北海道東部・阿寒国立公園にある湖・オンネトー湖のキャンプ場で行われた、「モーラナイフアドベンチャー in Japan」。自然と向き合いながら、アウトドアのスキルも身につくこのイベントの模様を何回かに分けてお届けしています。
いよいよイベントも終盤に入りました。きょうは、スウェーデンのモーラナイフと、北海道の先住民族の文化を融合させるという、とっても興味深いワークショップの模様です。
講師はモーラナイフ公認の、日本と台湾のアンバサダー、長野修平さん。ネイチャークラフト作家で、アウトドア料理人という肩書もお持ちの、やはりアウトドアの達人です!


 いよいよ今日最後のプログラムになります。モーラナイフの国、スウェーデンはサーミ人という先住民族がいますが、僕は日本人なんですけれども、ぜひアイヌをテーマに入れてほしいということでした。僕は北海道 苫小牧の山菜料理家に生まれました。幼稚園に入る前から山に入って山菜をとっていて、そこでいろんなもの拾って遊んだりもしていたんですけれども、隣町が二風谷というアイヌの街でした。(アイヌ文化と繋がりの深い)白老も隣です。ですので、アイヌのいろんなものを感じながら生活してきたんですが、最近になって、白老のアイヌ民族博物館が実はオリンピックの年に向けて国立化することになりました。まさにそういうタイミングで、アイヌをテーマにワークショップをすることになったわけです。
 今回作るのは、アイヌに伝わるメノコイタというカッティングボード(まな板)です。片側が彫ってあって、サーモンをさばくと中からいくらが出てきた、ここにためまるんです。今回はそれを僕らのサイズに合わせてつくります。たとえば、ここにソーセージがあったら、切りながら、ここでタレをつけて食べる。そんなこともしてもらいたいと思います。

 完成見本のカッティングボードの持ちての部分を見てください。特徴的な形をしていますね。アイヌの人の墓碑はエンジュという、100年たったら土に帰る丈夫な木です。直径10センチ位の丸太をただ突き立てたのが墓碑なんですけども、女性はドーナツ状の穴が上に削ってあります。男性は矢尻が削ってあります。女性のドーナッツ型の穴は針の穴をイメージしています。女性は針でアイヌ文様をつくりますね。冬の厳しさをしのぐ衣類も針で作ります。ですので針は女性の象徴なんです。男性は刃物で、狩りして家族の糧にします。もしくは隣の部族と刃物で戦って家族を守る。また、刃物で生活の道具を作り、アイヌ文様を彫刻しています。だから男性の象徴は刃物なんです。それが墓碑にも刻まれているわけですね。名前は全然書いていないんです。それを組み合わせたのが、この持ち手の部分になります。




ではさっそく板を切るところからスタート!


先生に教わりながら…


持ち手に穴を開けます。


ウッドカービングナイフという道具を使って削っていきます…


先生はやっぱりうまいですね。


最後に、モーラナイフアンバサダー 長野修平さんに、アイヌ民族と森の関係についてお話を伺いました。


 森っていうのはいろんなものを与えてくれるものなので、どんどん捕りに行きます。動物も彼らは獲っていました。でも、親子熊がいたら子熊は自分の古潭でしばらく飼って育てるんですね。僕は山菜料理屋の出身なのですが、山菜を採るときは、また来年、その次の年も必ず同じかそれ以上の量を採れるようにするんです。採れるだけ採るのではなく、育成を考えるんですね。アイヌ民族にとって、森は”守ろう”とかじゃなくて、自分たちが生きるために必要なものなんです。それがなければ自分たちが生きていけない。そういう意味で彼らは自然のことや森のことをカムイと呼んで崇めてきました。
 よく、先住民族の人たちが言うのは、ものを教えるとき、教わった人にはそこで授かった知恵を次の世代に義務と責任が生じるんです。このワークショップに来ている人もそうです。カービングナイフで削るのも、次は誰かに伝える義務がすべての人に生じています。それが知恵の伝達ということなんです。そして、昔からある普通のメノコイタを作るのではなくて、現代風にアレンジするのが本来の知恵のあり方なんだと思うんです。知恵をそのまま伝えるのは、博物館にしまったもの。今の暮らしで何の実用もないものを、そのまま伝えてもしょうがなくて、雑貨だったり、おしゃれな食卓を作るのにも、アイヌの知恵を活かすことができるんですね。
 今日参加されたみなさんは、僕が伝えたものさらにアレンジして次の世代、またその次の世代にも伝えてくれると思います。それがアイヌがいたことのありがたみということになってくるのかなと思うんですね。




