3月になりました。
高校や大学を卒業して新年度を前に運転免許をとる人が多い時期。

自動車教習所は全国に数多あって教習指導員もたくさんいますが
そういう方たちの全国大会があるんです。

今週と来週は「日本一の教習指導員が語る交通安全」。
まずは「学科編」をお送りしました。

今週の主役は熊本市にある中央自動車教習所の福田剛志さん。
福田さん 教習指導員歴は6年ですが 去年10月に開催された
第9回 学科教習競技全国大会 最優秀賞受賞者となった方。

学科教習競技全国大会は全国10地区の予選を勝ち抜いた20名が
与えられた課題で持ち時間15分の学科教習を行うもの。
パワーポイントを使ってスクリーンに映し 表現力・創意工夫・汎用性
そして時間配分など審査基準があり5名の審査員から評価されます。

福田さんは第2段階での課題「人間の能力と運転」を選択し最優秀賞となりました。
教科書の内容だけでなく 増加する高齢者の交通事故を取り入れたことが
評価につながったのかなとご自身では感じていらっしゃるそうです。

今週は福田さんに車を運転していて気になることを3つ伺いました。
その説明はさすがプレゼンテーションで最優秀賞を手にしただけあって
聞き取りやすく、分かりやすかったですね。
以下、福田さんのお話を記しましょう。


? ウィンカーをつけるタイミング

右左折するとき、あるいは進路変更する時の合図。
ウインカーを点けるのがちょっと遅い人が多いのではないかと感じてます。
右左折は基本30メートル手前では合図を点けておかなければいけません。
また、進路変更は約3秒前に合図を点けるのが基本です。
合図は自分のためのものではありません。
周りの人に伝えるためのものです。


? 二輪車 巻き込みへの注意

右左折の方法として左折はあらかじめ道路の左に寄せましょう。
右折はあらかじめ道路の中央線に寄せる。
そういった寄せる行為を忘れている方も多いんじゃないかと思います。
その寄せる意味というのは、二輪車の侵入を防ぐためです。


? 一時停止線での止まり方

一時停止線は停止線で確実に止まりましょう。
見通しの悪い交差点の場合 確認できる所で止まるドライバーを見ます。
なぜ停止線というのは交差点よりも手前に引いてあるのか。
まずは歩行者や自転車を確認するためです。
その点も意識して安全運転して頂きたいと思っております。


最後にドライバーの皆さんへ
福田さんからのメッセージです。


どんなに運転技術が優れている人でも
交通ルールを知らなければ事故を防ぐことはできません。
また、道路標識、表示だけでも200種類以上あります。
もちろん運転する上ですべて意味を理解しておかなければなりません。
車はとても便利な乗り物ですが 一歩間違えれば人の命を奪ってしまうものです。
初心者だからといって特別扱いされるわけではありません。
また 運転に慣れてきた頃に性格や癖が運転に表れるとも言われています。
常に初心を忘れず 責任と自覚を持って運転してもらいたいと感じております。







車が左折する時は直進や右折時と比べて
スピードを停止するぐらいまでに落とすもの。
想像すると あまり交通事故が起きそうもありません。

しかし 実際には交通事故は起きています。
慢心や不注意があるからです。
       
交通事故総合分析センター 研究部 西田泰さんによると  
平成28年のデータで 交通事故の第一当事者である自動車の行動類型が
「左折中」の人身事故は およそ3万3千件で人身事故全体の7.3%。
死亡事故は93件で死亡事故全体の3.1%。
割合は多くはないものの左折中であっても重大な事故は起こっています。

左折中の交通事故でありがちなパターンの1つは大型車による事故。
大きな信号交差点で起こるもので 左折をする大型車が左側の車道あるいは歩道を
走ってきた自転車や歩いてきた歩行者を巻き込んでしまうもの。

左折中の事故で第1当事者としての割合が高いのが大型車。
全体の18%。

これは大型車が左に曲がる時に生じる「内輪差」が主な原因。
歩いている時や自転車に乗っている時には注意しましょう。





左折中の交通事故でありがちな事故
別の1つは信号のない交差点でのケース。
右側からくる車にだけ気をつけた結果 
左折してくる車に気がつかないというもの。
広く注意を払うようにしましょう。

また 事故被害者にありがちなのは 自分が車を認識しているので
ドライバーも自分を認識しているだろうと思い込んでしまうこと。
必ずしもそうではありません。

また 自分にとっての青信号は 自分にとってだけではありません。
左折しようとしている車にとっても青信号なのです。
そのあたりの思い込みが強くならないよう気をつけて下さい。
公道では左からくる車にも注意しましょう。





