北陸の豊かな食で、心とお腹をみたす一泊二日。
石川県小松市
北陸工業地域の一翼を担う城下町。日本海と山地に挟まれた豊かな自然、前田家ゆかりの史跡や文化財に恵まれ観光地としても注目の地だ。2024年3月16日、北陸新幹線小松駅が開業予定。
旅の醍醐味といえば、その土地ならではの美酒美食。海にも山にも面した北陸の古都・⼩松市には、海の幸、山の幸が盛りだくさん。地元で採れる豊かな⾷材を使った気鋭のオーベルジュから、地元の人々に⻑年愛されるソウルフード&ソウルスイーツ、お土産に欠かせない銘菓まで。おいしいものを心ゆくまで堪能したら、神社や歴史的史跡を散策して腹ごなしを。美味しく食べて楽しく学ぶ、小松グルメツアーへGO!
かの松尾芭蕉も絶賛した小松うどん。
江戸時代には奥の細道で知られる松尾芭蕉に絶賛され、将軍家や前田家にも献上された加賀藩もお墨付きの小松名物。加賀の食文化を守り、郷土の名産としても名を馳せる庶民の味方、それが小松うどん。市内ではいくつもの看板を目にするが、1913年(大正2年)創業の「中佐」は今も昔も小松市民おなじみの一軒。
ここの小松うどんは一風変わっており、卓上のコンロで鉄鍋をぐつぐつと温めながらいただく鍋焼きスタイル。「庶民の味であるうどんをご馳走として昇華させたい」との思いで考案された“ごちそううどん”だ。こだわりの生麺は、太麺と細麺を織り交ぜた贅沢な2種盛り。最初は力強くコシのある太麺を豪快にすすり、お腹が一段落したところで味わい深い細麺をゆっくりと流し込む秘伝の二段構え。具材もこれまた豪勢で、牛肉、カニ、鴨治部とご馳走感満載の品々をラインナップ。
かの義経と弁慶も切り抜けた!難関突破の守護神。
歌舞伎の演目で知られる「勧進帳」。山伏姿に身をやつした源義経と弁慶一行が、関守・富樫に疑われながらも機知と勇気により危うく難を免れた、という伝承をもとに作られた演目だが、その舞台となったのが安宅の関だ。
古くから陸・海路の要所として栄えた港町安宅の地で、安宅住吉神社は「安宅の住吉さん」として古くから親しまれてきた。その名は古典にも度々登場し、かつて北陸道往来の旅人が道中の無事を祈って必ず詣でた古社であり、義経と弁慶の伝承にちなんで、全国唯一の難関突破の守護神としても多くの信仰を集めている。
地元に愛される、お菓子のテーマパーク。
小松市で初めての洋菓子店として開業し、創業68年を迎えた老舗洋菓子店<ケーキハウス マルフジ>。小松市民は、み〜んなここのお菓子で育ってきた、と言っても差し支えないだろう。
親子三世代に渡って受け継がれてきた洋菓子店が、昨年<スイーツガーデン マルフジ>としてリニューアル。三代目となる越栄純平さんと亮弥さんの兄弟パティシエが切り盛りし、ショコラトリー、ブーランジェリー、カフェ&ジェラート店を新たに加えた堂々たる佇まいは、まるでお菓子のテーマパークのよう。「祖父や父から受け継いできたものを大切にしながら、新しい風を吹き込みたい」と語る兄・純平さんが生み出すが繊細かつ美しいケーキの数々に、ショコラティエの弟・亮弥さんが担当するショコラトリーとカフェ&ジェラート。建物全体が甘い香りに包まれ、キラキラと輝くスイーツの数々に目移りしてしまう。
自由な発想のフレンチを、廃校オーベルジュにて。
歌少子化に伴って閉校した「旧西尾小学校」がスタイリッシュなオーベルジュとして開業。ノスタルジックな面影を残す校舎に一歩足を踏み入れれば、コンバージョンされた空間は「小松の地で、実際に地場のエネルギーを感じながら制作した」という現代芸術家・小川 貴一郎の作品に彩られる。ここで腕を振るうのは糸井章太シェフ。日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」で史上最年少の26歳でグランプリを受賞し、今、最も期待される気鋭の料理人だ。
「白山の伏流水が流れ、山野草が自生し、自然と共生しながら野菜や果物を育てている生産者がいる。海も山も近くて、魅力的な食材も季節のあしらいもすぐそこにあふれている」と、目を輝かせる糸井シェフの料理は自由な発想に彩られ、鮮烈で、みずみずしく芳しい。レストランのみの利用も可能だ。