今回のお話、いかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください。
また、番組内でご紹介しているKapiw & Apappoさん、気になった方はぜひこちらのサイトをチェックしてみてください。
https://kapiw.jimdo.com/kapiw-apappo/
番組でかかっていた曲が入ったCDも購入することができます。


『PAYKAR』Kapiw&Apappo


来週も引き続きモーラナイフアドベンチャー in Japanの模様をお届けします!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・プライベート サーファー / UA
・ORORO PINNE / Kapiw & Apappo

今日は、日本の森と生態系に関するちょっと変わった活動をご紹介します。スタジオにお招きするのは、「オオカミと森の研究所」という団体の朝倉裕さん。この団体は、オオカミを日本に復活させよう!と訴えている団体なんです。朝倉さんにその活動内容や、オオカミと森の関係についてお話を伺いました!


~朝倉さんが活動する「オオカミと森の研究所」はどういった活動をされているんですか?
以前は日本オオカミ協会というところで、日本の自然にオオカミを復活させようという運動をしていました。いまはちょっとそこから離れて、一人で活動を始めたんですけれども、オオカミの再導入のためには、いろんな人の理解を得たいということで、いろんな活動をしています。

~日本のオオカミは絶滅してしまったということは知っているんですが、そのオオカミを森に戻すということですか?
はい。絶滅というのも、日本列島からいなくなったということで、大陸にはまだたくさん残っているわけですね。だから、生息地が縮小したと考えれば、人間が手を貸して戻してあげようということですね。

~オオカミを日本の森に戻すと、どういったいいことがあるんですか?
各地で鹿とかイノシシが増えて、いろんな被害が出ているんですけれども、元々森のなかの生き物にはそれぞれ役割があって、鹿はおそらく植物の多様性に関わりがあるんですね。いろんなものを食べて、ひとつの植物だけが増えるのを抑えて、いろんな生き物が生きられるようにしていると思うんですん。ただし、それは生息密度が適当であればなんですね。その鹿の生息密度を適当なところにおさえ、コントロールする役割はオオカミだったんです。日本の場合、捕食者のオオカミがいなくなって以降、人間が狩猟によって抑えていた部分が大きいんですが、鹿を狩猟で獲る目的としては毛皮として使う目的が大きかったんではないかと思うんですね。そうすると、その部分が高度成長期にフェイクファーに置き換わったりといったことで、鹿を獲る動機がなくなってしまったんです。それ以降、鹿が増え始めました。

~そこにオオカミを戻すことができたら、どういうったことが起きるんですか?
アメリカで「緑の世界仮説」というものが発表されたのが1960年なんです。要約すると、世界が緑で覆われているのは、捕食者がいてくれるからだと、仮説として掲出されて、それをいまアメリカでは実験が進行中という段階なんですね。実際にオオカミがいなくなると、鹿が増え始めて、植物が無くなる減少が起きるんですね。これは世界のどこでも起きていることで、いま現に日本で起きていることです。そこにオオカミが戻ると、その逆の減少が起きるんです。鹿が減って、植物が増えて、ほかの動物たちが増えていく。

~オオカミが鹿を捕食することで減るんですか?
食べることでも減ります。オオカミが戻ると鹿そのものも群れとして健康になると言われているんです。オオカミが捕食するときには、立派な角を持った体の大きな個体を狙うと自分も危険なので、弱い個体から捕り始めるんですね。病気であったり、ケガをしていたり、あるいは子どもだったり、歳をとっていたりていう個体にに狙いをつける。そうすると、鹿の群れそのものも健全な個体が残っていくんですね。また、オオカミは捕食するためにまず、追いかけるんですよ。オオカミは走る動物ともいわれていまして、ネコ科のトラとかヒョウとかと違って、待ち伏せをあまりしないんです。まず姿を見せて走らせるんですね。追いかけていくんですよ。そうすると、鹿は安心して一ヶ所で食べ続けられないので、それまで鹿に食べられていた植生がちょっとずつ回復します。すぐにその減少は始まる。つまり鹿が減る前に植物が回復するんですね。

~オオカミには天敵はいないんですか?例えばクマはどうですか?
オオカミに天敵はいません。クマとオオカミの関係は面白くて、アメリカの例ですけど、オオカミは主に鹿とかバイソンを獲って食べるんです。そこに後からクマが現れて、オオカミが倒したものを横取りして行くんです。クマそのものはほぼ植物食なんです。肉食獣のくせに木の根や小動物を食べているんですけれども、オオカミがいると、一部肉食が復活するんですよね。