日本に生まれ育った私たちは
この社会の多くのことを そういうものだと自然に受け止めています。

でも 海外から来た人の視点は違うもの。
私たちが気づかない日本に気づくこともあるでしょう。
今回 追跡したのは「外国人が見た日本の交通マナー」。





去年11月 1人のイギリス人の新聞への投稿が話題になりました。
投稿主は名古屋市にある名城大学 准教授のマーク・リバックさん。
今回はリバックさんご本人に電話でお話を伺いました。

来日20年以上。
長く住んでいる日本を愛するリバックさんが指摘したことは・・・

日本では 信号のない横断歩道で 歩行者が待っていても 車が止まらない

以前から日本では信号がない横断歩道では
車が止まってくれないと感じていたリバックさん。
2016年に9歳の小学生が信号機の無い横断歩道で
トラックにひかれて亡くなったという悲惨な事故をニュースで知りました。

1ヶ月前に仕事で滞在したオーストラリアのシドニーでは
運転手が親切で横断歩道ではクルマが止まってくれるのが普通です。
リバックさんが育った当時のロンドンもそう。
名古屋とは対照的だということを日本人に知ってもらいたく投稿したのです。

愛知県は15年連続で交通事故死亡者数ワースト1。
運転マナーの悪さに気づきやすかったのかもしれません。
でもこれは何も日本中で名古屋に限った特徴ではないはず。
日本全国に共通する傾向なのだと想像できます。

実はロンドンから日本を訪れたリバックさんの
お父さん・お母さんも同じことに驚きました。
日本は海外から「秩序を守る」イメージがあり 道路も整備されている。
クルマは歩行者がいれば当然止まってくれると外国人から来た人は思うもの。
ところが止まってくれないことにビックリ。
イギリスでは横断歩道をZebra(シマウマの意) Crossingというので
お母さんは日本の横断歩道を「Killer Zebra」と冗談半分で言っていたそうです。

ユーモアがある面白い話ですが
日本人として恥ずかしさを感じますね。





リバックさんの投稿にはたくさんの反響がありました。
そのほとんどはリバックさんの意見を支持する内容。
日本人でも同じことを感じている人が多いのでしょう。

実際 2017年にJAFが全国で行った調査では
歩行者がいる信号のない横断歩道で停止した車は1万251台のうちたった867台。
割合では言えばおよそ8.5%で10人に1人も止まっていません。

リバックさんは日本や日本人を批判しているのではありません。
横断歩道で止まらない運転マナーを問題視しているのです。
そして日本のマナーが良い国だと思って来日した外国人が事故に遭う心配をしています。

横断歩道で停車できないのなら
「日本では横断歩道ではクルマは止まりません」と
外国人に周知してほしいとリバックさんは言います。

リバックさんが投稿した背景には3人の子供がいることもあります。
自分の子供が信号のない横断歩道を渡る時
クルマが止まってくれるだろうと思って進んでしまい
ドライバーに止まる意思がなかったら・・・ 想像すると怖くありませんか。

日本人のマナーの良さは 
多くの日本人がそうだと自認していることだと思います。
でもドライバーの歩行者への気遣いという点ではそうではないようです。

横断歩道を渡ろうとしている高齢者が自分の親だったら
子供が自分の息子や娘だったら ドライバーは皆 歩行者を優先するでしょう。
そんな気持ちで毎日ハンドルを握りませんか?


最近の技術革新でクルマは過去のものから様変わりしています。
その大きな目的の1つは更なる安全性の確保。
これからルームミラーも大きく変化していきそう。
今朝は『死角を減らすルームミラー』を追跡しました。





静岡市の株式会社 村上開明堂はバックミラー国内シェア4割のNO.1メーカー。
2016年に2種類の「電子ルームミラー」を発表しました。
2種類のうち「ハイブリッド インナーミラー」というタイプは
2020年に発売される量産車への搭載が決まっています。

開発のきっかけは時代の変化。
モーターショーのコンセプトカーにはドアミラーが無いタイプが登場しています。
「いずれルームミラーが無い カメラとモニターを使ったクルマが出る」。
危機感から村上開明堂は自ら開発に取り組みはじめたといいます。

クルマの安全基準も状況の変化から世界的に法改正が進んでいます。
日本ではバックミラーやサイドミラーをカメラモニタリングシステムで代用する
「ミラーレス車」が2016年に解禁されました。

では 村上開発堂の「ハイブリッド インナーミラー」がどういうものか?
リアガラスやリアガーニッシュなどにカメラを設置。
インナーミラーが通常のミラーの役割に加えてモニターにも切り替わります。
クルマには後方に2つカメラがついています。
1つはふつうに後方を写すカメラ。もう1つは死角になりやすい下後方を写すカメラ。
2台のカメラの映像をインナーミラーのディスプレイで見ることができます。
ルームミラーとカメラモニター機能の切り替えはボタンで行います。
     
