去年、山口県警察 岩国署管内の岩国市と和木町で
交通死亡事故がゼロとなりました。

交通事故死亡者なしというのは、和木町では2002年から続いていますが、
岩国市は統計が残る1960年以降で初めて。

全国を見れば、他にも去年、死亡事故ゼロだった市町村はありますが、
1つの例として1件でも死亡事故を無くしていくため
どんな取り組みをしてきたのか、しているのか? 岩国署に聞きました。





岩国市の人口は2月現在で128,404人で山口県内で5番目の多さ。
和木町は1月25日現在で5,796人。

和木町は人口が6千人に満たないとはいえ2002年から交通事故死亡者ゼロ。
これは凄いことだと思いますが、石油化学コンビナートの街として
瀬戸内工業地域の一角を占めている地域。

岩国警察署の交通官、田畑哲哉さんによると
岩国市と広島県大竹市を結ぶ国道2号が通っていて
特に朝夕の通勤帰宅ラッシュ時にはかなりの交通量があります。

過去には交通量が多いのに歩道がないなどの苦情があったそうですが
この20年間に道路環境の整備が進み
町のコミュニティバスで公共交通が確保されたこと
婦人会の活動が非常に熱心で高齢者宅へ訪問をして交通安全指導をするなど
地道なボランティア活動が実を結んだのではないかとのことでした。





一方の岩国市は過去に合併があったので、現在の岩国市の範囲で見ると
昭和44年には50人近くの方が交通事故によって命を落としました。
その後、平成に入っても2桁前後の死者数が続いていましたが
平成29年の10人を最後に1桁に推移しているそうです。

岩国市で現在のところ最後の交通死亡事故は令和3年9月21日。
実は1年を優に超えて1年5ヶ月ゼロが続いています





岩国警察署では交通事故対策のため
これまで様々な交通安全のキャンペーンや学校での交通教室、
高齢者や企業対象の交通安全講話に従来から力を入れてきたそうです。

そうした中、去年7月から山口県警は横断歩道の歩行者優先を徹底させるため
「横断歩道ハンドサイン運動」という運動をスタート。
これは「歩行者は渡ります、ドライバーはお先にどうぞ」と言った合図を明確にして
お高いの意思疎通を図るというもので、これをやってきたことで
横断歩道の歩行者優先という意識はかなり徹底されてきていると
田畑さんはおっしゃっていました。

また、岩国警察署は高齢者の運転免許の返納者数が増加傾向にあり
岩国市が行ってきたた年間最大2万4000円分のタクシー利用券を交付する
タクシー料金の助成制度が実を結んだのではないかと田畑さん。

こうした制度と他の乗り合いバスなどを組み合わせることで
高齢者は山間部に暮らす方たちの利便性も大きく向上し
運転免許を返納しやすいか環境が構築されていると思うと田畑さん。
また、管内では交通安全ボランティアの活動が非常に活発で
交通安全を意識してもらうということに繋がっていると思うと
田畑さんはおっしゃっていました。





交通戦争と言われた時代から、日本では国を挙(あ)げて、
交通安全の啓蒙活動や施策が行われてきました。
岩国警察署管内でも交通安全に長年取り組んできて、
ここへきて実を結んだということでしょう。

年が明けて1月23日には交通死亡事故ゼロの記念式典が行われ
関係者の方たちは多いに盛り上がったそうです。

田畑さんは交通事故はいつ、どこで起こるかわからない身近な危険。
クルマを運転する時、道路を歩く時、
そのことを頭の片隅において行動して下さいとおっしゃっていました。
この言葉を覚えておいて下さい。


利用者が増える自転車。
一方で、その危険運転が社会問題になっています。
自転車に乗る方は交通規則を守っているでしょうか?
今回は特に「交差点」を通行する時のルールをお伝えしました。





今回「交差点」に限定するのは、
自転車事故は交差点に多いから。
東京都の自転車が関与した交通事故を道路状況別に見ると
令和4年は、交差点が47.9 %、交差点付近が5.9 % と半数以上。
自転車に乗る時は特に交差点とその付近に気をつけなければいけません。





自転車の安全利用促進委員会 谷田貝一男さんによると
去年の東京都を例にとれば、交差点において自転車事故で最も多いのは
交差点に入った時や入ろうとした時に左右の道路から来た
自動車・自転車と出会い頭に衝突する事故で34%。

