断歩行者優先のことを忘れないでください。

子供を交通事故から守るには家庭での教育が必要です。
子供は親からの影響を受けやすいもの。
青信号が点滅している時に「急いで渡る」と言われて育った子供は、
そういう認識するため、安全確認をせずに渡り、事故に遭う危険性が高くなります。  

親はもちろん、親でなくても、子供は大人の行動をよく見ているもの。
大人が堂々と信号無視をするなどという状況は無くさなければいけません。
子供に危険な行動をとらせないためにも、
「大人は子供の手本」という意識を社会全体が共有することが大切です。

一方、高齢者が被害に遭う交通事故では、
夕暮れ時や夜間の道路を横断中のケースが多いといいます。
ドライバーからすれば、夜間は視界が悪くなるもの。
反対に高齢者からすると、自分の認識以上に道路を横断する時間がかかるのに、
車が来る直前に道路を横断しようとしてしまったり、
車が近づいていることに気づかないという原因が考えられます。

明るい色と暗い色の服装ではドライバーからの見つけやすさが全然違うもの。
特に高齢者の方については、明るめの服装や、反射材の着用を心がけ、
近くに横断歩道があるときは横断歩道を渡ってください。
また、ドライバーの方は、夕暮れ時の早めのライトを点灯を心がけるようにしましょう。
対向車が少ない生活道路等では、歩行者を早く発見できるよう、
夜間はライトを上向きにして走行することが基本です。

ドライバーは運転に際して高齢者に対する思いやりを持ち、
歩行中や自転車に乗っている高齢者を見かけた場合は、
すぐ止まれるよう速度を落とし、高齢者の側を通る時には間隔を空けることを心がけて下さい。


子供がいる父親・母親の立場にある皆さん、
学校の先生・スポーツチームや文化活動など、子供の指導者の立場にある皆さん、
子供たちに交通安全について話す時、 何 を伝えていますか?

ここ数年で『交通安全教育』は変わってきました。
交通弱者が、より危険を回避する、
その「考え方」は『新交通安全教育』とも呼ばれます。
今日は年度末。もうすぐ新学期ということで、
子供たちの【命】を守るため、今朝は『新交通安全教育』を追跡しました。
お話を伺ったのは教育ジャーナリスト 斎藤剛史さん。

今までの交通安全教室というのは、
「交通ルールを守りましょう」という教育が主体でした。
しかし、平成24年4月に京都府亀岡市で集団登校中の小学生の列に
乗用車が突っ込んで子供と保護者が死亡するという事故が起きました。

この交通事故は小学校へ登校中の児童と引率の保護者の列に車が突っ込み、
計10人を次々と跳ねて、3人が死亡、 7人が重軽傷 を負いました。
車には3人の少年が乗車。
運転していた少年は仮眠をはさみ、30時間以上も運転を続けていました。
事故の原因は遊び疲れと睡眠不足による居眠り運転 。
この少年は、免許を持っていませんでした。


同じような事故が、その後も続き、
「交通ルールを守っていても事故が起こる」という認識が起こりました。
その結果「子供自身が自分の身を守る交通安全教育が必要ではないか?」
という意見が出て、その方向に変わりつつあるのです。

警察庁、国土交通省、文科省、三省庁は交通安全に関する有識者懇談会を設置。
その報告書で子供自身が自分の身の安全を守るという方針が打ち出されました。
これは文科省を通して教育委員会と学校へと通知。
警察庁を通して都道府県の警察本部、警察署へ通知されています。

新しい交通安全教育の大切なポイントは「交通ルールの順守」で終わらないこと。
「信号は青で渡る。赤になったら止まる」と子供に教えると、
子供は青信号になった途端に左右を見ずに渡ってしまうかもしれません。
「道路を飛び出してはいけない」と教えると、
1回止まって、左右を確認せずに飛び出すかもしれません。

青信号の横断歩道を渡る時でも走ってくる車があるかもしれない   
      ↓    ↓    ↓
青信号の横断歩道を渡る時でも 左右の確認をしっかりする     


振り返ってみてください。
子供の頃、教えられた文字上の「交通安全」に、
どのくらい現実味を感じていたでしょうか?
交通事故の危険は常に身近にあるということを
リアリティを持って子供たちに感じさせることが大切です。

