交通安全学習には難しい点があります。
話を聴いただけでは頭で分かったつもりでいても、
実生活で生かせない可能性があるからです。

しかし最近、ヴァーチャル・リアリティを使って
「危険予測」を学習するシステムが登場しています。

今週は日本交通安全教育普及協会がレンタルを行なう
『交通安全 危険予測シミュレータ』を紹介しました。
紹介してくださったのは井澤夕里さんです。





このシミュレータを作るきっかけは、
ソフトウェア開発会社からのアプローチ。
神奈川県 相模原市にある株式会社ラッキーソフトが、
地元で多い歩行者事故を減らそうとシミュレータを企画。
一緒にやらないかという声がけがありました。

時代に合う交通安全教育を考えていた日本交通安全教育普及協会も
最新のことができるということで共同開発という形になったのです。





最初に完成したのが2015年の「歩行者編」。
その後、「自転車編」「自動車編」も完成。
「歩行者」「自転車利用者」「車の運転手」、
3つの立場でVRの世界で街を通行し、
危険が潜むポイントを学べます。

このシミュレーターについては正面に大きなモニターが3つ。
これらは繋がった景色が映るようになっています。

「歩行者編」は、足踏みをすると風景が流れる。
足踏みをやめれば止まる。





「自転車編」は、自転車がモニター前に設置してあり、
こぐと風景が動く。ブレーキをかければ止まる。





「自動車編」はゲームセンターのようなシートがあって、
前にハンドル、その脇にはウィンカー、ライトとワイパーのスイッチ。
足元のアクセルを踏めば前進し、ブレーキを踏めば停止します。





例えば「歩行者編」であれば、道路の横断を疑似体験できます。
渡っている最中には様々な危険が起きるようになっています。
単路の横断歩道という課題では、まず歩行者の人が手を挙げると、
センサーがそれを感知して車の人たちが止まってくれる仕掛けがあります。

通常であれば、渡りたくなるところですが、
止まった車をすり抜けて突っ走ってくるバイクや
渡り終わる最後には左側を通っていく自転車がいたりします。
右左をよく見ながらそれらの危険を予測して
的確な位置で止まれば危険に会わずに横断ができるという仕組みです。

3つのタイプともに複数の交通場面があり、
それぞれに複数の危険が潜んでいて頻度も変えられます。
また、時間帯・天気・背景の選択もできます。
同じことの繰り返しにはならないので、その点でも優れもの。





映像のクオリティの高さもあり
話で聴くよりも断然に”頭”と”身体”にインプットされるでしょう。

子どもたちができるのは「歩行者編」「自転車編」ですが、
ちょっとしたゲーム感覚に夢中になるそうです。

交通安全教室では体験した結果が出るようにしておきます。
その上で自転車シミュレーターを子供達がやると
あちこちで事故に遭って評価が悪くなる。
すると悔しい、A評価を取ろうと自分からまた挑戦する。
指導者が何も言わなくても後方の確認、信号では止まる、
見通しの悪いところでは、右左を一生懸命見るということを修得。
Aが取れて喜んで帰っていくという子どもの心を捉えた一面もあります。

日本交通安全教育普及協会がレンタルを行なっている
「交通安全 危険予測シミュレーター」は、
子供向けの交通安全教室や交通安全イベントで活躍しています。

交通安全に関係する催しに関わっていて、
興味を持った方は問い合わせてみて下さい。


一般財団法人 日本交通安全教育普及協会 Webサイト
https://www.jatras.or.jp/



あなたが暮らす地域には、
円形の交差点「ラウンドアバウト」はありますか?