次に多いのが、自転車が左に曲がる時・右に曲がる時に
左右から来た自動車・自転車との衝突接触事故で29%でした。





交差点にも信号機の設置パターンがいろいろあ りますが、
事故の原因となるルール違反をしてしまいがちな道路状況を3つ。


① 歩道や歩行者横断帯はなく、車両用の信号機だけがある交差点

自転車はクルマ同様、この信号に従うことになります。
ちなみに歩行者も同じです。


② 車両用信号機と歩行者用信号機がある交差点

自転車は車道を走ることが原則なので車両用信号機に従います。
ただし、例外的に歩道を通行していた時は、
歩行者がいれば自転車から降り、歩行者用信号機に従って自転車を押して渡ります。
自転車に乗って渡る時は、車両用信号機に従います。


③ 信号機がない交差点

必ず交差点の前で一時停止。
左右を見て、安全を確認した上で、横断・左折・右折します。

その他、「自転車専用信号機」や「歩行者・自転車専用信号機」がある場合は
もちろん、これらの信号機に従います。





ルールを抑えた上で、交差点での正しく安全な走行です。
まずは左折。

左折の場合最も大きい事故になりかねないのは、
同じく左折しようとする自動車に巻き込まれてしまうこと。
この事故を防ぐためには信号が青になってもいきなり曲がらず
クルマが先に左折するのを確認しながら後からゆっくり左折すること。
また、自動車の左折路がある時でも自転車は必ずいちばん左側を通ること。

続いて右折の場合、自転車が自動車やオートバイのように
交差点中央を通って右に曲がっては交通違反で事故の原因のもと。
交差点にきて正面の信号機が青になったら、まずは直進して反対側に渡り、
自転車の方向を変えて右折する方向の信号機が青になったら
再び横断して進行したい道に入るという順序です。
信号機がない交差点の右折も同様です。





「信号のない交差点では自分が交通ルールを守っていても
交通ルールに違反している自動車、自転車に遭遇することで
事故に巻き込まれてしまう可能性があります。
必ず、一時停車をして、安全確認をしてから横断・左折・右折をして下さい」と
自転車の安全利用促進委員会の谷田貝さんは強くおっしゃっていました。

また、「一時停止しない」「信号無視してしまう」という自転車利用には
「自動車は来ないから大丈夫だろう」という思い込みや「急いでるから」という自己都合があり
「横断歩道を自転車に乗って渡る」のは交通ルールの知識のなさからきていますと矢田貝さん。
いちどご自分の利用の仕方を見つめ直してみて下さい。

自転車は、あくまで車両です。
ルールを守って安全に乗り、楽しく快適な自転車ライフを楽しんで下さい。





例えば、北海道の平原のような建物や大きな木などの障害物がない
360度 視界が開けた交差点でクルマ同士の衝突事故が起こることがあります。
このタイプの事故は「コリジョンコース現象」と呼ばれます。





「コリジョン」とは衝突を意味する英単語。
人間の視界には前方約30度の「中心視野」と
その左右外側の「周辺視野」があります。





「中心視野」は物を細かく見ることに適していて
「周辺視野」は何かが動くのをとらえるのに適しているので
人間は「周辺視野」で異常な動きを感知し「中心視野」で詳細を解析・確認します。

でも、周辺視野は、動かないものを認識しにくいという特性から
直角に交わる見通しの良い道路を同じような速度で交差点に向かって走る
もう1台のクルマがあっても、その存在に気づきません。

これはクルマだけでなくオートバイでも
また、飛行機や船でも起こることです。





先月、福島県郡山市の交差点で乗用車と軽自動車が衝突して軽自動車が炎上。
4人が亡くなるという痛ましい事故が起きました。
この事故が起きた交差点は非常に見晴らしが良く
現場にはブレーキの痕が無かったことから
コリジョンコース現象が原因ではないかと考えられています。
気をつけたいのはコリジョンコース現象による自動車事故が大惨事に繋がりやすいこと。


