- 2017.11.12
「珍奇な昆虫」昆虫植物写真家山口進さん2
今週も先週に引き続き、昆虫植物写真家 山口進さんのお話です。
あのジャポニカ学習長の表紙の、めずらしい昆虫や植物の写真、多くの方が記憶に残っていると思いますが、あの写真を40年にわたり撮り続けてきた方です。

山口進『珍奇な昆虫』/光文社新書
山口さんは今年、『珍奇な昆虫』という本を発表されています。この本は、50年にわたって追いかけてきた、珍しい、奇妙な昆虫たちを写真と解説文で紹介したもの。 本当に目次を見るだけで、興味が湧くものばかり!
きょうはその中から、人間も顔負けの社会システムを持っているあの昆虫についてのお話です!
~「珍奇な昆虫」のなかですごくおもしろかったのが、たとえば「超個体! ハキリアリ」。じつはこの番組でも以前にこの昆虫を取り上げていて、葉を切り取って巣に運んで、キノコを育てる昆虫ということは紹介しているのですが、それだけじゃないんですよね。分業制が成立しているとか?
たとえば、いちばんおもしろいのは、年寄りのアリと若いアリとで分業しているんです。年寄りのアリは、悲しい話ですが、死が近いんですよね。だから危険な仕事に就くんです。たとえば巣を出て、外にいって何かを運んでくるとか、巣のなかでゴミが出るんですが、ゴミにはいろんな菌がついていて、その菌がアリに付くと死んでしまうんです。ですから、そのゴミを外に出す係は全部歳をとったアリなんです。若いアリは中で卵や幼虫の世話をしたり、巣の中をきれいにしたりするという作業をしているわけです。もちろんいちばん大事なのは女王の世話ですが、そういうのは全部若いアリがやっているんですね。
~お年寄りをいたわるんじゃないんですね!?ハキリアリは自分の体の5~6倍も大きい葉をアゴで切って運ぶじゃないですか。あれはどっちですか?
あれはちょっと成長したアリですね。アリたちは葉に菌がついていないかというのをすごく敏感に調べるんです。たとえば、雨に当たると、雨に入っていた菌が付くかもしれない。そうすると葉を全部放棄するんです。菌がついているかもしれないから。
それからもっとおもしろいのは、葉に寄生する小さいハエがいるんですが、葉を運んでいるときに、その葉に卵を産み付けて巣の中に運び込まれてしまうと、そのハエの幼虫はアリを食べてしまうんですね。それを防止するために、運んでいる葉の上に、一匹小さいアリが守ってるんです。そのハエが寄ってくると、体を乗り出して追い払うんです。だから行列をずっと見ていると、必ず葉の上に1~2匹乗っていますね。
~ものすごい社会がそこにはあるんですね。でも、すごい大所帯じゃないですか。コミュニケーションはとっているんですか?
そのへんはまだよくわかっていないのですが、ハキリアリは特に音を出してコミュニケーションをとってるんですね。おいしい葉と切り取ってはいけない葉って決まっているらしいんですが、一匹がいい葉を見つけて切り始めると、音をだすんです。人間の耳に聞こえるくらいの音です。それは仲間に「この葉はいいぞ!」って知らせているんです。そうするとみんなが寄ってきて、その葉を切りまくるという。それを巣に向かって運んでいくんですが、そのとき、運んでいる途中で敵が襲ってきますから、守る兵隊アリがいるんですね。守る兵隊アリはすごく頭が大きいんです。頭の中は筋肉なんですが、大顎を動かす筋肉がびっしり入っているんです。ですから、噛む力が強い。
そして、たとえば行列をしているときに、から枯れ葉が落ちてきたりすると、それを片付ける係もいるんです。わーっとその枯れ葉に寄ってきて、それを引っ張ったり、切り刻んだりして、道をきれいにするんですね。だから、ハキリアリの行列は、本当にハイウェイのようなきれいな道なんですよ。「あ、ここはハキリアリが通った場所だ」ってわかるくらいですね。
~だから「超個体」ってついているんですか。
全体でひとつの人間みたいな動きをしてるっていうことですよね。それぞれが何らかの意識を持ってるかどうかわかりませんけれども、うまくコミュニケーションをとりながら、ひとつの仕事をやっている。ひとつの仕事とは何かというと、巣を維持する。次世代を残すっていうことですよね。
~なんだか企業みたいですね。全部うまくレーンができているといか。ほかにも、アリでいうと、他の昆虫を育てるアリもいるんですか?
