ー 前編から続く ー
今回は「フリッカーテスト」という
心理学・生理学的な数値を利用する交通事故防止策を追跡する後編。
フリッカー値による疲労計測を、
雇用するドライバーの交通安全に活かせないかと考えたのが、
東京 武蔵野市 東京ユニオン物流株式会社 安全環境衛生室に勤め、
交通心理士でもある 岡本秀郎(おかもと・しゅうろう)さん。
現在、運送業を営む会社はドライバーの健康や疲労を
点呼時に確認することが義務づけられています。
しかし、それはどうしても自己申告に頼ることになってしまい、
自分の疲労をきちんと把握しているか?
疲労があると思っていても正直に管理者に報告をするか?
という2つの問題がありました。
その壁を取り払わないと本当の事故防止には繋がらないと。
疲労を客観的に測る簡易的なシステムが無いか探していたところ、
岡本さんはフリッカーヘルスマネジメント株式会社
代表取締役 原田暢善さんが開発したアプリにいきあたったのです。
そこでメールを送ったことから2人は直接会い、
原田さんは、その時点の技術を、岡本さんと意見交換をして改良。
Flicker Health Management System(FHMシステム)を確立させました。
東京ユニオン物流では、
このFHMシステムを交通事故防止に利用し、
長い営業所では3年になるといいます。
使用は朝と夕方の点呼時。
疲労を数値化して計測値も出ますが、
その人の過去の計測値から算出した標準値に対して、
どれだけ落ちたか? を評価して「疲れています」「元気です」
「管理者に相談しましょう」という判定までしてくれます。
それを基に点呼する人が実際に面談をして判断するというように
東京ユニオン物流では補助的な情報として使っているそうです。
やはり、こうしたシステムは得られた情報を、
どう取捨選択してどう生かすのかが重要なポイント。
東京ユニオン物流では去年1年間のデータを解析。
朝のフリッカー値と1日走った走行の正確さというのに相関があるとか、
急フレーキの回数と相関があるとかが出るので
そこから事故防止に繋げられると考えていると
岡本さんはおっしゃっていました。
国交省は今、疲労に対する事故の対策に、
補助金を供出したりして高度な管理を目指しています。
フリッカーヘルスマネージメントも国交省の補助対象。
しかし、こうしたツールを使っている運送会社は、まだ一握りだろうとのこと。
プロドライバーの危険運転をなくす手段として
より正しく心身の状態を判断できるツールがを
運輸業界各社が活用するようになることが待たれます。
今回と次回は「フリッカーテスト」という
心理学・生理学的な数値を利用する交通事故防止策を追跡します。
「フリッカー」とは液晶画面や蛍光灯で生じる光の点滅、
▷ あなたは光を見ているとしましょう
▷ その光は点滅しているのですが、点滅が高速のため、点滅に気づきません
▷ でも、点滅の速度を少しずつ遅くなると、どこかで光の点滅に気づきます
「点滅していることがわからなかった」光が、
「点滅して見える」ようになった境目の値
「閾値(しきいち)」がフリッカー値。
被験者の「フリッカー値」を出す測定方法が「フリッカーテスト」。
このフリッカーテストは、およそ70年前に見出されたもの。
フリッカー値は同じ光の点滅でも見る人によって違います。
同じ人でも心理的な状態や身体的な状態によって変わります。
疲れた状態になるほど光の点滅に気づくタイミングが遅くなるのです。
そこで、このフリッカーテスト、
これまでも眼科での視力機能の測定や、
労働分野での疲労測定に使われてきましたが、
かつての装置は大きく費用なものでした。
しかし、ITの技術革新でコンパクトなものがつくれるようになります。
かつては箱型の大きな計測器が、今やPCやスマートフォン上で、
アプリケーションを起動させればできるようになったのです。
ドライバーの事故防止に努める運送業。
その中のある物流会社に「フリッカー値」を活用できないか? と考えた
交通心理士の資格を持つ安全環境の担当者がいました。
彼は原田さんに相談を持ちかけたのです。
ー 後編へ続く ー
数年前に「資格」ブームがありました。
交通安全については「心理」的なアプローチから
交通事故が起こらない働きかけをする「交通心理士」という資格があります。
「日本交通心理士会」が認定している民間資格で2002年からスタートしました。
今回のコメントは日本交通心理士会 会長で
中京大 名誉教授の神作博さんでした。
交通心理士は心理、生理的な人間の特性を踏まえた上で交通安全に関わる人。
当然、人間が引き起こす事故が、交通事故の中では圧倒的多数。
原因を探り、事故が起こらないようにするのは心理的な知識が必要です。
心理学の専門家として交通事故を研究してきた神作さん。
