令和元年の道路交通法改正によって「ながら運転」が厳罰化されてから3年。
「ながら運転はいけない」という意識はドライバーに広く根づいていると思います。
でも、気を抜いた時、つい運転中にスマホをいじっていませんか?
あるいは「少しなら大丈夫」と意図的にやっていませんか?
その行為が悲劇を生みかねないことを自覚しましょう。





今回のコメントは 自動車ライター/インストラクター 齊藤優太さんでした。
ながら運転の規定は道路交通法第71条5の5にあります。
停止をしている時以外、つまり運転中には通話や画面・画像を注視しないよう定められています。
スマートフォンで通話する、カーナビの画面をじっと見る、などが「ながら運転」の定義です。





警察庁のデータからは、厳罰化と取り締まりの強化によって、
“ながら運転”が、かなり減ったことが推測されます。
      
ながら運転に関係する交通事故件数 は
令和元年 2,645件 → 令和2年 1,283件と半数以下に減少。
ただし、令和3年は1,394件と増加しています。





運転中の携帯電話使用等の取り締まり件数は
四捨五入で令和元年 72万件 → 令和2年 31万件 → 令和3年 29万件と
半減して、さらに減少傾向にあります。





「ながら運転」の減少は歓迎すべきこと。
しかし、携帯電話使用の摘発だけでも年間30万件。
その1つ1つが悲劇に繋がる恐れがあり、危険性はデータに表れています。
死傷事故に占める死亡事故の割合は、携帯電話などの使用がない場合は「0.80」%。
使用がある場合、つまりながら運転は「1.51」%。
およそ1.9倍、ほぼ2倍になります。





ちなみに近年「ながら運転」が関係する死亡事故数が、
どのくらいあるかというと令和元年(42件)/令和2年(20件)/令和3年(21件)。
もちろん、今年も起きています。

5 月に愛知県の県立高校教諭の乗用車が自転車に乗っていた会社員をはね
会社員は外傷性くも膜下出血で亡くなりました。
スマートフォンで「ドラゴンクエストウォーク」をしながら運転していたとみられています。

運転しながらゲームをやっていたために家族や近しい人間が死んでしまうなんてことを想像したら
誰もが身震い好き持ちになるでしょう。「ながら運転」は、そういう悲劇を生む危険があるのです。





ながら運転は前方不注意に繋がりますが、
ほんの少しの時間だと思ってもクルマはかなりの距離を進みます。
時速 20 キロで約 6m、時速 40 キロで約 11m、時速 60 キロで約 17m、時 速 80 キロで約 22m。
そのわずかな 間 に目の前の状況が変わることも想定しましょう。

今のスマホ社会。
運転していても、つい触りたくなってしまうのも事実。
「ながら運転」をしないよう予防線を張ることも大切です。

まずはスマートフォンをサイレントモードにし、
そして、画面が見えないようにしておくこと。
通知が来ると見たくなってしまうので、運転中はしばしスマホのことは忘れましょう。





「ながら運転」の危険性を充分に理解していただけたと思います。
ただ、例外として「傷 病者の救護」や「公共の安全の維持のため」
「やむを得ない緊急時」に限っては運転中のスマホ使用も
認められていることを最後にお伝えしておきます。


クルマを運転していて
ついブレーキとアクセルを踏み間違えてしまった
あるいは踏み間違えそうになった経験はありませんか。
  
クルマの運転におけるヒューマンエラーの1つ
「ブレーキとアクセルの踏み間違い」は誰もがやりかねないこと。
十分な注意が必要です。





「ブレーキとアクセルの踏み間違い」と聴くと
多くの方は高齢ドライバーの運転を思い浮かべるかもしれません。

しかし、公益財団法人 交通事故総合分析センターが今年発行した
ITARDAインフォメーションNo.139「ペダル踏み間違いによる事故 特集」によると
2018年から2020年までの3年間にあった「踏み間違い事故」はおよそ1万件。

そこから、死亡・重傷事故を抜き出すと
運転者の年齢層分布では「65歳〜74歳」と「75歳以上」が圧倒的多数。

ところが、これを 軽傷も含めた死傷事故数 で見ると
「車両単独事故」「人対車両の事故」では高齢者が多いものの
「車両相互の事故」では年齢間の差はあまり目立たなくなり
注目すべきことに最も多い年齢層は「24歳以下」となります。

さらに「ペダル踏み間違い」事故を
免許保有者人口10万人あたりの死傷事故件数で見ても
「車両相互の事故」は「24歳以下」が最も高くなっています

死亡・重傷事故が多い高齢ドライバーにはさらに注意してもらうとして
若年層のドライバーも他人事と思ってはいけません。





日本自動車ジャーナリスト協会 会長で
日本自動車連盟交通安全委員会 委員でもある菰田潔さんの推察によると
24歳以下にペダルの踏み間違いが多いのは”慣れ”が原因。
免許を取って間もない頃は緊張して運転していますが
段々と慣れてきて運転を甘く見るようになってしまう。
運転に対する「驕り」は事故への入口。
常に謙虚な気持ちでハンドルを握るようにして下さい。