~そこでオオカミとクマがぶつかることは無いんですね。
クマが勝ちます。オオカミはクマが自分の獲物を食べ始めると、周りで見ていることしかできません。それはアメリカのグリズリー、あるいはクロクマの例なんですけどね。日本でツキノワグマがどういう関係になるかはちょっとわかりませんけどね。

朝倉さんのお話、いかがだったでしょうか。来週もインタビューの続きをお届けします!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Memories / MAN WITH A MISSION
・Passage / 山崎まさよし
昆虫植物写真家 山口進さんのインタビュー、お届けしてきましたが、今週が最後となります。
あのジャポニカ学習長の表紙の、めずらしい昆虫や植物の写真を40年にわたり撮り続けてきたことでも知られる山口さん。最後は、昆虫と森、そして自然環境について語って頂きます!

〜本当におもしろい昆虫のお話をたくさんうかがいましたが、ほかにもおもしろい昆虫はいますか?
最近ボルネオに通っているのですが、ボルネオに、食虫植物のウツボカズラのなかに住んでるアリがいるんです。ウツボカズラというのは虫を捕まえて、それを栄養にしているんですが、ウツボカズラの壺のなかに消化液が入っています。普通のアリはその中に落ちると死にます。だいたい、大きい3〜4cmの大きいアリでも3〜4秒で沈んでしまいます。ところが、このアリは消化液の中を自由自在に泳ぎ回って、ウツボカズラの底に沈んでいる虫をとってしまうんです。横取りしているように見えるんですが、実はそうではないんです。このアリは「シミッチイ」といういいます。シミッチイは、ウツボカズラのなかにいるボウフラを食べて退治するんです。ボウフラはウツボカズラの中に住むことができるんです。ボウフラはせっかくウツボカズラの消化液の中に溜まっている栄養分を横取りするんです。横取りして食べて、最終的には蚊になって出ていくんです。ですから、ウツボカズラにとっては何の利益もない。でも、このアリはボウフラをバァーっと追っかけていって、噛み付いて、それを引き上げて食べて、そこで糞をするんです。そうするとその糞がウツボカズラの栄養になる。だから、ボウフラはウツボカズラにとってはマイナスしかありませんが、シミッチイはプラスになる。シミッチイはウツボカズラのツルに巣をつくっていて、いっさい地面には下りないんです。ウツボカズラっていっぱい壺がぶら下がっていますけれども、そのなかの半分くらいはシミッチイが住んでいます。ですから、シミッチイの住まないウツボカズラは成長が遅いんです。

〜シミッチイはなぜ溶かされないんですか?
それが疑問なんです。それを本当は調べたかったのですが、いまは標本の持ち出しとかがなかなかできないんです。可能性としては、アリには普通、お腹の横に気門といわれる穴があいていて、そこから呼吸をしていますが、そこに特殊な構造があるとか、体の節の間に、なにか染み込まないような仕組みがあるとかいろいろ考えられますが、これからの課題ですね。

〜この番組は森をテーマにしていろいろお話を伺っていて、世界中のいろんな森を旅してきた山口さんにお聞きしたいのですが、森が豊かだと昆虫もたくさんいると思います。そういう意味で印象的な森っていままでありましたか?
たしかに森が豊かだと当然生き物は多い。いまは開発が進んでいて、少なくなっていますけれども、それをやめようという動きもあります。たとえば、絶対開発しない森ってじつはあるんです。パナマ運河の両脇って森が広がっているんですが、それはなぜかというと、パナマ運河を運行するために森が必要なんです。パナマ運河というのは、ちょっと高いところにガトゥン湖という湖があって、そこにたまった水をパナマ運河に流しながら船をぐぐっと上げるんです。だからいつも水がないといけない。それを保つためにパナマ運河の周辺の森を全部残しているんですね。そういうふうに、人間が利用することによって、森が守られるということはありますよね。開発をひとえにだめとは言えませんが、うまく利用することによって森を残せるんじゃないかというふうに思いますね。