備考一泊二食付き:二名一室の一名料金
37,500円~(税サ込)月・火・水曜休
※最新の営業日は公式サイトにてご確認ください。
金沢の名ベーカリーが、田畑広がる里山に移転。
宿を少し早めに出て、⾏列必⾄の⼈気店で朝⾷&おやつをゲット!見渡す限りの田んぼの先にポツリと佇む<穀雨>は、もともと製材所の資材置き場だった場所をリノベーションしたとあり、一見通り過ぎてしまうほど慎ましい風情を残している。が、一歩入れば雰囲気は一変。扉の奥には香ばしい香りが立ち込め、焼き立てのパンがずらり。「日常的に楽しめる、食べ飽きないパン」を目指し、定番の塩パン、各種サンドイッチ、定番のクリームパンやメロンパン、クロワッサンやハード系まで常時20〜30種類が揃う。
お目当てをゲットしたら車を走らせ、⽊場潟公園で爽やかにピクニック気分の朝⾷を楽しむのもおすすめ。パンの品揃えは午前中が充実。14時過ぎには閉店することも多いそうなので、来店はお早めに。
住所石川県小松市長谷町ケ100
電話050-8884-7986
備考8時〜なくなり次第終了/水・木曜・不定休
豪華絢爛な曳山を身近で体験してみよっさ〜。
毎年5月中旬に行われる「お旅まつり」。その見どころは何といっても、着流し姿の若い衆が町を曳き歩く豪華絢爛な8基の曳山。曳山の上では江戸時代より脈々と受け継がれる「曳山子供歌舞伎」が上演され、日本三大子供歌舞伎に数えられている。そんな「お旅まつり」と「曳山子供歌舞伎」にまつわる展示や、歌舞伎風メイク・衣裳体験など小松文化の魅力にどっぷり浸かれる隠れた名スポットがここ。
館内には常時2基の曳山が展示されていて、間近で見る曳山は圧巻!普段はなかなか近くで見ることができない漆塗や螺鈿などの煌びやかな細工を間近で見ることができる。臨場感たっぷりに解説してくれる案内トークも相まって、ついつい長居してしまいそう……。
住所石川県小松市八日市町72-3
電話0761-23-3413
備考10時~17時/無料/4月~11月 無休、
12月~3月 水曜休、年末年始休
これぞ小松市民のソウルフード!
小松うどんと並ぶソウルフードと言えば、実はもう一つ「塩焼きそば」がある。その歴史は遡ること65年ほど前。中華料理店<餃子菜館 清ちゃん>の店主、清ちゃんこと高輪清さん(90歳まで現役を貫き、惜しまれつつ2021年に閉店)が小松にない美味しい料理を求めて日本全土を旅して出逢った「チャーメン」を参考にし、市内に広めて以来この町のソウルフードに。そんな清ちゃんの弟・勝っちゃんが1961年に開業したのがここ<餃⼦菜館 勝ちゃん>だ。現在厨房で腕を振るうのは二代目の宗己さん。小松独特の太麺ならではのもっちりした食感と、シャキシャキっと炒めた野菜の歯ごたえがジャストマッチ。絶妙なコッテリ感と塩加減がクセになる旨さで、麺がスルスルと喉を入っていき、気づけば一皿ぺろり。そして勝っちゃんといえば忘れてはいけないのが餃子。創業以来、親子二代にわたる一子相伝の秘伝の味付けで、パリパリ&ジューシーな仕上がり。このセットは外せない!
住所石川県小松市土居原町395
電話0761-22-4077
備考11時~14時、17時~21時/水・第3火曜休
小松の銘菓は、切っても切っても栗!
さて、いよいよ旅も締めくくり。小松土産は何にしよ……?なんて心配は無用です。まずは迷わず、<松葉屋>の栗むし羊羹「月よみ山路」を手にとってみてほしい。
創業170年を超える老舗和菓子店による不動の定番商品なのだが、ここの魅力はなんと言っても栗。切っても切ってもゴロゴロの栗が出る!しっとりほっくりと仕上げた蜜漬けの甘い栗と、甘さ控えめのむっちり食感の蒸し羊羹が、品よく絶妙に組みわさって、独特の歯応えを奏でる。決して食べ飽きることがなく、気づけばリピート必至。また、本店では名物の栗とは一味違う、比咩くるみも販売。こちらはコリっとしたくるみの食感と、味噌の風味が芳ばしい一品。お土産はもちろん、自分用の購入もお忘れなく。
FRaU2024年1月号掲載
photo MASANORI KANESHITA
text CHISA NISHINOIRI
edit EMI FUKUSHIMA