交通事故の防止と軽減のため
海外では広く普及するラウンドアバウト 。
国内に本格導入されてから、去年の秋で5年が経ちました。

しかし、最近になって初めて導入された都道府県も多く
日本に広く浸透しているとは言えないのが実情です。
運転中に初めて直面すれば、戸惑うドライバーも多いでしょう。

今回は国内のラウンドアバウト研究の第一人者
名古屋大学 大学院 環境学 研究科 都市環境学 専攻 
中村 英樹 教授のコメントを紹介しつつ
日本のラウンドアバウトの現状をお伝えしました。





あらためてラウンドアバウトを説明しておくと
一般的な交差点は複数の道が直接交わり、交通の流れは信号で制御しています。

しかし、ラウンドアバウトでは、道が直接には交わっていません。
交差点中央に円形の道路「環道」があって、そこをクルマが時計回りに流れています。
信号はありません。

交差点に入ってきたクルマは環道内を走る他のクルマに気をつけつつ
あるいは箇所によっては一時停止後 自らも環道に入って時計回りに走ります。
そして、左折ならすぐ次の道路へ、直進なら対面にある2つめの道路へ
右折なら最後の3本目の道路へ左折をするように入り、環道を出ていきます。

少し細かい話をすると、日本ではラウンドアバウトの中でも
警察の規制範囲に該当するものは「環状交差点」とされます。





日本のラウンドアバウトは、改正道路交通法上で「環状交差点」とされ、
警察が把握している数で、去年3月現在、31都道府県 87箇所になりました。
      
そののメリット。
いろいろなことが挙げられています。


◉ 環道に合流するところ以外で出会い頭の事故が起きにくい
        
◉ 環道の走行はスピードを出しにくく、同じ方向に走っているので
  侵入してくるクルマと出合い頭にぶつかったり
  環道上で接触事故が起こっても大きな事故になりにくい

◉ クルマの交差点流入・流出のスピード低下で歩行者の横断時の安全性が向上する

◉ 信号を待っている時間を短縮できる
     
◉ 停電の時でも混乱なく交通処理が可能
      




事故数については、実際に防止効果が出ているとみられています。
今まで信号機の付いた普通の交差点や信号機のない交差点を、
ラウンドアバウトに変えた箇所の人身事故の件数は、
22ヶ所を対象とした平成30年度の末のデータで、
以前の7.37件が2件になったという報告があります。
およそ3分の1です。

ただ、中村先生によると、かなり認知度は上がってきているものの
導入が進んでいないところでは理解が十分ではありません。
そうした値域でラウンドアバウトの特徴を正しく認識、理解してもらい
可能な箇所で、普及させていくことが重要だとのこと。

もう1点、大切なことは信号機に頼らない交差点なので、
交差点の設計がとても重要だとのこと。
スピードが出てしまう、接近車両を見落しがち、
といった構造にしないように進めていくべきだというお話でした。

交通事故軽減の効果がある「ラウンドアバウト」が、
これからも全国に増えていくといいですね。

まだ通行経験がないという方は、近隣の導入箇所についての情報を見て
頭の中でシミュレーションしてみると戸惑わなくていいでしょう。
多くの場合、地方自治体のWebサイトに導入情報が載っています。





早朝や夜に屋外を歩く時に反射材を身につけていますか。
反射材は歩行者を交通事故から守る大切なツール。
警察や行政によって強く使用が呼びかけられています。
      
交通事故に遭う危険が高い子どもや高齢者は特に身に着けるべきもの。
今週は『反射材使用の効果』をお伝えしました。

去年暮れに福島県警察が1月から11月末まで
県内で起きたクルマと歩行者の死亡事故を調べたところ
夜間に起きたクルマと歩行者の交通事故は182件。
内訳は亡くなった人は17人で重軽傷を負った人が164人でした。

その方たちが反射材を身につけていたかどうかを見ると、
死亡者のうち反射材を着用していた人は17人のうち0人。
重軽傷者は164人のうち9人。

反射材の着用率が低いということもあるでしょうが、
反射材を身につけていれば、この数字はもっと減ったかもしれません。

以前、全日本交通安全協会が、
全国の1千人ほどを対象に行ったアンケート調査を見ると

<反射材を知っている人>  89.5%

<反射材が安全性向上に効果があると感じている人>  94.1%


ところが

<歩行者として反射材着用している人>  19.5%

ずいぶん少ない結果となっています。
身につけない理由として多い3つの理由は

面倒くさい
カッコ悪い
クルマや自転車がライトを点灯しているので必要だと思わない


「面倒臭い」「格好悪い」は、ひとまず置いておいて
「クルマや自転車がライトを点灯しているので必要だと思わない」を考えると
夜間に運転者から歩行者が見える距離は着ている服の色によって違ってきます。
一般的に言われているのがクルマがヘッドライトを下向きにしている時で

