- 2021.09.26
「鹿」を通して子どもたちへ伝えたいこと~「リボーンアート・フェスティバル」_2

高橋:今週も先週に引き続き、宮城県・牡鹿半島で
鹿肉加工施設「フェルメント」を運営する鹿猟師・小野寺望さんのお話、
先週の続きです。
牡鹿半島はじめ、各地で大きな課題となっている
鹿による食害と、その対策としての「駆除」。
これをもっと、自然の循環に戻す/持続可能なものにする。
そんなミッションへ向けて、様々な活動をしている小野寺さん。
先日、「リボーンアートフェスティバル」の一環で行われた
ワークショップも、その一つです。
小野寺さんがこれを通じて、私たちに、そして子どもたちに伝えたいことは何か。
お話伺いました。
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高橋:小積浜に来ていますが、リボンアートフェスティバルだから
アートが展示してある場所かと思ったら、遊び場があるんですね
小野寺:将来に向けての子どもたちの遊び場なんです。
今はこういう感じなんだけれども、まだ完成形では全くないんですよ。
ここは鹿の処理場なんですけれども、
興味を持ってもらう場所になってもらえればいいです。
森へ一歩入る 入り口ですよね。
自然界にはみんなが手をつけないけれども食べ物が意外とあるんですよ。
森林副産物、あそこにキノコもいっぱい干してありますが、
それ以外にも山菜だったり木の葉っぱだったり木の枝もそうだし、
ハーブや副菜みたいな感じで使えるんですが、
そういうものをちょっとずつ採ってきて楽しめる場所であって欲しいんです。森は。
小野寺:そこに子どもたちが興味を持って入っていく。
山のものは、ある程度手をつけないと、いじめないと返してこないから。
採りすぎてはダメだけど採らなくてもだめなんですよ。
来年も再来年もそこでおいしいキノコや山菜が採りたかったら、
ほんのちょっとずつ、「いじめて」採ってくるんですね。
そうすると、
「あら。俺たちやられちゃうから、もう少し頑張って子孫を残そう」
と植物もがんばって伸びてくるじゃないですか。
菌類もそうですけど、そうやってやりながらうまい具合に、
利用する方も利用される方も森とともに、
というふうにやっていったほうが長く使えるので。
子どもたちにそういうものに対する意識を持ってもらえるようになれば
良いなというだけのことです。
高橋:それがフェルメントという名前の由来ですか?
小野寺:会社名がフェルメントです。
熟成・発酵といった意味合いですよね。
それぞれが集まって熟成して良い味を出していけばいいじゃない、
という意味です。
高橋:解体小屋がありますが、お子さんも大人も、
体験する前と後で反応は変わりますが

小野寺:いまモニターに映っていますが、
子どもたちは抵抗なく、素直に、普通に入って来れましたけれども、
お肉の食べ方が普通じゃなかったですね。
がっついて食べるんです。
自分で葉っぱで包んで、泥んこをこねた粘土で包んでお団子にするんです。
中には鹿の肉が入っています。
ハーブなので香りがついて、うっすら塩しかしないんですが、
燠火に置いて30分、40分置いておくと、蒸し上がるんです。
これを取り出して割って、中のお肉を食べる。
鍋も釜も入らない、原始的なやり方です。
高橋:鹿の肉を葉っぱで包んで、泥で包んで、焼く?
小野寺:だから調理器具はいらないの。
究極のサバイバル料理ですよ。
焼いたそれを割ると、なかから葉っぱが出てきて、
葉っぱの中からお肉がちまきみたいになって。
収穫したお野菜と鹿のお肉ですよ。
小野寺:すっげえ味いいですよ。朴葉の香りがついて。
モニターに映っている彼は中学校1年生ですけど、
小鹿ちゃんの脂身にがっついて食べていますね。
味は粗塩をポンと振っただけです。
子どもたちに実際に解体させます。
包丁を持たせて、切ってみろ、こうやって切って皮を剥げと教えて。
「私はいやだ」と言う子もいたけど、
何が怖いのか話を聞くと「血が怖い」んだって。
だからうちの猟犬がかじって殺したんですが、
そのかじったところだけをトリミングしてあげると
ピンクのお肉が出てくるんです。
血がなくなれば「私、触れる」と
女の子が触って肉を切れるようになったりとか。
体で感じて、食べて、じかに自分が触ったものが
食材なんだとわかってもらえるんです。

高橋:お子さんたちがこういう体験をすることで、
鹿をむやみに殺さないためにも森って大事なんだと気がついて、
それが当たり前という世代になればいいなと思いました。
小野寺:昔の日本はそうやって森と自然と良い関係だったと
思うんですよ。里山も田んぼもそうだし、
利用するものは利用しながら恩恵を受けたり、
逆に災害で苦しい思いをしてきたというのもありますからね。
調和がとれたはずだったんです。
それが便利さを求めて、すべて消費の世界になってしまったでしょ。
住宅だって立て替えたら終わり。森林の使い方もそうですけれども、
ただ単に植林をして森は一気に皆伐しちゃって。
残す木・残さない木というのはあまり関係なく
皆伐しちゃうと森のダメージは大きいですよ。
そこに苗が出て来れば、鹿が入って食べてしまうのは当たり前だし。
草原になるとそこに日が差すから生えてきて、
鹿もどんどん食べて子どもを増やすし。
ただネットを張って終わりではなく、
やっぱり樹齢100年、200年、300年の木があって
バラバラな個性のあるものになっていないと生態系は
うまい形にできないと思うんですよ。
だから鹿の駆除というのと最終的にはリンクしているから。
今の鹿の駆除ばっかりやっていますけれども、
それが終わったら今度は何が出てくるかと言うことですよ。
次はもしかすると猪かもしれないし、次は猿かもしれない。
多分そういうことだと思います。植物もそうですから。
1種類だけずっと採っていたら、他のものが伸びてきて
バランスがおかしくなっちゃうんですよ。
だから、ほどよくうまい具合に回るような形でやらないと。
ひとつだけではなく相対的にいろいろやらないと
形になっていかないと思っています

高橋:循環させて良い森に活用していけば、
鹿をむやみに殺さなくてもいいということですね
小野寺:少しでも意識が変わっていけば。
たぶんちょっとずつ変わっていくと思うんです。
山の中に人が入っていくことによって動物だって後退していく部分もあるし、
もちろんここには熊がいなかかったということもあるしね。
実際に被害が出ている大変なところでは相容れないけれども、
ただこの場所ではもう少しちゃんとした自然との関わり合い方、
手をつけるなら手をつけるで、
きっちり最後まで手をかけてほしいということなんですけど。
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高橋:牡鹿半島の「フェルメント」を運営する鹿猟師・小野寺望さんのお話、
お聴きいただきました。次回もどうぞお聴きください。
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【今週の番組内でのオンエア曲】
・ 魔法のコトバ / スピッツ
・ そのいのち / 中村佳穂