交通工学が専門の北海道大学 工学研究科 萩原亨教授によると
お互いの自動車に気づかず、スピードを落とさず衝突するから。

また、直角にぶつかることになりますが
車種によっては横からの衝突に弱いものもあり
室内が潰れて乗っている人に対して大きな衝撃がきます。
それによって被害が大きくなって死亡事故に至ることもあります。
見晴らしも広い田舎町なのでスピードを出して走行していることも
大きな事故になってしまう要因の1つになっているようです。





対策の1つは直角に交わる道路が多い土地を走る時には気をつけること。
曲がっている道路ではコリジョンコース現象は起きません。
田園風景の中にあるまっすぐの道を走る時は
時々、意識的に首を降って左右を見るようにしましょう。

そして、前回の「優先道路」に通じることですが、交差する道路はどちらかが優先。
そのことを意識しつつ、どちらが優先か分かりにくい時は、
一時停止するつもりで運転するようにして下さい。

近隣にコリジョンコース現象が起こりやすそうな開けた土地があり
走り慣れている人は日頃から気をつけているでしょう。
行楽、旅行などで知らない土地、不慣れな場所を運転する時には、
カーナビで道路環境を確認することも心がけてコリジョンコース現象を防ぎましょう。




交通事故の半数以上が、交差点で発生しています。
交差点はそれぞれ目的地に向かって走るクルマが行き交う場所。
そして、同時に歩行者・自転車に乗る人もいます。
ドライバー自らが危険を呼び込まないよう
交差点でのクルマの優先ルールをきちんと抑えておきましょう。





2017年の交通事故に関する警察庁の発表をもとに
公益財団法人 交通事故総合分析センターがまとめたデータによると
人身事故の54%が交差点で起きています。

<内訳>

信号機がある交差点 16%

信号機がない交差点 24.3%

交差点付近     13.8%



そこにはドライバーの「自分が優先」という思い違いや
無理な運転がありそうですね。

交差点でのクルマの優先順位。
これはクルマを運転する方は分かっていると思いますが、直進・左折・右折の順。
そして、信号がある交差点で危険を生み出しやすいのは、
想像つきやすいと思いますが、右折車と直進車の関係でしょう。





モータリングライターの藤田竜太さんによると
右折事故の 71.8%が信号機のある交差点で発生しています。
一番多い原因は対向直進車の発見の遅れ。

人間の中心視野は約40度。
対向直進車線と右折先まで視野に入れようとすると
視野としては 90 度から120 度ぐらい見渡す必要があります。
だから、右折先の道路状況や歩行者を注視していると
対向直進車の発見が遅れることがあります。

もう1つ、右折車のドライバーが「直進車より先に通過できる」と
判断してしまったというケースも目立っているといいます。

また、最近では矢印の右折信号が出てから右折している車に対して
赤信号が変わった側の直進車が無理に交差点に進入し
右折車とぶつかるケースも増えているという報告もあるそうです。

右折時は気をつけなければいけない事が多いですが、
急がず、慌てず、無茶をせず、安全に曲がりましょう。
また、直進車の立場の時は、右折しようとしているクルマに注意しましょう。





クルマの優先順位で「間違い」や「思い違い」が生じやすのが信号のない交差点。
どのように優先車は決まるのか?

まず、優先道路がわかる看板や標識が設置されている道路ではこれに従います。
標識がない道路ではセンターラインがある方が優先道路、
センターラインがなければ道路の幅が広い方が優先道路。
標識やセンターラインがなく、道路が広いか判りにくい場合は
車両には左方優先のルールがあり、自分の左から出てきたクルマが優先となります。
覚えておいて下さい。





信号がない交差点での走行には気をつけて下さい。
藤田竜太さんに安全運転のポイントをお聞きしました。

前走車がいる場合は、その車が交差点で減速したり、
一時停止する可能性があると考えてついていくということが大切。

左右の見通しが悪い交差点ではカーブミラーをよく見るというのが基本。
カーブミラーがなければ、しっかり徐行、一時停止して左右の安全を確認する。

右または左から車が近づいてきた時は自分の方が優先道路だとしても
近づいてくる車が減速しているかどうかをしっかりチェック。
減速する気配がなければ、自分が止まってやり過ごした方が安全。

また、消極的ですが、ドライブレコーダーを設置することで
より慎重に運転しようという意識づけになると解説して下さいました。

クルマの優先順位のルールをしっかりと認識して
日々の運転をするようにしましょう。