〜やっぱりそういう手付かずの森には生き物、昆虫もたくさんいるんでしょうね。
パナマもの隣のホンジュラスなんかは昼間でもジャガーを見ることができるんです。僕はよくキャンプしている場所があって、昼間にすぐそばの川で行水をしていたら、目の前をクロヒョウが通っていきましたね。そこはやっぱり森がちゃんと残っていて、それで昆虫全般が多くて、鳥も多いですね。そういうふうに食物連鎖がちゃんとなりたっているんですよ。人間もそうですが、生き物は環境の動物ですから、環境がちゃんとしていないと、ちゃんとした生き物が生きられない。だから、人間もちゃんと環境を整えていかないと、生きづらくなるんじゃないかなっていう気がします。
最近よく、ミツバチがいなかったらどうなるかという話がありますね。もう本当に単純な話で、花粉を運んでくれる人がいなくなって実がならなくなる。そうすると、食べるものだけじゃなくて、植物全般がダメになるんですね。植物って我々が生きる基本ですから、それがなくなると大変なことになります。
ただ、それをみんな気づいていて、たとえばボルネオなんかではアブラヤシのプランテーションをやめようとか、そういう動きも出ています。ですから、僕は決して悲観的ではない。昆虫っていうのは、どんな小さくても、自然環境がちょっと残っていれば生き残っているんです。だからもし、環境が良くなって林が元に戻ってくると、どんどん増えてきます。そうすると鳥も来るし、動物も来ます。昆虫や生き物の力は強いんです。だから、ちょっとだけでいいから、自然を残しておいて欲しいと思います。


山口さんのお話、いかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!


山口進『珍奇な昆虫』/光文社新書

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Roar / Katy Perry
・The Circle Game / Joni Mitchell
今週も先週に引き続き、昆虫植物写真家 山口進さんのお話です。
あのジャポニカ学習長の表紙の、めずらしい昆虫や植物の写真、多くの方が記憶に残っていると思いますが、あの写真を40年にわたり撮り続けてきた方です。

山口進『珍奇な昆虫』/光文社新書

山口さんは今年、『珍奇な昆虫』という本を発表されています。この本は、50年にわたって追いかけてきた、珍しい、奇妙な昆虫たちを写真と解説文で紹介したもの。 本当に目次を見るだけで、興味が湧くものばかり!
きょうはその中から、人間も顔負けの社会システムを持っているあの昆虫についてのお話です!

~「珍奇な昆虫」のなかですごくおもしろかったのが、たとえば「超個体! ハキリアリ」。じつはこの番組でも以前にこの昆虫を取り上げていて、葉を切り取って巣に運んで、キノコを育てる昆虫ということは紹介しているのですが、それだけじゃないんですよね。分業制が成立しているとか?
たとえば、いちばんおもしろいのは、年寄りのアリと若いアリとで分業しているんです。年寄りのアリは、悲しい話ですが、死が近いんですよね。だから危険な仕事に就くんです。たとえば巣を出て、外にいって何かを運んでくるとか、巣のなかでゴミが出るんですが、ゴミにはいろんな菌がついていて、その菌がアリに付くと死んでしまうんです。ですから、そのゴミを外に出す係は全部歳をとったアリなんです。若いアリは中で卵や幼虫の世話をしたり、巣の中をきれいにしたりするという作業をしているわけです。もちろんいちばん大事なのは女王の世話ですが、そういうのは全部若いアリがやっているんですね。

~お年寄りをいたわるんじゃないんですね!?ハキリアリは自分の体の5~6倍も大きい葉をアゴで切って運ぶじゃないですか。あれはどっちですか?
あれはちょっと成長したアリですね。アリたちは葉に菌がついていないかというのをすごく敏感に調べるんです。たとえば、雨に当たると、雨に入っていた菌が付くかもしれない。そうすると葉を全部放棄するんです。菌がついているかもしれないから。
それからもっとおもしろいのは、葉に寄生する小さいハエがいるんですが、葉を運んでいるときに、その葉に卵を産み付けて巣の中に運び込まれてしまうと、そのハエの幼虫はアリを食べてしまうんですね。それを防止するために、運んでいる葉の上に、一匹小さいアリが守ってるんです。そのハエが寄ってくると、体を乗り出して追い払うんです。だから行列をずっと見ていると、必ず葉の上に1~2匹乗っていますね。