黒っぽい色 約26m    明るい色  約38m

これに対して

認定されている反射材の視認性 57m以上 

乾いた路面を時速60kmで走っている時
運転者が歩行者に気づき、ブレーキを踏んで
クルマが止まるまでの距離は約44m。
単純な数字上では歩行者が反射材をつけていない場合
クルマは歩行者を避けることができないことになります。
一方で57m以上先から歩行者に気づけば安全性は格段に高まります。

そして、「面倒臭い」「カッコ悪い」といった反射材を着用しない理由。
これについては、反射材もひと昔前とずいぶん様変わりしました。
ネットには「おしゃれな反射材を世界から集めた」というショップもあったりします。

夜の時間が長いフィンランドやエストニアなどでは
反射材の着用が法律で義務付けられています。
そのため、ふだんのファッションに取り入れることができる
リフレクターグッズがたくさんあります。

反射材の効果と最近の状況がわかっていただけたでしょうか。
子どもや高齢者に薦めることはもちろん、
みなさん自身も、反射材の着用、考えてみてください。


新年がスタートして10日。
皆さん、安全運転を心がけていますか。

全日本交通安全協会と毎日新聞社主催「交通安全年間スローガン」。
令和2年の標語が、去年11月に発表されています。
今週は、その主な作品を紹介しました。





「交通安全年間スローガン」には、3つの部門があります。

【一般部門 A】 運転者や、その車の同乗者へ呼びかけるもの

【一般部門 B】 歩行者・自転車利用者へ呼びかけるもの

【こども部門】中学生以下へ交通安全を呼びかけるもの


最高賞にあたる内閣総理大臣賞は各部門1つ、計3作品。
その3つを以下に紹介します。

【一般部門 A】

受賞者 坂崎 野々花さん。
川口市にある新雪運輸株式会社の監理部で働く方。

スマホより 横断歩道の 僕を見て

どんなことから標語をつくったのか。
坂崎野々花さん聞いてみました。

私はバス通勤をしているのですが、
ある時、スマホを見ながら運転するドライバーが多いと気づきました。
小学生が横断歩道を渡れずに困っているのを見たこともあり
歩行者に優しい運転をドライバーがもっとしてくれたらと思い
子供の目線に立った標語を作りました。

同じ会社に所属するプロドライバーに聞くと
決して焦らず、ゆとりを持って運転している。
ハンドルを握ると運転に集中して常に気を引き締めていると言っていました。

プロドライバーの安全運転に対する意識は
一般のドライバーの方より数十倍高いと思います。
最近、横断歩道で一時停止する車が前より増えたように感じます。
取り締まりが強化されたからかもしれませんが
歩行者に優しい運転を心がける人が
少しでも多くなればいいなと思っています。






【一般部門 B】

歩行者・自転車利用者へ交通安全を呼びかける一般部門B。
受賞者は愛媛県の高橋長英さん。
ニッポンレンタカー新居浜営業所で働く方。

夕暮れの 一番星は 反射材

      
高橋長英さんに、この標語をつくった理由を聞いてみました。

夕暮れ時に西の空を見上げた時
一際明るく光るのが「宵の明星」こと 1番星ですが
反射材の光も誰もがその存在に気づくことができる。
歩行者にとっては安全に欠かせない一番星として
しっかり身につけていただきたいと思います。

