車の運転には多くの法律・法令に従う義務があります。
ルールを破れば罰則が待っているので、みなさん気をつけているでしょう。
でも、意外と知らない、落と穴のような交通ルールも多いもの。

今週からの3回にわたって
『気をつけて! 実はそれって交通違反』をお送りします。
監修とコメントは東京 麹町「みらい総合法律事務所」吉田太郎 弁護士です。

もうすぐ年末、道路が混雑する時期。
先を急ぎたくて、高速道路でも一般道でも追越車線を走り続ける車ありますよね。
でも、追越車線を走り続けることは交通違反。


1)追越車線を走り続けは交通違反 

【吉田弁護士の解説】

道路交通法20条で道路の左端から数えて1番左側の車線を走ることが規定されています。
3車線以上ある場合には1番右の車道以外の車道を通行することが規定されています。
ですから、追い越し車線をずっと走ることは違反するという事になってしまいます。
もちろん1番右側の追い越し車線を使ってはいけないということではありません。
追い越しする時、右折する時、緊急自動車に道を譲る時、必要な場合には使えます。
ただし、ずっと追い越し車線を走り続けるということは認められていません。
この規則の違反には5万円以下の罰金が定められています。



次の「それって交通違反」。
冬の行楽シーズン。
仲間と温泉やウィンタースポーツに車で出かける時、
欠かせないアイテムの1つが 音楽 かもしれません。
でも、あまりに大きな音量でかけてはいけません。


1)爆音カーオーディオは交通違反 

【吉田弁護士の解説】

道路交通法に直接の定めは無いのですが、道路交通法71条の6号には、
各都道府県の公安委員会が道路における危険を防止し、
交通の安全を図るために必要と認めたものについては、
規則で規制出来ることが定められています。

これに則り、例えば東京都なら東京都道路交通規則で、
高音でカーラジオなどを聴き、またはイヤフォンなどを使用して、
安全な運転に必要な交通に関する音、または声が聞こえないような状態で、
車両を運転してはいけないと定められています。
これはカーラジオという表現ですが、広くカーステレをを指すと解されて、
大阪府では「カーオーディオ、ヘッドフォンステレオなどを使用して」と定められていて、
カーオーディオという事が例示されています。

ここで重要なのは、マナー上の問題として周りの人に迷惑をかけないという事もあるのですが、
法律で特に注意を促しているのは、大音量を上げる事によって、
例えば、緊急自動車のサイレンであるとか、周りの音が聞こえない事によって、
安全な運転が出来なくなってしまうかもしれない、
そういう危険を防ぐために音量は適切な所まで下げましょうという定めになっているのです。
運転時に情報を得るのは視覚と聴覚。
その耳を閉ざしてはいけないと注意を促しているのです。


1)追越車線の走り続けはNG

2)爆音カーオーディオはNG

覚えておいてください。

事故が起こる数秒前のふだんの生活と
事故が起こった数秒後の現場のギャップが大きすぎて
とても受け入れることができなかったと語る風見しんごさん。

9年という年月は事故のことを思い出した瞬間に、
感情に流されないよう気持ちを抑える術や
生活していく心を身につけることを可能にしました。
でも、その長い歳月をもってしても、
事故の光景や悲しさを忘れることはありません。

そんなことがないように
小さな子供がいるお父さん、お母さんには、
通学路を一緒に歩いてみてほしいといいます。

何度か一緒に歩けば、危険なポイントがわかるもの。
それを子供に伝えれば、子供はできるだけ気をつけるのです。

ただ、最近の交通事故は、どんなに気をつけたとしても、
被害者が生まれてしまうといったタイプが多発。
いくら子供たちに歩道の内側をみんなで列になって歩くように注意しても
そこに車が突っ込んでくれば、子供の安全は一瞬にして吹き飛びます。
車のハンドルを握る大人が子供たちの安全を守るしかないのです。

今年の春、風見しんごさんは、
娘の「えみる」さんが亡くなってから1年後の
「えみるの赤いランドセル」に続く2冊目の本を出版しました。
タイトルは「さくらのとんねる 二十歳のえみる」。
なぜ、9年後というタイミングで、エッセイを綴ったのか。

前回の本は「えみる」さんが生きた証を残したいと執筆したもの。
今回は、前作からの時間をどんな気持ちで生きてきたか知りたいという依頼があり、
その後の人生を家族がいかに過ごしてきたか
「えみる」さんに手紙を書く気持ちで綴ったといいます。

今年、2016年は「えみる」さんが生きていれば二十歳、成人になっていた年。
このような悲劇を1つでも減らすことを社会全体が考えるべきです。
風見しんごさんの交通安全啓蒙活動は、その目的に大きく貢献しています。


         



少し過ぎてしまいました。
11月 第3日曜日は「世界道路交通犠牲者の日」。
今年は11月20日でした。

交通事故のニュースは音声で、文字で、映像で伝えられます。
でも、そこからは「悲惨さ」が抜け落ちています。
「交通事故」という言葉の裏に、どれだけの酷さ・悲しさ・辛さがあるのか。
誰もがわかっているようで、わかっていないのかもしれません。

今週と来週は9年前、交通事故で10歳の長女えみるさんを亡くした
俳優・タレントの風見しんごさんに体験談。
風見さんは事故以来、交通安全啓蒙活動も行っています。

その交通事故が起きたのは、いつもと変わらない平日の朝。
えみるさんはいつものように元気に「行ってきまーす!」と家を出ました。
自宅から100mほど進み、右に曲がって姿が見えなくなるのですが、
えみるさんは、その日もいつものように100m進んだところで振り返り、
家族に手を振って姿を消しました。
それが風見さんの家族が生きているえみるさんを見た最後になってしまったのです。

右折してから50mほどのところにある横断歩道を青信号で渡っている時、
えみるさんは右折してきたトラックに巻き込まれて命を落としました。

風見さんは自宅に駆け込んできた近所の人から事故を知らされます。
その人は何を聞いても「えみるちゃん、事故」と繰り返すだけだったといいます。
風見さんはどこか擦りむいて血を出しているか、
ひどければ骨折でもして泣いているかもしれないなと思ったといいます。

しかし、サンダルを引っ掛けて現場に行くと、
泣いているはずのえみるさんの姿はありません。
横断歩道に不自然に停められた1台のトラック。
何故、そうしようと思ったか分からないそうですが、
風見さんがトラックの下を覗き込もうとすると
近所の人に「見ないほうがいい!」と声を上げました。
それでも、風見さんがトラックの下を見ると、後輪の間にえみるさんはいました。

風見さんはトラックを持ち上げてえみるさんを助けようとしました。
でも、どんなに力を入れてもトラックはびくとも動きません。
その瞬間、風見さんは現実のあまりの酷さと自分の非力さに道路にへたりこんでしまいました。
そこから目に入ったのは、エンジンがかかったままのトラックの下から
えみるさんを救い出そうとしている奥さんの姿でした。

それまでの風見さんは、死亡交通事故のニュースにふれれば、
「悲惨だな」「辛いだろうな」と思っていました。
ただ、えみるさんの死まで、まさか自分や自分の家族の身に、
そんなことがふりかかるとは想像もしていなかったといいます。

交通事故は突然、起こる。
気を許せば誰かが加害者になり、誰かが被害者になる。
そのことを肝に命じて、毎日の生活を送らなければいけません。


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