菰田さんによると、踏み間違い事故はどこでも起こります。
代表的な場所は一般の駐車場、コンビニの駐車場、一時停止すべき場所、信号のない交差点、
直進発進時に信号手前で前方に停止車両がいて後方からぶつかるというケー ス、
カーブでもあるというデータが出ています。

時折、どこそこにクルマが突っ込んだというニュースがあります。
これは軽度な衝突でパニックになりアクセルを踏んでしまうケース。
例えば駐車場でバックをしていてクルマを電柱に少しぶつけてしまい
慌ててドライブレンジに入れてアクセルを踏みコンビニ店舗に突っ込んでしまう。
また、ブレーキペダルから足を滑らせてアクセルペダルを踏んでしまうケースもあるようです。

どんなシーンでも、踏み間違いをする可能性はあることを
頭の片隅に置いて運転するようにしましょう。
そして、もしも踏み間違えてしまった時は
多くの場合、それほどスピードは出ていないのでパニックにならないこと。
慌ててアクセルを踏み込んでしまうことが大きな事故に繋がります。





踏み間違い事故の予防策について、菰田さんは2点挙げて下さいました。
1つはドライビングポジション。
多くのドライバーがアクセル・ブレーキペダルから遠くに座りすぎだと感じているそうで
シートから遠いほどペダルの位置感覚がわかりにくくなるので気をつけてほしいとのこと。

次になるべく最新技術が投入された新しい車に乗ること。
アクセルペダルが運転席の中央よりもなるべく右に寄っているなど
ブレーキのつもりで踏んだらアクセルだったという間違いがないよう
設計された増えているので、そうした車を選ぶというのもポイントだということです。

年齢層を問わず、やってしまう危険はある
ブレーキとアクセルのペダル踏み間違いに気をつけましょう。
そして、高齢ドライバーが身近にいる方は、
機会があるごとに、こうした情報を共有するようにして下さい。




多くの人は、ふだんはあまり運転しないかもしれない“坂道”。
ドライブや行楽で出かけた先で走行することになった時、
平坦な道路と同じ気持ちで運転していませんか?
今回は自動車ジャーナリスト 高根英幸さんを伺い
「坂道の適切な運転」をお伝えしました。





交通事故全体に占める坂道での事故の割合は 5%。
ところが、死亡事故に限ると坂道は10%に跳ね上がります。

そもそも交通事故は 6 割以上が見通しの良い平坦な直線道路で起きています。
これは油断することで事故が起きてる証拠。
それに対してカーブや坂道は運転に注意するので事故の割合としては少ない。
しかし、事故が起きたとすると重大化する危険が高いのです。





坂道には「上り坂」と「下り坂」がありますが、
事故が多く起きているのは「下り坂」。
スピードが出てハンドルを切り損ねる恐れもありますし
ブレーキに問題が生じて効かなくなる恐れもあります。
「フェード現象」「ペーパーロック現象」と呼ばれる
2つのブレーキトラブルについて覚えておいて下さい。


【フェード現象】

ブレーキは摩擦力によって運動エネルギーを熱に 変えています。
従って、ブレーキを多用すると摩擦材が高温状態になって摩擦力が低下します。
このブレーキパッドが焼けてしまった状態をフェー ドと言います。
フェード現象はブレーキを冷却しなければ摩擦力は復活しません。
このようにならないようブレーキ使用回数を抑えて走行する必要があります。


【ペーパーロック現象】

ペーパーロック現象はフェード現象に似ていますが
ブレーキペダルを踏んでも効かないフェード現象に対して
ブレーキペダルを踏んでも踏みごたえがなくなるのがペーパーロック現象です。
これは油圧ブレーキのフルード(液体)が蒸発して気泡になり、ブレーキの油圧を吸収してしまい、
これによってブレーキが抜けたようになっている状態。
フルードを新しい ものに交換しないと解決しません。


これらを踏まえて下り坂の走行では、
なるべくフットブレーキを使わずにエンジンブレーキを多く使用しましょう。
AT車の場合はDレンジで通常走行していますが
それを5・4・3・2とギアを固定できるモードがあるので
それを使ってエンジンの抵抗で速度が上がらないようにすることがエンジンブレーキです。
速度が上がってからエンジンブレーキで減速するのは難しいので
速度が上昇しないように走ることが大事。
一気に速度をある程度強めにブレーキかけて落とし、
その速度をエンジンブレーキで維持するような走り方が理想です。





続いて上り坂を走行する時の注意点。
頂上付近には駐車場や人が集まる場所があることが多いもの。
そこへ近づくまでは見通しが悪いので、そのままの速度で到着すると
歩行者や交差点の車などに気付いという危険があります。