はい。日本にもたとえばシジミチョウっていう小さい蝶がいるんです。日本には250種類くらいいるんですが、そのなかの5種類だけアリに育てられる蝶がいるんですよ。幼虫がアリの巣の中に運び込まれて、アリからエサを口移しでもらって、サナギになって、巣から羽を広げて飛び立っていくと。
~アリには何の得があるんですか?
巣の中にいるときに、蝶の幼虫は甘い蜜をだすんです。シジミチョウとしては、土の中って外敵がいないですよね。だから、自分を守るという意味ではとてもプラスなんですね。
日本ってすごく蝶の研究が盛んだったのですが、その5種類は、地上から様子が見えないので研究されてなかったんです。それをじゃあやってやろうと思って、約10年かかって生態を全部写真に撮って本をつくったことがあります。難しかったですね。まず、どこにいるかわからないから、アリの巣を掘りまくるんですよ。だから、肉体労働者ですね(笑)。もうカメラなんか持たないで、スコップとツルハシを持って。たとえば、夏になると蝶が飛んでますよね。そうすると、この辺にいるんだなと見当をつけて、秋から春にかけての地下にいる時期に掘るんです。3年くらいかかったかな。最初に見つけたときはもう、涙が出ました。でも、単に見つかった!っていう写真なので面白くない。それで巣をアリにつくらせて、それにガラスをはめ込んだりして、なかでお互いにコミュニケーションをとったり、エサを上げてるところを撮影したんですね。
~その5種類の蝶というのは、全部アリの巣から生まれるんですか?
4種類はアリの巣のなかから出ていきます。残りの1つはエサをもらったりするんじゃなくて、ガードマンにアリを雇っているんですよ。おそらく匂いか何かを出しているんでしょうね。「もしかしたらエサをあげるかもしれないよ~」と言いながら、アリを騙して四六時中付き添わせているんです。そのアリは非常に獰猛なアリなんで、自分を襲ってくる敵をやっつけてくれるんですね。きれいな蝶ですよ、オレンジ色の。
今回のお話いかがだったでしょうか。来週も引き続き山口進さんのインタビューです!
【今週の番組内でのオンエア曲】
・What Lovers Do ft. SZA / Maroon 5
・Waitin' on the Day / John Mayer
あのジャポニカ学習長の表紙の、めずらしい昆虫や植物の写真、多くの方が記憶に残っていると思いますが、あの写真を40年にわたり撮り続けてきた方です。

山口進『珍奇な昆虫』/光文社新書
山口さんは今年、『珍奇な昆虫』という本を発表されています。この本は、50年にわたって追いかけてきた、珍しい、奇妙な昆虫たちを写真と解説文で紹介したもの。 本当に目次を見るだけで、興味が湧くものばかり!
きょうはその中から、人間も顔負けの社会システムを持っているあの昆虫についてのお話です!
~「珍奇な昆虫」のなかですごくおもしろかったのが、たとえば「超個体! ハキリアリ」。じつはこの番組でも以前にこの昆虫を取り上げていて、葉を切り取って巣に運んで、キノコを育てる昆虫ということは紹介しているのですが、それだけじゃないんですよね。分業制が成立しているとか?
たとえば、いちばんおもしろいのは、年寄りのアリと若いアリとで分業しているんです。年寄りのアリは、悲しい話ですが、死が近いんですよね。だから危険な仕事に就くんです。たとえば巣を出て、外にいって何かを運んでくるとか、巣のなかでゴミが出るんですが、ゴミにはいろんな菌がついていて、その菌がアリに付くと死んでしまうんです。ですから、そのゴミを外に出す係は全部歳をとったアリなんです。若いアリは中で卵や幼虫の世話をしたり、巣の中をきれいにしたりするという作業をしているわけです。もちろんいちばん大事なのは女王の世話ですが、そういうのは全部若いアリがやっているんですね。
~お年寄りをいたわるんじゃないんですね!?ハキリアリは自分の体の5~6倍も大きい葉をアゴで切って運ぶじゃないですか。あれはどっちですか?