「この機能を使えば死角を低減できて安全に繋がります」と
村上開明堂でカメラの開発を担当する 杉山亜矢子さん。
後ろの席の荷物やヘッドレストが邪魔で見えないということもなし。
カメラの性能が非常に良くなり 雨の日や夜間でもよく見える。
ミラーとモニターの切り替えができる製品は
日中の屋外だと画面が見にくいことがあるそうですが
特殊ミラーを採用て そこを改良したということでした。
ミラー1つをとっても最近の車が大きく進化していることがわかります。





村上開明堂が2016年に開発したもう1つは「マルチミラーシステム」。
これは3画面のタイプでドアミラーの部分にもカメラをつけて
インナーミラーで後方と後側方を同時に見られることを可能にします。
2車線の道路でドアミラーには写っていないけれど真横にクルマがいる
後方のピラーの角にあたるところにバイクがいる
そういう状況での事故が減ると考えていますと杉山さん。

こうした技術革新は望ましいこと。
日進月歩の技術はさらに交通安全に役立っていくことでしょう。


この冬、日本列島の天候は、観測史に残る荒れ模様。
あまり雪が降らない地域にも雪が降り、
降雪地域では例年以上の積雪も少なくありません。

雪道のクルマの運転は、いつも以上の注意が必要。
今回は一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)
東京支部 事業課 交通環境係 高木孝さんにお話を伺い  
『雪道の運転の注意点』を追跡しました。





出発前。
タイヤはスタッドレスタイヤなどのスノータイヤをつける。
あるいはチェーンを巻く。
ノーマルタイヤ=夏用タイヤでは危険。

運転前には雪道走行で切れてはいけないものを点検しましょう。
燃料/バッテリー/ラジエーター/ウォッシャー液。
バッテリーは経年劣化します。2年を超えたものは要注意。
買い替えも考えて下さい。

高木さんが挙げた雪道運転で車に積むべきものは「スコップ」と「軍手」。
雪道では長い渋滞が生じることがあります。
停止している間にマフラーの周りに雪が積もり
排気ガスが車内に入って一酸化炭素中毒の危険も!
そんな時、スコップと軍手が役立ちます。

雪でクルマが動かなくなった時もスコップと軍手は使えます。
また、そんな時にはタイヤが滑らないよう下に敷くグッズもあります。
車に載せておくと活躍することがあるかもしれません。

他にも車外に出る可能性を考えて「長靴」、
バッテリーが上がった時のための「ブースターケーブル」、
こうしたものも積んでおいたほうがいいでしょう。



    
 
高木さんが指摘した走り始める前の意外な注意点はクルマの屋根の雪。
雪が降る地域に住んでない人だと気にせず出発するかもしれません。
これはとても危険です。

走行中に屋根の雪が滑ってきてフロントガラスを覆ってしまい、
ワイパーでは追いつかず、視界が遮られてしまった。
そうなるとパニックになってアクセル踏む、
ブレーキとアクセルを踏み間違えるということも起こります。
必ず屋根の雪は落としてから出発しましょう。





そして、雪道での運転。
当然、路面は滑りやすい状況です。
運転テクニックや愛車の性能を過信しすぎないことが大切。
その上で・・・

▶︎ 速度を出しすぎない

▶︎ 車間距離を開ける 

▶︎ 急発進・急ハンドル・急ブレーキを避ける


運転環境はふだんと違います。
いつもと同じことをしても物事が同じく進まない可能性を考慮しましょう。
自分が運転ミスをしなくても他のクルマが滑ってぶつかってくることもあります。





JAFの高木さんは、
雪道での走行で3つの注意点を挙げて下さいました。

1つは「歩行者」。   
雪が降ると車道は除雪されていても
歩道は雪が積もったままということがあります。
すると、歩行者は「こっちが歩きやすい」と車道に出てくることも。
歩行者が車道に出てくる可能性を考えておきましょう。

2つめが「轍」。
轍のない道から轍のある道に左折や右折で入る時、
轍に沿って走るというのは1つ正しい選択です。
ただ、センターラインがない道路では誤って1ずれて
対向車線側の轍に入ってしまうということがあります。
それは対向車とぶつかる危険が出てくるので注意しましょう。

3つめが「ブラックアイス」。
ドライバーからは路面が濡れているように見える。
でも、実際は凍っているのが「ブラックアイス」。
氷なのでもちろん滑ってしまいます。
冬の濡れた道は氷かも知れないと考える必要があります。

2018年の立春は2月4日。
暦の上ではもうすぐ春になりますが、この冬の天候にはまだまだ注意が必要。
雪道の運転にはくれぐれもお気をつけて!