保護者が子供と一緒に歩いている時に、
「ここで左右確認しないといけない。なぜなら、ここは見通しが凄く悪いから」
「車が突然来るかもしれない」、そうしたことを折に触れて話す、
あるいは子供と一緒に自動車に乗っている時に、
「自動車の目線から道路の端の子供たちや自転車がどう見えるか?」
車を運転しながら子供たちに話して聞かせてみる事も必要です。

新交通安全教育。
あなたの住む地域ではどのくらい浸透しているでしょう。
その普及の度合いは大人たちの交通安全への意識の高さに比例するのかもしれません。
子供たちの危険は、いつでもすぐそばにあります 

交通事故の原因の多くはドライバーの不注意。
でも、中には人間の性質に基づく「錯覚」が引き金となる事故もあります。
今回は武蔵野大学 工学部 数理工学科 友枝明保 准教授にお話を伺い
「錯覚で起こる交通事故」を追跡しました。

友枝准教授も「錯覚によって起こっている交通事故はたくさんある」と考えているとのこと。
「ドライバーの見落とし不注意ということで片付けられている可能性があるので、
そこを掘り下げていきたいと色々と調べている段階」だということです。
「交通事故多発地点は、そういう種が潜んでいるのではないかと思う」とのこと。
そうはいっても事故を起こしてしまえば、それはドライバー責任になります。
ということは、クルマの運転において「どんな錯覚が起きうるのか」
知識として持っておき、その時に備える必要があります。


? 『コリジョンコース現象』 

「コリジョン(collision)」は英語で「衝突」という意味。
田園地帯のような見通しの良いところで2本の道路が十字に交差している時、
2台の車が隣り合う道路を同じ交差地点に向かって同じ速度で走っていると
なぜかブレーキを踏むことなく2台が衝突してしまう現象。

これは人間の目の特性によるもの。
人間がものを見る時には「中心視野」と「周辺視野」があります。
中心視野は自分の正面の部分で物を詳しく見る機能。
周辺視野は中心からちょっとズレた部分、
物を詳しく見るというよりは動いている物に敏感に反応する、
何かが迫って来ている時に反応するような機能。

『コリジョンコース現象』は、ドライバーから見るともう一方の車が
ずっと同じ角度を保ったまま、進んでくるので、止まっているように感じます。
もしかすると、その存在に気がつかないことすら、あることでしょう。
そこで、何事もなかったかのように交差地点に向かうと、
もう一方のクルマと衝突してしまうというわけです。


?『縦断勾配錯視』 

異なる傾斜が連なった坂道、たとえば緩い登り坂の後に急な登り坂がある時に
登り坂なのに下り坂に見えたり、逆に下り坂なのに登り坂に見える目の錯覚現象があります。

映像で見たことがあるでしょう。
登り坂に見える道路に空き缶やボールを置くと坂を登っていく。
あれも『縦断勾配錯視』。
クルマの運転では、下りに見えて登り坂の場合、危険はありませんが、
登りに見えて下り坂だと「危険あり」です。

これは異なる2つの傾斜の道路が連なっているというところがポイント。
例えば、急な下り坂の後にゆるい下り坂があると、
道路を横から見るとVの字になっています。
すると、自分の道路に対して向こうの道路、遠い方の道路がV字なので、
あたかも登っているように見えますが、実際は下り坂なのです。
登り坂だと思ってスピードを勢いつけて登ろうと思うと、
実は下り坂なのでスピードがのってしまうので危険です。
この『縦断勾配錯視』。日本全国にあるそうですから注意して下さい。


?『車線の錯視』

これは登り坂を上走っていて、向こうが丘になっていて、先の道路が見えない状況。
坂の頂上から道が左に1車線分カーブしていたとすると、
クルマが坂を登りきった地点では、
これまで進んできた直線の先に対向車があります。
「危ない!」と思って、左側には道路の幅がありません、
道路の幅がある右側にハンドルを切ると、
対向車線に入って、本当にぶつかってしまう・・・という現象です。

錯覚を避けることはなかなかできない
こうした錯覚があることを安全のために覚えておいて下さい。


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