~ものすごい社会がそこにはあるんですね。でも、すごい大所帯じゃないですか。コミュニケーションはとっているんですか?
そのへんはまだよくわかっていないのですが、ハキリアリは特に音を出してコミュニケーションをとってるんですね。おいしい葉と切り取ってはいけない葉って決まっているらしいんですが、一匹がいい葉を見つけて切り始めると、音をだすんです。人間の耳に聞こえるくらいの音です。それは仲間に「この葉はいいぞ!」って知らせているんです。そうするとみんなが寄ってきて、その葉を切りまくるという。それを巣に向かって運んでいくんですが、そのとき、運んでいる途中で敵が襲ってきますから、守る兵隊アリがいるんですね。守る兵隊アリはすごく頭が大きいんです。頭の中は筋肉なんですが、大顎を動かす筋肉がびっしり入っているんです。ですから、噛む力が強い。
そして、たとえば行列をしているときに、から枯れ葉が落ちてきたりすると、それを片付ける係もいるんです。わーっとその枯れ葉に寄ってきて、それを引っ張ったり、切り刻んだりして、道をきれいにするんですね。だから、ハキリアリの行列は、本当にハイウェイのようなきれいな道なんですよ。「あ、ここはハキリアリが通った場所だ」ってわかるくらいですね。


~だから「超個体」ってついているんですか。
全体でひとつの人間みたいな動きをしてるっていうことですよね。それぞれが何らかの意識を持ってるかどうかわかりませんけれども、うまくコミュニケーションをとりながら、ひとつの仕事をやっている。ひとつの仕事とは何かというと、巣を維持する。次世代を残すっていうことですよね。

~なんだか企業みたいですね。全部うまくレーンができているといか。ほかにも、アリでいうと、他の昆虫を育てるアリもいるんですか?
はい。日本にもたとえばシジミチョウっていう小さい蝶がいるんです。日本には250種類くらいいるんですが、そのなかの5種類だけアリに育てられる蝶がいるんですよ。幼虫がアリの巣の中に運び込まれて、アリからエサを口移しでもらって、サナギになって、巣から羽を広げて飛び立っていくと。

~アリには何の得があるんですか?
巣の中にいるときに、蝶の幼虫は甘い蜜をだすんです。シジミチョウとしては、土の中って外敵がいないですよね。だから、自分を守るという意味ではとてもプラスなんですね。
日本ってすごく蝶の研究が盛んだったのですが、その5種類は、地上から様子が見えないので研究されてなかったんです。それをじゃあやってやろうと思って、約10年かかって生態を全部写真に撮って本をつくったことがあります。難しかったですね。まず、どこにいるかわからないから、アリの巣を掘りまくるんですよ。だから、肉体労働者ですね(笑)。もうカメラなんか持たないで、スコップとツルハシを持って。たとえば、夏になると蝶が飛んでますよね。そうすると、この辺にいるんだなと見当をつけて、秋から春にかけての地下にいる時期に掘るんです。3年くらいかかったかな。最初に見つけたときはもう、涙が出ました。でも、単に見つかった!っていう写真なので面白くない。それで巣をアリにつくらせて、それにガラスをはめ込んだりして、なかでお互いにコミュニケーションをとったり、エサを上げてるところを撮影したんですね。


~その5種類の蝶というのは、全部アリの巣から生まれるんですか?
4種類はアリの巣のなかから出ていきます。残りの1つはエサをもらったりするんじゃなくて、ガードマンにアリを雇っているんですよ。おそらく匂いか何かを出しているんでしょうね。「もしかしたらエサをあげるかもしれないよ~」と言いながら、アリを騙して四六時中付き添わせているんです。そのアリは非常に獰猛なアリなんで、自分を襲ってくる敵をやっつけてくれるんですね。きれいな蝶ですよ、オレンジ色の。

今回のお話いかがだったでしょうか。来週も引き続き山口進さんのインタビューです!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・What Lovers Do ft. SZA / Maroon 5
・Waitin' on the Day / John Mayer
さて、草むらで鳴く虫の声もだんだん少なくなってきましたが、きょうは昆虫をめぐる、興味深いお話をたくさんお届けします。
スタジオにお越し頂くのは昆虫植物写真家 山口進さん。ジャポニカ学習長の表紙を飾る昆虫や植物の写真をずっと撮影してきた方です。
何十年にもわたり世界中を旅して写真に収めてきた、不思議な昆虫たちの話、いっぱい教えて頂きます!