似たようなスタンスは極めて少ないのでネットワークをつくりたいと考え
1977年に前身の団体が設立されました。
役員名簿を見ると・・・
▶ 大学教授
▶ 自動車学校
▶ 自動車メーカー
▶ 交通安全ジャーナリスト
といった肩書きが並んでいて、いま交通心理士は600人弱。
一般の我々が現場で活躍する「交通心理士」の資格をとる過程は、
審査を受けて日本交通心理学会に入会した上で3日間の事前講習会に参加します。
その後に4段階ある中の「交通診断士補」になるための試験を受けます。
試験内容は筆記試験と小論文と面接。
合格すると日本交通心理学会認定の交通心理士補になり、
さらなるプログラムを受けると「交通心理士」が誕生します。
これが仕事の中で交通心理士の資格を持って実務にあたる人たちです。
残る2つのうちの1つが「交通心理士」を指導する「主任交通心理士」。
その上位にあるのが「主幹総合交通心理士」。
社会の必要性を汲み取って交通心理士制度のプログラムを決める立場です。
「主任交通心理士」「主幹総合交通心理士」は、
心理学の修士学位取得者か同等の学識を持った者でなければいけません。
「交通心理士」は自動車運送業まわりの仕事をしている人に多くいます。
今では国土交通省が行っている適正診断と運行管理者の仕事を民間が受けています。
それを受託した事業所の社員で交通心理士の資格を持つ人がそれを担当。
ただ、残念なことに「交通心理士」は一般にあまり知られる資格ではありません。
自動車学校の方の取得がいちばん多いそうですが・・・
▷ 自動車運送業の中で資格の所有が当然のものになる
▷ その一方で資格取得のハードルの低くなり一般の人も取れるようにする
▷ 資格を活かせる場を広げる
▷ 知識や情報が地域の交通安全の啓蒙活動に利用される
そういった方向に進めば、
より交通事故減少に寄与するかもしれません。
日本交通心理士会 webサイト
https://www.jatp-web.jp/
今週は「スタッドレスタイヤとタイヤの冬仕様」の後編。
コメントは引き続き自動車評論家の国沢光宏さんでした。
スタッドレスタイヤでいちばん大事なのは雪道の中でも凍った道。
雪は降り立てならどんなタイヤでも走れますが、
凍って表面に少し水がはった滑る状態の時に差がでます。
性能は1世代、4〜5年ごとに10〜20%上昇。
国沢さんによると最初の頃のスタッドレスタイヤに比べるて、
今のはとても性能が良いそうです。
とはいってもスタッドレスタイヤを買う時に何を基準に選べばいいのか?
悩む人は多いでしょう。
しかし、スタッドレスタイヤは重要な生活必需品ということで、
メーカーがライバルの製品の性能を出して比較する事を禁じられています。
メディアもタイヤを買ってテストしていますが、
スキーのように1本滑ったあとで雪質は全く変わる可能性があるもの。
正確さを求めるのは難しい現実があります。
そこで、国沢さんがオススメするのは2点。
? プロの評価。
一般の方がSNSで個人評価を掲載していることがありますが
それは限界まで走っている訳では無くあてにしにくい!!
? メーカーがテスト走行に使う車
確かに!
タイヤの性能が悪いと車体の低評価に繋がるので
よりよいものを履かせるはず!!
そして、買い換え時期。
スタッドレスタイヤは年数とともに劣化します。
先週お伝えした柔らかい発泡ゴムが素材のもので 5年 。
それ以外のものは 3年 が目安。
スタッドレスタイヤの購入を考えている中で、
「これはどうなんだろう?」というモノに出くわします。
その1つが欧州に輸出している価格が安いアジアンタイヤ。
ドイツでは冬にはスタッドレスタイヤを履くという法律ができました。
でも、ミシュランやピレリなどは高い。
そこで、アジアのタイヤメーカーが一斉に作り出したのです。
でも、国沢さんによると「日本の道を想定しておらず、あまり合っていない」とのこと。
日本の雪道は普通の雪、硬い雪、乾いた雪、ビチャビチャな雪、アイスバーン etc...
状態が多様で、ヨーロッパの自動車メーカーの人たちが「こんなに滑るのか!?」と驚くほどだとか!
そして「これはどうだろう?」と思っている人がいるかもしれない、
もう1つ気になることが「オールシーズンタイヤ」。
国沢さんによるとオールシーズンタイヤは夏に乗ってもまったく問題ありません。
また、このタイヤは降ったばかりの雪にはとても強い。
ただ、完全に凍ったアイスバーンには強くありません。
だからふだんはほぼ雪が無いところを走り、
ごくたまに遠くに行った時にチェーンを持つのが面倒臭く不安なら
雪が降ったらゆっくり走る条件つきで良いでしょうとのことでした。
お住まいになっている地域にもよりますが
スタッドレスタイヤの知識をあらためて身につけて
ご自分の車に履かせるかどうか検討してみてください