内閣府などによる「平成23年度 東日本大震災における避難行動等に関する面接調査」は、
岩手県 381人・宮城県 382人・福島県 94人、合計で857人の住民に面接で行なったもの。
それによると車で避難した割合は、岩手県43%・宮城県63%・福島県84%。
全体では6割近い57%に相当する485人が車を使って避難したという結果が出ています。
理由について、主なものを挙げると・・・
車で避難しないと間に合わないと思った 34%
家族で避難しようと思った 32%
安全な場所まで遠くて、車でないと行けないと思った 20%
家族を探したり、迎えに行こうと思った 16%
JAF 東京支部 事業課 交通環境係 高木孝さんによると
車の避難にはリスクが伴うことも意識しておくべきです。
前述の調査では車で避難した人の34%が渋滞に巻き込まれています。
地震直後の道路危険な状態になっていること
道路がひび割れてハンドルを取られること
損壊が激しくて走行できないケース
停電によって信号が停止していることも考えられます。
交通規制が機能せず、混乱した交通状況になることも予想されます。
こうしたリスクがることを常に念頭において行動しましょう。
しかし「安全な高台までは遠い」「子どもや高齢者と一緒」「防寒対策」など
差し迫った危険に対して止むを得ない時もあるでしょう。
実際、かつては津波対策について、
「自動車避難を原則禁止」「徒歩避難を原則」としてきた内閣府は、
東日本大震災の時に車で避難した人が多く見られたことから
「自動車で安全かつ確実に避難できる方策」を検討しています。
一方、国土交通省の調査によると東日本大震災において
比較的平地の「平野部」と起伏ある「リアス部」の
津波到達以前の徒歩とクルマによる避難について、
こんなデータがあります。
<平野部>
徒 歩 — 避難速度 時速3.8km / 避難距離598m / 避難時間 9.4分
車 — 避難速度 時速8.8km / 避難距離2.7km / 避難時間 18.1分
<リアス部>
徒 歩 — 避難速度 時速1.9km / 避難距離324m / 避難時間 10.1分
車 — 避難速度 時速8.7km / 避難距離1.6km / 避難時間 10.9分
一概にクルマが早いわけではありません。
「もしも」の時にどんな手段で避難すべきか?
今いる場所と避難場所との距離や位置関係や道路状況などで
よりよい選択が変わるので難しいところです。
JAFの高木さんは「車を使った避難は非常に危険性が高いです。
うまく動けないくらいの可能性というのを考えておく。
徒歩や自転車を使ったほうが速やかに移動できることもあります。
自分が今どんな場所にいるのか。どのような道路がつながっているのか。
場所についての把握を日頃からいておくことが大切です。
きっちりシミュレーションしておくってことですね」と語っていました。
住んでいる地域の津波危険性、津波浸水予測図、
津波の高さ、到達予想時間等を確認しておきましょう。
津波予報、津波情報、避難勧告・指示等の用語の内容、
その意味を普段から理解しておくようにします。
その上で、避難場所がどこにあるか、避難経路はどこを選ぶべきか。
避難するまでに危険個所はないか、避難をする上での課題はないか。
実際にまち歩きをして確認しておきましょう。
そして、もしも大地震が起こったら、
自身の情報と現実の状況を鑑みて最良と思われる選択をするのです。
国や行政には、地域ごとのより安全な避難方法を早急に確立し、
住民への周知を図ることが求められます。