また、車や自転車のドライバーも、その光を生み出すために
早めのライトの点灯を心がけるようにしてもらいたいという願いを込めて
この作品を作りました。

ドライバー、歩行者、いずれの立場であっても
それぞれマナーをきちんと守り
交通安全の高い意識を持っていくことが大切だと思います。






【こども部門】

内閣総理大臣賞を受賞したのは
群馬県前橋市立 月田小学校4年生 中島木陽さん。


しっかりと 止まってかくにん 横だん歩道


木陽さんに、どんな思いで標語を作ったのか伺いました。


毎朝歩いて登校する時
低学年の子がよそ見をして横断歩道を渡っているので
それがなくなるといいなと思って考えました。

よそ見をしていたら低学年に注意しています。
大人もよそ見などをしないで安全に運転して欲しいです。
よろしくお願いします。






令和2年の交通安全年間スローガンを
頭の片隅において交通安全に繋げてください。

例えば、家族と一緒に自分なりの交通安全スローガンを作って発表。
そんなことをすると、より交通安全の意識が高まるかもしれません。



2020年が幕開けました。
クルマを運転する皆さん、オートバイに乗る皆さん、
新しい1年も交通安全を心がけて無事故の1年を送りましょう。

歩行者の立場にある皆さん。
交通事故は多くのケースで歩行者の規則違反が絡んでいます。
「歩行者は交通弱者で注意するのはクルマやバイク」という考えNG。
自分の安全は自分で守ることを常に考えましょう。





2019年が終わり、各都道府県で、
1年間の交通事故データがまとめられています。

東京都内での2019年の交通事故死亡者は速報値で累計133人。
減少傾向は続いて前年2018年から10人の減少です。
減っているという点では、評価できます。
しかし、1年で133人もの命が失われているのです。

「自分は死亡事故なんて起こさない」。

「自分は交通事故に遭って命を落とすことなんてない」。

根拠のない自信を持つことは今すぐやめましょう。
きっと多くの事故当事者も事故の直前まではそう思っていたでしょう。
起きてしまったら取り返しがつかないのです。

東京都内の交通事故の死亡者を年齢層別に見ると、
「少なくとも54人」が65歳以上の高齢者。
クルマ、オートバイ、自転車に乗っている時は、
高齢者の行動に特に気をつけるようにしましょう。
高齢者が身近にいる方は日常生活で注意を促すようにして下さい。





さて、2019年は12月に施行された改正道路交通法で
スマートホン使用など「ながら運転」の罰則が強化されました。
そして、これからは「あおり運転」についても厳罰化される見通しです。
12月6日、警察庁が自民党の交通安全対策特別委員会で明らかにしました。

これまでは・・・

前方のクルマに激しく接近、挑発 

不必要な急ブレーキ 
       
左側から追い越す 
       
極めて接近する幅寄せ 



といった運転をした場合、違反点数は「2」、
罰則は「3ヶ月以下の懲役、または「5万円以下の罰金」でした。


後方車が急ブレーキ、急ハンドルで避けなくてはならないような進路変更 


これは違反点数「1」または「5万円以下の罰金」でした。

これを、かなり厳しくすることが考えられているようです。
検討されているポイントを挙げると

◼︎  道路交通法を改正して「あおり運転」を法律上で定義

◼︎  1度の違反で違反点数「15」以上、免許取り消しとする

◼︎「あおり運転」で免許取り消しとなった場合、1年以上、再取得できないように設定

◼︎  罰則は「2、3年以下の懲役」または「30万円以下の罰金」を軸に検討

◼︎  摘発する対象は「通行の妨害」をすることを目的として
 「交通の危険を生じさせる恐れ」を引き起こした場合などにする



かなりの厳罰化となりますが、
最近、報道される「あおり運転」は、かなり悪質。
こうした法整備は、社会が求めるところでしょう。





そして、去年11月に内閣府と厚生労働省が、
保育園や幼稚園など、保育施設園児の安全を確保するための
「キッズ・ゾーン」設定の推進について都道府県などに通知を出しました。
滋賀県大津市で起こった信号待ちの保育園児が巻き込まれて亡くなった事故など、
子どもが被害者となる交通事故が相次いでいるためです。

キッズ・ゾーンとして設定されるのは、
保育施設を中心に原則500メートルの範囲。

設定されたあとは保育施設を管轄する市町村などの担当部署が、
都道府県警察や道路管理者と協力し、
ドライバーへの注意喚起や意識啓発を行います。

想定されているのは「ガードの設置」や「路面の塗装による注意喚起」など。
それぞれの道路環境に即した施策が求められます。

小さな子供たちは自分の身を守りきれません。
社会全体で守っていく意識が必要です。
有効なキッズ・ゾーンが全国に設置されていくといいですね





2020年。
より交通事故の少ない社会にしていきましょう。
それは社会を構成する一人一人の義務です。