頂点に近づくと傾斜が緩くなるので
そのままアクセルを踏み続けてるとスピードが出過ぎる可能性があります。

上り坂での坂道発進には気を使うと思いますが
最近の車にはブレーキペダルから足を離してもブレーキを維持しながら
楽に坂道発進できるヒルホールド機能がついています。
しかし、これは10秒ぐらいの一定時間だけキープできるもの。
ブレーキペダルを踏み忘れていると下がってしまうこともあります。

オートマチック車の場合「クリープ」と言ってアクセルペダルを踏まなくても
前に進む力が伝わっているので坂道を上がりやすいですが
急勾配だと車が下がってしまうことがあります。
その場合はアクセルペダルを踏んでエンジンの回転を上昇させられますが
それだけでは前に飛び出す危険もあるので、ブレーキペダルも左足で軽く踏んだり
パーキングブレーキを軽く使うことも取り入れてください。

前の車がずるずると下がってきてしまうこともあるので、
上り坂での一時停止は車間距離は十分取って停止することが大事です。





最後に法規上のことをお伝えしておくと
坂の頂上付近や勾配の急な坂では、一時停止等の指定がある場合を除いて、
駐停車が禁じられています。

また、法律上の規定はありませんが、狭い坂道ですれ違いが難しい時は、
坂道発進が大変な上りのクルマが優先。
下りのクルマは道を譲るようにしましょう。

これからの冬。
凍結した坂道はさらに危険です。
安全な坂道走行を心がけてください。

11月に入り、クルマはもう冬タイヤへの交換時期。
今回は A PIT オートバックス東雲 チームマネージャー
帯川和樹さんにお話を伺い「スタッドレスタイヤ」についてお伝えしました。





いわゆる夏タイヤと比較した時
スタッドレスタイヤの特徴は大きく3つあります。


① 低温でも柔らかさを保つゴム

サマータイヤは低温になると硬くなってしまいますが
スタッドレスタイヤは低温でも柔らかさを保つことで
雪道の 凹凸路面にしっかり馴染む形で走りやすくなっています


② スタッドレスタイヤの溝はサマータイヤよりも深く刻まれていること

これにより水をより排除して凹凸のある凍結路や雪道に密着しやすくなります
例えるなら手で持った氷は濡れていると滑りやすく乾いていると手につくのと同じ
水を排除することで滑りにくくなるという性能を持っています


③ アスファルトでも走行可能

サマータイヤは雪道では滑ってしまいますが
スタッドレスは雪が降った時にしっかり走行できるとともに
雪が積もっていないアスファル トの上でも走行可能です





そして、帯川さんによるとメーカー/商品によって特徴に違いがあるということで
大きく分類するとタイプは3つ。


① 氷上性能を重視しているタイヤ

② 雪上性能を重視し ているタイヤ

③ アスファルトの路面で走行する性能を重視しているタイヤ



近年はこれまで雪があまり降らなかった地域でも積雪を記録します。
東京でも、今年の年明けすぐに5センチの積雪が予想されて
国土交通省の東京国道事務所が冬用タイヤの着用を呼び掛けました。
北海道・東北・北陸・上信越以外にお住まいの方も
地域の気象特性に合わせてスタッドレスタイヤに履き替えた方がいいかもしれません。





最近の売れ筋としては2つ紹介して下さいました。
北海道や北東北の積雪が多い地域で乗用車の装着率 No.1 はブリヂストンのBLIZZAKシリーズ。
気泡を含んだ独自の「発泡ゴム」を素材としてスポンジのような柔軟さを持つことから
より柔らかい質感で、耐久性、硬くなりにくく雪上性能と氷上性能が高いモデル。





もう1つがダンロップのWINTER MAXXシリーズ。
このタイヤは素材中に占めるゴムの割合が高いと言われていて
磨耗に強いためアスファルトの路面を走る比重が高いユーザーに人気があるモデルです。





ちなみにオートバックスでも、アスファルト重視で、
雪にも対応できるタイプをリーズナブルな価格で販売しているとのことです。





ところで、冬には毎年スタッドレスタイヤに履き替えるという方も多いと思いますが
交換サイクルは一般的に3年に1度が目安。特に雪が多い地域だと2年に1度。
また、溝の深さが50%になって“プラットフォーム”と呼ばれる印が出てしまった時や
タイヤのゴムが硬くなってしまった時は替え時の合図だと思って下さい。

最後にスタッドレスタイヤについては気をつけるべき点があります。
それは装着後すぐには本来の性能を発揮できないので慣らし運転が必要なこと。
一般に言われているのが100km以上というなかなかの距離です。
ですから雪が降り出して慌てて「交換しよう!」ということではなく
予め冬の準備ということで交換を検討してみて下さい。

選ぶ時は、お店に行き、担当の方に話を聴いた上で、
予算と相談して決めるといいでしょう。

もうすぐやってくる冬。
雪道、凍った道に気をつけて、クルマを運転して下さい!