~山口さんを語る上で絶対に欠かせないのがジャポニカ学習帳です。みなさんも小学生の頃、学校のノートに不思議な昆虫たちの写真が表紙になっているのを記憶している方も多いのではないでしょうか。これは全て山口さんが撮影した写真なんですよね。どのくらいの期間撮影していたんですか?
40年近いんじゃないでしょうか。おそらく表紙だけで2000点くらいだと思うんですね。


~もうほとんど日本にいらっしゃらなかったんじゃないですか?
ひどいときは一年のうち300日くらいはいなかったですね。僕が興味があるのが赤道周辺なので、インドネシアとかアフリカの中央部とかアマゾンの周辺によく行ってました。

~きっといろんな世代の子どもたちがジャポニカ学習帳を手にしていると思うのですが、子どもたちの記憶に残っていることについてどう思われますか?
やっぱり写真って記録ですよね。いま、どんどん自然が失われていますから、そういうものがいたっていうことも記憶の中にとどめておかないと、いなくなって当たり前の世界が広まってしまうとまずいんですね。ですから、我々のひとつの使命はやはり記録に残していく。それまではいた、こういう環境があったっていうことを見て、子どもたちが、たとえばもっときれいな環境を作ろうとか、そういうふうに考えてくれることをいちばん期待しているんですけどね。

~最初のころに撮った昆虫とかで、結構もう数が少なくなってきてしまっているのもいますか?
たくさんいます。とくに日本では草原性の蝶が特に少なくなったんですね。草原って放っておくと林になるんですよ。むかしは人の手によって、たとえば野焼きがあったりして、いつもゼロクリアしていたんですね。それがいまは放置されてどんどん林になっています。それから、草原っていうのはやっぱり開発されやすいということもありますね。そういうことで草原がまず消えていった。それで草原の虫がほとんど消滅しましたね。昔は茅葺屋根がたくさんありましたから、その材料を取るのに広大な草原が必要だったんですね。ですから、万葉時代はほとんど日本って、草原の国だったんですよ。そのなかで、いろんな秋の七草とか、鳴く虫とか育ってきたんですよね。ですから、いまたとえば、フジバカマなんていうのは本当に見るのが大変なんですね。そういうものが消えていっているということですね。

~山口さんの本「珍奇な昆虫」のカバー写真になっているのがハナカマキリですね。これは、花にしか見えないですが、なんかランのようなというか、ユリの花のようですね。
まさにその通りで、英名をオーキッド マンティスっていって、ランのカマキリっていう意味なんですよね。これを最初にタイで見つけたんですけれども、一般的には、このカマキリはランに似ているから、ランのところにいて、ランのところに来る虫を捕まえているというふうに思われてきたんです。でもいくらランのところを探してもいないんですよ。それで変だなと思っていたら、インドネシアに高い山があって、そこにいったときにたくさんいたんですね。まあたくさんといっても、元々少ないんですけれども、一目で10匹くらいいた場所があって、それは畑の中なんですよ。畑の中にはいろんな雑草の花が咲いているんですが、それにミツバチが寄って来るんですよ。そのミツバチを狙ってる。ミツバチがハナカマキリに寄ってくるんですけれども、最終的にはハナカマキリの顔をめがけて飛んで来るんです。まさに自分を食べてっていうふうに飛んでくる(笑)そこをすかさずハナカマキリはガッと捕まえて食べるんですね。百発百中なんです。

~なんで顔に?
それが変だと思って、じつはある大学にそれを持ち込んで、化学分析してもらったんです。そうしたら、ミツバチが仲間を認識するのに使っているフェロモンと同じものをハナカマキリはあごのところに持っていたんですね。だから、最初は花だと思ってミツバチは飛んで来るんだけれども、近づくと臭いがするので、顔に向かって飛んで来るようになっているんですね。

~じゃあハナカマキリは主にミツバチを寄せている?
はい。その理由はいろいろあるんですが、ミツバチは一年中巣を作って活動してますから、いつでもいるんです。そうすると、一番いいエサなんですね。しかもはちみつっていう、栄養の高いものを持っているから、エサとしては最適なんですね。そういふうにハナカマキリは進化してきたのかなっていうことがわかったんですね。

~じゃあいままでの学説はちょっと違っていて、あごにフェロモンを持っていて、対象はミツバチだったと。
そうです。だから、いつも葉っぱの上にいて、自分が花になってるんですね。それと、ランっていうのは、寄って来る昆虫が決まってるんです。だから、ランが咲いてもなかなか昆虫は来ないんですよ。そんなところで待ってたら餓死しちゃうっていうことですよね。

山口さんのお話いかがだったでしょうか。来週も引き続きお話を伺います!


山口進『珍奇な昆虫』/光文社新書

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Time To Wander / Gypsy & The Cat
・Starry / THE CHARM PARK
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高橋万里恵
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