あれはちょっと成長したアリですね。アリたちは葉に菌がついていないかというのをすごく敏感に調べるんです。たとえば、雨に当たると、雨に入っていた菌が付くかもしれない。そうすると葉を全部放棄するんです。菌がついているかもしれないから。
それからもっとおもしろいのは、葉に寄生する小さいハエがいるんですが、葉を運んでいるときに、その葉に卵を産み付けて巣の中に運び込まれてしまうと、そのハエの幼虫はアリを食べてしまうんですね。それを防止するために、運んでいる葉の上に、一匹小さいアリが守ってるんです。そのハエが寄ってくると、体を乗り出して追い払うんです。だから行列をずっと見ていると、必ず葉の上に1~2匹乗っていますね。
~ものすごい社会がそこにはあるんですね。でも、すごい大所帯じゃないですか。コミュニケーションはとっているんですか?
そのへんはまだよくわかっていないのですが、ハキリアリは特に音を出してコミュニケーションをとってるんですね。おいしい葉と切り取ってはいけない葉って決まっているらしいんですが、一匹がいい葉を見つけて切り始めると、音をだすんです。人間の耳に聞こえるくらいの音です。それは仲間に「この葉はいいぞ!」って知らせているんです。そうするとみんなが寄ってきて、その葉を切りまくるという。それを巣に向かって運んでいくんですが、そのとき、運んでいる途中で敵が襲ってきますから、守る兵隊アリがいるんですね。守る兵隊アリはすごく頭が大きいんです。頭の中は筋肉なんですが、大顎を動かす筋肉がびっしり入っているんです。ですから、噛む力が強い。
そして、たとえば行列をしているときに、から枯れ葉が落ちてきたりすると、それを片付ける係もいるんです。わーっとその枯れ葉に寄ってきて、それを引っ張ったり、切り刻んだりして、道をきれいにするんですね。だから、ハキリアリの行列は、本当にハイウェイのようなきれいな道なんですよ。「あ、ここはハキリアリが通った場所だ」ってわかるくらいですね。
~だから「超個体」ってついているんですか。
全体でひとつの人間みたいな動きをしてるっていうことですよね。それぞれが何らかの意識を持ってるかどうかわかりませんけれども、うまくコミュニケーションをとりながら、ひとつの仕事をやっている。ひとつの仕事とは何かというと、巣を維持する。次世代を残すっていうことですよね。
~なんだか企業みたいですね。全部うまくレーンができているといか。ほかにも、アリでいうと、他の昆虫を育てるアリもいるんですか?
はい。日本にもたとえばシジミチョウっていう小さい蝶がいるんです。日本には250種類くらいいるんですが、そのなかの5種類だけアリに育てられる蝶がいるんですよ。幼虫がアリの巣の中に運び込まれて、アリからエサを口移しでもらって、サナギになって、巣から羽を広げて飛び立っていくと。
~アリには何の得があるんですか?
巣の中にいるときに、蝶の幼虫は甘い蜜をだすんです。シジミチョウとしては、土の中って外敵がいないですよね。だから、自分を守るという意味ではとてもプラスなんですね。
日本ってすごく蝶の研究が盛んだったのですが、その5種類は、地上から様子が見えないので研究されてなかったんです。それをじゃあやってやろうと思って、約10年かかって生態を全部写真に撮って本をつくったことがあります。難しかったですね。まず、どこにいるかわからないから、アリの巣を掘りまくるんですよ。だから、肉体労働者ですね(笑)。もうカメラなんか持たないで、スコップとツルハシを持って。たとえば、夏になると蝶が飛んでますよね。そうすると、この辺にいるんだなと見当をつけて、秋から春にかけての地下にいる時期に掘るんです。3年くらいかかったかな。最初に見つけたときはもう、涙が出ました。でも、単に見つかった!っていう写真なので面白くない。それで巣をアリにつくらせて、それにガラスをはめ込んだりして、なかでお互いにコミュニケーションをとったり、エサを上げてるところを撮影したんですね。
~その5種類の蝶というのは、全部アリの巣から生まれるんですか?
4種類はアリの巣のなかから出ていきます。残りの1つはエサをもらったりするんじゃなくて、ガードマンにアリを雇っているんですよ。おそらく匂いか何かを出しているんでしょうね。「もしかしたらエサをあげるかもしれないよ~」と言いながら、アリを騙して四六時中付き添わせているんです。そのアリは非常に獰猛なアリなんで、自分を襲ってくる敵をやっつけてくれるんですね。きれいな蝶ですよ、オレンジ色の。
今回のお話いかがだったでしょうか。来週も引き続き山口進さんのインタビューです!
【今週の番組内でのオンエア曲】
・What Lovers Do ft. SZA / Maroon 5
・Waitin' on the Day / John Mayer